未熟なエイサー

ひまわり

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後悔の入学式

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 こんな大学来るんじゃなかった。
入学式早々に凛は、絶望する。
話を聞かず騒いでいる茶髪の学生、かと思えば資料を隅から隅まで熟読している眼鏡、SNSで連絡を取り合っていたのか事前に友人になっているものもいた。「もっと受験を頑張っていれば、、」何百回と心の中で吐露したことか。私はこれからの4年間に期待など一ミリもなくなっていた。自分とは明らかに過ごしてきた環境が違う人ばかりで共通の話など思いつくことすら出来ずにただ1人静かに学長の話に耳を傾けていた。
 入学式が終わり、大学施設の見学を済ませ、オリエンテーションのため教室に入る。よく見ることが出来ていなかった同じクラスの顔ぶれを一通り見回し、大人しそうな身なりを整えている数人にあいさつを済ませる。そのまま特に誰かと仲良く話すわけでもなく家に帰った。これからの生活に不安を覚えながらもどこかで楽しく明るい学生生活を信じたい気持ちもあった。そんなことを思いながら眠りにつく。

 翌日なんとも言えない気持ちで目覚め、通勤電車に揺られながら学校へと向かう。
到着すると新入生の凛のクラスには、ここぞとばかりに上級生が笑顔で高らかとサークルの勧誘を行なっていた。特にこれといって入部したいサークルもなく、かといって進んで入る勇気もなくその光景を眺めていた。
 その日も今後のスケジュールを一通り説明を受け一日が終わる。帰り際に何気なく食堂の前を通ると、食堂前の広場で何やら人だかりができている。人だかりの中から聞こえる陽気な音楽や太鼓の音に引き寄せられるように凛も立ち止まりその人だかりに紛れ込む。そこでは、赤、青の衣装を見に纏い、陽気な音楽に合わせて踊ったり、太鼓を叩いている10数人の男女がいた。何よりもその全員が屈託のないまぶしい笑顔で演舞しており、その姿に凛は胸打たれた。しなやかでもありダイナミックな踊りに「この大学でも少しは希望があるのかな、こんな風に楽しく笑うことができるのかな」少なからずその瞬間はそんなことを感じることができた。その余韻に浸りながら帰宅し、母親に感情そのままに伝えた。母親も嬉しそうに「良かったわね」と答えてくれた。
 翌日誰もなるべく教室に人がいないときにホワイトボードに貼られてある入部希望者を募る紙に名前を書いた。
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