愛しい隠れ美少年はサキュバスだった。

想田くんに夢中

傷心の朝

意気消沈しながら学校に着くと俺の下駄箱の前に想田くんがいた。

(え……)

(え、なんで？！？！)

テンションが一気に上がった。
けど、ただのクラスメイトとして冷静に振る舞わないとって自制した。

(想田くんは睦治じゃない)

俺の好意をぶつけられても困らせるだけだ。
……けどやっぱり大好きな想田くんと接触できることに胸は高鳴っていた。

「想田くん、おはよー」
「おはよう、倉本くん……」

(浮かれてるの隠せたかな？ただのクラスメイトっぽく振る舞えた？)

いつもなら勢いでベラベラ喋って必死に想田くんを引き止めようとするけど、適切な距離感を保たないとだめだって思って堪えた。
だから軽く挨拶して靴履き替えて自然な感じで教室に向かおうとした。

想田くんが何か俺に言おうとしてるのは気配でわかってる……。
今までの俺ならグイグイ踏み込んでたけど……でも多分想田くんに優しくされるのが怖くなってる。

だって……手当てしてくれても、手紙の返事くれても、想田くんは別に俺を好きじゃない。

夢みたいに心の距離は埋まらない……自分の思うようにはならないんだ。


「彰悟くん、待ってよ……！！」


去ろうとする俺の背中に向けて聞き覚えのあるフレーズが聞こえた。

大音量ってわけじゃないけど、切羽つまった呼び掛けに周りは俺らの様子を伺っていた。

俺を呼んだ当の本人は目をうるうるさせて顔を真っ赤にして息を切らしてる。


「睦治……？」


俺がそう呼び掛けると腕を掴まれて連行された。