愛しい隠れ美少年はサキュバスだった。

RED

文字の大きさ
11 / 18
想田くんに夢中

夢と現実のギャップ

しおりを挟む

それから夢の中の俺たちはどんどん仲を深めていった、睦治の好きな本の話、俺のハマってるゲームの話、たまにただ抱きしめあって過ごしたり、睦治の気持ちが乗ったらキスをしたりしてだんだん距離が縮まっていった。

夢の中の俺たちの関係は正直恋人そのもの。

けど……現実の想田くんとは数分しか話せないし、名前を呼んでもらったことすらない……。
睦治も現実でも仲良くなれたらいいねって言ってくれたけど……睦治はあくまで俺の意識が作り上げた存在だもん……。

(逆上せてる中学生でも好きな子と毎晩夢の中でイチャイチャとかしないよな……)

(俺、拗らせてるな……)

今朝も睦治とキスする夢見て幸せいっぱいでニヤニヤしながら目を覚ましたのに現実の俺と想田くんの関係を考えたら一気に冷静になった。

そして登校中に衝撃的なものを目の当たりにしてしまって、俺の意識はさらに冷えることになる。

(あれ?)

乗車した電車がゆっくりと学校最寄り駅のホームに到着しようとしていた。
そして何気なく反対ホームに視線をやると想田くんがいた……それだけなら「声かけなきゃ!」ってテンション上がってたと思うんだけど……想田くんの隣には見知らぬ恰幅のいい坊主頭の男子がいた。

(え?)

しかも想田くんとその男子は会話が弾んでるようで想田くんは彼に笑いかけているようだった。

「……」

俺は何か虚しさが一気に押し寄せてきた。

俺は一人勝手に夢の中でイチャイチャしてる妄想して……現実では想田くんに俺の名前すら呼ばれたことなくて、そして想田くんは俺じゃない見知らぬ人間に笑いかけてる……。

(俺、本当に冷静にならないと……これじゃストーカーと同じ心理じゃん……)

いつもは必ず想田くんに挨拶しに行くけど今日は真っ直ぐ自分の席に向かった。
そしたらすぐ友人たちが集まってきて雑談が始まった。
想田くんと距離置かなきゃって思ってもいつもの癖で様子をチラチラ見てしまう。
それでも普段目が合うことは滅多にない……。

なのに今日は目が合った。
しかも数秒。

(え……)

(もしかして……想田くんの方から何か言ってくれる……?)

ってちょっとだけ期待したけど想田くんは本を閉じて教室から出ていってしまった。

(ダメだ……こういう自意識過剰を治さないと)

(現実の想田くんは俺のこと毎日話しかけてくる面倒なクラスメイトくらいにしか思ってないはずだ……)

そう自分に言い聞かせる度に虚しくなっていった。

HRが終わり、一時間目が終わり、時間が流れて昼休みになった。

(やっぱり俺が挨拶しなくても想田くんは何とも思ってくれない)

(睦治ならいつもと違うとか気づいてくれるのに……)

って、こういう発想がヤバいんだって……。

昼休み始まる前にまた目が合ったけど友人たちに囲まれちゃって視線を戻すともうそこに想田くんはいなかった。
俺は何か数日間仲良くなるために話しかけてたのが何も響いてなかったんだってわかっちゃって拗ねてしまった。
やる気出ないから昼以降はずっと机で突っ伏して寝てた。

そしたら誰かに肩を揺すられた。
友人の誰かが起こしてくれたんだろうって思って不機嫌な態度で顔を起こした。
相手が誰か確認する前に時計に目が止まって「お迎え行かないと」って考えた。


「倉本くん、大丈夫?」


俺は聞き馴染みのある声に思わず反応した。


「……想田くん」


俺の隣に心配そうな顔した想田くんがいる。
1日中拗ねてた癖に初めて名前呼んでもらった、それだけで全部チャラになってしまった。


「今日、様子変だったから……心配になって……」
「え、俺のこと心配してくれたの?」
「だってお昼ずっと寝てたし……」

(想田くんも俺のこと見ててくれてるんだ……)

夢の中程じゃないけど現実の俺たちも距離が縮まりつつあるのかなって嬉しさを噛みしめた。
けどやっぱり朝から悶々としてるあの事について聞きたくて仕方なかった。

「あのさ……野暮なこと聞くけど、朝一緒にいたあの人誰?」
「朝……あ、津山くんかな?」
「仲良いの?友達?」
「友達っていうか……特殊な付き合い」
「え……」

友達じゃない……特殊な付き合い……

人と関わり合わない想田くんが笑い合ってた……

それって、導き出される答え一つしかなくない……?

「あ……俺……姪っ子のお迎え行かないと。」
「あ……、」

想田くんが何か言いかけてた気がしたけど、俺は余裕なくて精一杯取り繕ってその場を後にした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...