聖女を騙る人がもてはやされていますが、本物の私は隣国へ追い出されます

☆ミ

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魔界騎士の主

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「アンデットは魔力を得ることでしか回復が出来ません、寝ているのは言わば節約といったところでしょう」

 なるほど、スリープモードであって、いつでも起動する可能性があるのね。それにしてもドラゴンかぁ、どうしよう。困ったわ、どうにか出来る未来が思いつかない。

「レディ、この戦力では仕掛けても勝ち目は御座いません。引き返すべきです」

 私もそう思うわ。というか戦力があっても手を出しちゃいけないような気がするのよね。戻りましょう、充分な情報を得たわ。

「そうね、解決は出来なかったけれどもやれることはや――」

「敵襲! 速やかに総員戦闘配置につけ!」

 皆の顔がはっとする「レディ、失礼します」ハマダ大尉が声がした方に向かって行ったわ。一体何が起こったのよ、まさかドラゴン起きちゃった? でもそんな音も大きな姿も見えないわね。

 あの旗と私の馬車を囲うようにして黒服と、戻って来た冒険者が円を作っているわ。狼みたいのが多数周りに現れて、黒い……騎兵? が一人だけ、なによあれ首が無いじゃないの。

「我が名は騎士デュラハン、主よりこの地を治めるよう命じられている。侵入者よ速やかに立ち去るか、さもなくばその首を置いて行け!」

 そういうのが居るって名前だけは聞いたことがあるわ、あれがデュラハンというのね。上級悪魔としてミノタウロスより格上って、戦ったらただでは済まないわよ。主ってあのドラゴンかしら? 攻撃をしてこないってことはちゃんと統率が取れているってことよね、もしかしてこれってチャンスじゃ?

 馬車から降りて声が届くところまで進んだわ。デュラハンも私が何かをしようとしているわけじゃないのを理解してるみたいで、注視するだけで動かない。

「レディ、危険ですのでお下がりを!」

 私を見たハマダ大尉が警告をしてきたわね。でもここで一歩を進めないと解決への足掛かりにはならないの。両手をお腹の下あたりで重ねて姿勢を正してよ。

「初めまして、私はアリアス・アルヴィンです。騎士デュラハンに尋ねたいことがあります」

 左手の小脇に抱えている首、目だけが怪しく紅く光った。死の馬にまたがったまま、デュラハンは無反応ね。問答無用で攻撃してこないなら目はあるわ、意志と選択肢があると言うことなんだから。

「あなたの主は眠っているアンデットドラゴンでしょうか?」

「……それを知り何とする」

 応じた! 話が出来るなら可能性を追求するわよ。知性があるなら意見を変えさせることだって出来るはずよ。魔獣と魔族は違うわ、その境が知性という話。人間とケダモノの違いも、理性があるかどうかで区切ってるのよね。

「私は神に祈りを捧げて平穏を願うのが務め。この山にある意思に阻害され聖域が広がらずに困惑していました。このままではお互いが疲弊するだけです、何とか場を移しては貰えないでしょうか?」

 ドラゴンとぶつかり続けてたら疲弊するのはお互い様よ、ゆっくり寝ていられないでしょ。互いの存在が不明で心が震えているんだから。というか私、なにとぶつかってたのよもう。

「そちらが去れば良かろう。我等がこの地に在って早七百年、退く道理はない」

 うん、確かに! 私も、もしお仕事なければ完全同意してるわ。うーん、でもそれってドラゴンが七百年も寝た切りってことかしら。だとしたら、このデュラハンも見上げた忠誠心ね。そういうの嫌いじゃないわ、どころかちょっと尊敬。

「アンデットは魔力を得て回復すると聞きました。あなたの主は未だに回復出来ずに休息の様子。私が協力すれば場を移してくれるでしょうか?」

 目がまた赤く光ったわ、何かを思案しているようね。仕組みは解らないけど、あの頭ってどうなってるのかしらね。空洞なのかな、だったら被ったらどうなるんでしょう。絶対に誰もやらないわよ、怖いから。

「……人間が魔族に協力をすると?」

 凄く単純に疑問を持ったようね、逆でもそうでしょうけど。魔族が人間にいきなり協力するとか言い出したら、どんな裏があるのかって訝しく思うのと同じよ。

「あなたは七百年も主を守りこの場に在るのですよね。その間、人間と争いになったとは聞きません。争うつもりがないならば、私は協力を惜しみません。アンデットドラゴンがどのような性格かは、あなたを見たらわかります。友好を示したものを無下に扱うような存在ではないのでしょう?」

 多分だけどそう思うのよ、そんなの私の勝手な妄想でしかないけれど。どうしてかそう感じられるの。何が出来るかなんてわからないけど、そうしたいからそうするわ。

「人間よ、なにゆえそのような申し出をする」

「アリアス・アルヴィンよ」

 そこは譲らないわ、個人ではなく大勢の何かって認識をされたくはないの。私だけが責任を持てばいいのと、私だけが決められるならある時全てを受け入れたっていいもの。

「……アルヴィンは何故そうする」

 二人のやりとりに冒険者も黒服も皆が集中してるわね。私がギャラリーでもきっと興味津々よ。もしかしてだけど、魔族とこうやって会話した人間って、ここ最近では私だけじゃないのかなーなんてね。

「私自身もよく解らないわ。でも畏怖の中にある微かな安心感が、えっと懐かしい? いえ、何でしょうかこの感覚は。私の中で放っておくのはダメと言っているの。うーん、上手に表現できないわね」

 ほんと未だに相反する感覚が同時に来るのよ。怖いとか不安だけじゃなくて、会いたいとか思い出すような? どうしてかは全く不明よ。

「………………随員を一人だけ許す、ついて来い」

「分かったわ。ハマダ大尉、お願いできるかしら?」

 信じられ無いような目で見られてるわね。安心して私も同じ気分よ。世界は不思議で満ち溢れているわ。まさにおとぎ話のような流れ、その主人公が自分だなんて笑えないけどね。

「イエス マム!」

 皆に見守られながら囲まれている間を歩くわ。動物タイプの魔物がこちらを見て攻撃どころか威嚇すらしないなんて、あのデュラハンはかなりしっかりとこれらを統率してるのね! ハマダ大尉を見ても同じことを想っているのか、目を細めているわ。

 大きな洞窟がある入り口、私は別にいいけど、あまり背が高い人は頭をぶつけそうなところが多々あるわね。これといった明かりもない無いけれど、差し込んで来る光で何とか歩くくらいは出来る感じ。

 デュラハンの足音が先で止まったわね。ずっと奥まで行くと、大きなホールになっていて、そこに黒と灰色、銀色の鱗を持っている巨大なアンデットドラゴンが寝ているわ。凄い威圧感、これがドラゴン!

 ……あれ、でもここって出入り口アレしかないわよね、どうやって入ったのよ。数百年で穴が塞がったとか? どっちでもいいけど出る時に一苦労しそうね。

「我が主に申し上げます。客人が参りました」

 びしっと岩が砕けるような音がする、骨が軋むような、固い何かがこすれるような、色々な音が一気にホールに響いたわ。そして真っ暗などこかで赤い光が浮かぶ、まるでデュラハンの目と同じように。恐ろしい瘴気のような何か、覚悟が無ければ卒倒するわねこれ。

 私、一つだけ持っているなって思うのがあるのよ。相手を見る目、これだけは自分で自分を信じられるくらいよ。デュラハンを信用するならば、このドラゴンはきっと話が通じるわ!
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