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想田くんに夢中
夢と現実のギャップ
しおりを挟むそれから夢の中の俺たちはどんどん仲を深めていった、睦治の好きな本の話、俺のハマってるゲームの話、たまにただ抱きしめあって過ごしたり、睦治の気持ちが乗ったらキスをしたりしてだんだん距離が縮まっていった。
夢の中の俺たちの関係は正直恋人そのもの。
けど……現実の想田くんとは数分しか話せないし、名前を呼んでもらったことすらない……。
睦治も現実でも仲良くなれたらいいねって言ってくれたけど……睦治はあくまで俺の意識が作り上げた存在だもん……。
(逆上せてる中学生でも好きな子と毎晩夢の中でイチャイチャとかしないよな……)
(俺、拗らせてるな……)
今朝も睦治とキスする夢見て幸せいっぱいでニヤニヤしながら目を覚ましたのに現実の俺と想田くんの関係を考えたら一気に冷静になった。
そして登校中に衝撃的なものを目の当たりにしてしまって、俺の意識はさらに冷えることになる。
(あれ?)
乗車した電車がゆっくりと学校最寄り駅のホームに到着しようとしていた。
そして何気なく反対ホームに視線をやると想田くんがいた……それだけなら「声かけなきゃ!」ってテンション上がってたと思うんだけど……想田くんの隣には見知らぬ恰幅のいい坊主頭の男子がいた。
(え?)
しかも想田くんとその男子は会話が弾んでるようで想田くんは彼に笑いかけているようだった。
「……」
俺は何か虚しさが一気に押し寄せてきた。
俺は一人勝手に夢の中でイチャイチャしてる妄想して……現実では想田くんに俺の名前すら呼ばれたことなくて、そして想田くんは俺じゃない見知らぬ人間に笑いかけてる……。
(俺、本当に冷静にならないと……これじゃストーカーと同じ心理じゃん……)
いつもは必ず想田くんに挨拶しに行くけど今日は真っ直ぐ自分の席に向かった。
そしたらすぐ友人たちが集まってきて雑談が始まった。
想田くんと距離置かなきゃって思ってもいつもの癖で様子をチラチラ見てしまう。
それでも普段目が合うことは滅多にない……。
なのに今日は目が合った。
しかも数秒。
(え……)
(もしかして……想田くんの方から何か言ってくれる……?)
ってちょっとだけ期待したけど想田くんは本を閉じて教室から出ていってしまった。
(ダメだ……こういう自意識過剰を治さないと)
(現実の想田くんは俺のこと毎日話しかけてくる面倒なクラスメイトくらいにしか思ってないはずだ……)
そう自分に言い聞かせる度に虚しくなっていった。
HRが終わり、一時間目が終わり、時間が流れて昼休みになった。
(やっぱり俺が挨拶しなくても想田くんは何とも思ってくれない)
(睦治ならいつもと違うとか気づいてくれるのに……)
って、こういう発想がヤバいんだって……。
昼休み始まる前にまた目が合ったけど友人たちに囲まれちゃって視線を戻すともうそこに想田くんはいなかった。
俺は何か数日間仲良くなるために話しかけてたのが何も響いてなかったんだってわかっちゃって拗ねてしまった。
やる気出ないから昼以降はずっと机で突っ伏して寝てた。
そしたら誰かに肩を揺すられた。
友人の誰かが起こしてくれたんだろうって思って不機嫌な態度で顔を起こした。
相手が誰か確認する前に時計に目が止まって「お迎え行かないと」って考えた。
「倉本くん、大丈夫?」
俺は聞き馴染みのある声に思わず反応した。
「……想田くん」
俺の隣に心配そうな顔した想田くんがいる。
1日中拗ねてた癖に初めて名前呼んでもらった、それだけで全部チャラになってしまった。
「今日、様子変だったから……心配になって……」
「え、俺のこと心配してくれたの?」
「だってお昼ずっと寝てたし……」
(想田くんも俺のこと見ててくれてるんだ……)
夢の中程じゃないけど現実の俺たちも距離が縮まりつつあるのかなって嬉しさを噛みしめた。
けどやっぱり朝から悶々としてるあの事について聞きたくて仕方なかった。
「あのさ……野暮なこと聞くけど、朝一緒にいたあの人誰?」
「朝……あ、津山くんかな?」
「仲良いの?友達?」
「友達っていうか……特殊な付き合い」
「え……」
友達じゃない……特殊な付き合い……
人と関わり合わない想田くんが笑い合ってた……
それって、導き出される答え一つしかなくない……?
「あ……俺……姪っ子のお迎え行かないと。」
「あ……、」
想田くんが何か言いかけてた気がしたけど、俺は余裕なくて精一杯取り繕ってその場を後にした。
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