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想田くんに夢中

君との距離

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またいい所で目が覚めた。

(睦治が想田くんも俺と話したいかもって言ってた……)

俺はやる気が湧いてきて想田くんが登校してきたら速攻声かけようと自分の席から教室の入口をチラチラ監視していた。
想田くんがいつものように音楽聴きながら教室に入ってきた。
声かけようと腰を上げようとした時、想田くんと目が合った。

「!!」

俺は嬉しくなってそばに駆け寄ろうとしたら想田くんが慌ててUターンして教室から出て行った。

「…………」

(逃げられた……?)


___________________


「睦治……どうしよう……」
「……」

夢の中で目覚めた瞬間、睦治のそばに駆け寄って助けを求めた。

「俺、想田くんに何かしちゃったかも……想田くんに嫌われたかも……」
「……じゃあ、彰悟くんも彼のこと嫌いになっちゃえばいいじゃん……」
「え……」

また睦治が苦しそうな顔をしていた。

「睦治は平気?俺が睦治のこと好きじゃなくなるの」
「……俺のこと好きなの?」
「好きだよ」
「想田くんのことは?」
「好き」
「想田くんとはそんなに話してないじゃん……」
「少ししか話さなくても彼のいい所は知ってるよ。あの日みんなは笹木さんの心配してたけど、想田くんは俺のこと心配してくれた」
「……」
「人と関わりたくないのに手当てしてくれた」
「……」
「手紙も突き返すこともできたのに返事まで書いてくれたよ」
「……」
「俺、想田くんの心使いとかそういうのが好きなんだよ」
「その好きって友達の好き……?」

俺は近づいてじっと睦治の目を覗きこんだ。
いつもはすぐ目を反らす睦治も真っ直ぐ俺を見つめていた。

「睦治の目は素直だね」
「え……」
「睦治、俺のこと好きでしょ」
「……」

いつもは顔を赤くして反らされちゃうけど、今日は睦治の綺麗な目に涙が浮かんでいた。

「どうした?」

俺は思わずぎゅうっと抱きしめて安心させようとした。
睦治が静かに泣くから頭を撫でて落ち着かせた。

「俺、人を好きになる資格ない……」
「どうして?」
「好きな子の心壊したから……っ、」

絞り出した弱々しい声で睦治がそう溢した。

「俺っ、彰悟くんのこと、壊したくないよ……っ」

背中をポンポンしてると睦治の呼吸が落ち着いてきたから顔を覗きこんだ。
潤んだ目が不安そうに揺れていた。
だから頬を手で覆って指で撫でた。
少し睦治の表情が緩んだ。

「睦治の心も傷ついたんだね」
「……」
「俺は壊れないよ。約束する」
「……」
「だから俺の前では睦治らしくしてればいいんだよ」

睦治がドキドキしているのが目を見ただけで伝わってくる。

「彰悟くん……っ、」
「なに?」
「彰悟くん…………好きだよ」
「……」

ずっと目が離せなかった。

お互い相手に吸い込まれるように距離が縮まっていった。

そして、気づいたら唇を重ね合わせていた。


ピピピピピピピピピ……



「うぅー……ここで目覚ますなよ。」

俺は不満を溢した……けど、1秒後には嬉しくて嬉しくてベッドの上で暴れ回っていた。

(なんで今日土曜日なんだよ……。)

(あー、想田くんに会いたい!!!!)

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