【完結】脇役令嬢だって死にたくない

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3.鍛錬


「ど、どういうことなのミア!?」

「何か悩みがあるのなら、父様たちに話してみなさい!」

「どうもこうもないの。ただわたし、強くなりたいと思って」

「「だからなんで!?!?!?」」

 声を揃えて狼狽する両親を前にして、『未来で自分を殺す魔物に打ち勝つため』だなんて言えるはずもなく、ミアは「なんとなくなの」と誤魔化し笑いを浮かべながら言った。

「淑女教育は最低限に、新しく剣術の稽古をつけてくださる方と、身体の使い方…筋肉などにくわしい方を雇ってほしいの」

「「剣術!? 筋肉!?!?」」

「あと食事も、タンパク質が多くとれるものを出してほしくて」

 拙い舌と格闘しながらも大人びた言葉を使う娘に、わけがわからないと二人は額を抑えた。
 剣術などと──明るい子に育っているとは思っていたが、こうも奔放な子だっただろうか。
 何が影響して愛しい娘が体育会系に目覚めてしまったのか。
 それに英才教育の賜物で元々物分かりの良い子ではあったが、ここまで早熟だったとは親と言えど知らなかったと、地味にショックを受ける。

「もちろん魔法学だって、おろそかにしないわ」

 しかしこうして「おねがい!」と愛娘に駄々を捏ねられると、頷いてしまう甘い両親である。
 そもそも子どもの興味というのは移ろい行くもの。
 こんなこともあるか、と二人はミアの願いを聞き入れることにした。
 何も悪いことをしようとしているわけでもない。

 そのうち飽きるだろう。
 そう両親は踏んでいた。
 ところがミアの鍛錬は飽きるどころかエスカレートを極めた。

「もっと本気でやってちょうだい! こども騙しの剣じゃダメなの!」

「し、しかしお嬢様、もう剣を握る握力も……」

「ぅぅ……わたしって、才能ないのかしら……」

 同時に、難航を極めていた。

 どれだけ毎日、文字通り死に物狂いで鍛えたとしても、ミアには一定以上の筋力が付かなかった。
 未成熟という理由を差し引いても、自分の伸びしろの無さに自分で気がついてしまうくらいには、ミアは少女らしく非力だった。

 そこで彼女が辿り着いたのは『身体強化魔法』。
 根本的なフィジカルの弱さを魔法によって補助する。
 しかしこの魔法は繊細な操作力を必要とする上、魔法士であれば誰も『高い戸棚にある本を魔法によって抜き取る』ことはしても『高い戸棚にある本を魔法によって強化した体で跳躍して取る』なんて真似は面倒なのでしない。
 およそポピュラーな魔法とは言い難い。

 それに魔法士のほとんどは合理性を求め、かつ謎の矜持により『わざわざ汗水流すなんて魔力の無い凡人がやること』だなんだと思っているタイプが多い。

 なので身体強化魔法を態々使うのは魔力を持った騎士など、限られた者くらいだ。
 しかしそれはミアが最も理想とするもの。

「よし! 目指すは両刀よ!!」

 再びミアの血の滲むような努力が始まった。
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