たんぽぽ 信一・維士

みー

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信一 幼稚園・高校生

1995年 信一

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1995年 信一

「ウィンドウズ‘95」です「日本上陸です、凄い行列です」「新しい世界の幕開けです」TVから女の人が叫んでいた。

 朝、時間を見ようとTVをつけたら凄い熱気が伝わってきた。
 田真信一は小学3年生になっていた。      

 信一にはさっぱりわからないが、学校に遅れそうなので急いで家を出た。

 信一の毎日は退屈だった。クラス替えして最初の頃はたくさん話しかけられたが、全てに返事をしないせいか、今では誰も話掛けてこなくなった。
 目敏い女の子達は(無口でかっこいい)と言っているらしく、やらなきゃいけない事を、何も言わなくても、全て先回りしてやってくれる。
 女子って母さんみたいだと思っている。
 あっ隣の家の三美も(めんどくせっ)と言いながら、おれの宿題をやってくれる、習い事も一緒に初めて、この前一緒に辞めた。
(友達でもないのに、何で一緒に辞めるんだ)って思ったけど面倒くさいので考えない事にした。
 信一の頭の中は、(面倒だ)と(つまんない)で一杯だった。

 無気力だが思い通りにならないと、蛾を通す、信一を見ていると、このままで良いのだろうかと悩む。
 人間が苦手の、私の子育てが間違えたのか、それさえもわからない。
 本当は誰にも言いたくなかったが、信一のあまりに酷い言動に、対処出来ない、押し潰され限界だった。
 信一の祖母で私の母に相談した「少し早いけど反抗期だよ 信一は大丈夫だよ」と私の目を見て優しく言ってくれた。
 母は信一に甘い。
 しかし、この言葉は信一ではなく、私の為の言葉に聞こえた。

 あっ、まただ、って思う。
 世間が全部敵だと、思っていた頃から、成長していない私がいる、母は最大級の味方であり、敵であり、神だった。母の言葉は、いつも私の為だった、私が生きて行ける為に言葉を選んでいた。

 信一は、私を通り越して、成長するのだろう、そう願いたい。
 あの子は、大丈夫だと、自分に言い聞かせたが、後から(たぶん)と、つけた。

 偶然ウィンドウズ‘95のパソコンが手に入った、信一になんて言われるのか、返事がないのか、少し怖かったが、

「信ちゃん、どうぉコレやってみる」と箱を差し出しながら、軽く心掛けて聞いた。
 「あっ、TVで騒いでたのだ、母さんありがとう」と言って2階の自分の部屋に持って行ってた。

 久しぶりに信一の声を聞いた嬉しいさよりも、何で此処で開けないで2階に持って行くのかわからなかった。
 もしかしたら、引きこもりになるのかとか、違う心配が増えた気がした。 
 頭が痛くなったので夕飯作ったら寝よう。
 忘れないで信一には声を掛けようとも思った。
 作り終え「信ちゃんご飯出来たよ、母さん寝るね」と、声を掛けた。

 おれには、難しい、説明書読んでもわからない、あっちこっち触ってたら窓が画面から出てきた。あーウィンドウズ、(窓)かぁ初めて英語を習っていて良かったと思った。

(TV で音楽も聴ける)って言っていた事を思い出した。近くのパン屋の名前のミッシェルと音楽って入れたら (シュ、シュ、ポマシェリ~なんとか、シェ、シュ、ポマシェリ~なんとか)音量調整出来ていないく大音量だったので、ビックリして椅子から転げ落ちた。
 
 誰の曲かも言葉もわからなかったが、少しワクワクした(ドラえもんのポケットよりすげぇ)と思った。

 休む事なく、毎日電源を入れて音楽を聴いた。

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