たんぽぽ 信一・維士

みー

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信一 幼稚園・高校生

2003年 信一

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2003年 信一

 朝、台所のドアに頭をぶつけて思わず舌打ちが出た、高3の信一の日課だった。

 毎日が(くだらねぇ)と思いながら学校に通っていた。小学3年生あたりから家でも学校でも殆ど喋る事はない。

 小学5年生でパソコンで曲を作るのを覚えて、今では作った曲を発表出来るサイトを見つけたので、色々出して試している。聴いてくれた人数がわかるので面白い。感想欄は面倒なので見ない事に決めてある。(勝手に好きに書いて下さい)って感じだ。

 高額の機材もたくさんある、母さんに欲しいと言うと何も言わず買ってくれた。好きな事見つけた息子を応援しているつもりだろう。

 音作りに夢中で、どうしても手が足りなくて隣の家のミミを初めておれの部屋へ呼んだ。
 いつ頃か忘れたが、三美(みよし)の事を、ミミと呼んでいる。
 ミミがおれの部屋の前で、ビックリして後退っている、

「本物のスタジオ見た事ないけど本物のスタジオのようだ」と訳わんない事言っていた。

 機材が多く2人で座れば一杯の部屋だった。

「前から思っていたけど、信ちゃん家凄いよなぁ、父ちゃん母ちゃん医者だし、ばあちゃん経営者、、、実はさぁ俺、小さい時から信ちゃんの子分のつもりだったんだ、
なんか信ちゃんの背中見ていると、安心出来たんだ、、、俺ぇ何か気持ち悪い事言ってんなぁ 悪りぃ」2人とも黙り込んだ。

「誰にも言うなよ、、、おれの母さん、リスカの後凄いんだ、中学の時ミミもおれと同じクラスだったから、わかると思うけど、、おれの隣の席のすげぇ美人で頭の良い女子、日に日に手と足の包帯増えてた。
 周りに全く興味のないおれにもわかる陰湿なイジメ受けてた、ずっとボコボコがに不思議だった 」言ってしまった。

 ミミは下を向いて泣いていた。
 何の涙か考えない事にした。

 こんな事聞く為、言う為に来て貰ったわけじゃない。 
 
 なんでこうゆう流れになったか、面倒なので考えない事にした。

 2度目のミミの来部屋だった。
「これ民謡」調子が多く入っている曲、「これ童謡」調子が多く入っている曲、右下の数字を指差して聞いてくれた人数、この2曲凄いだろう他はさっぱりダメなのに。
 手伝って貰う為にある程度説明は必要だと昨日から考えていた。
 コンセプト「簡単、わかりやすい」にした。
真剣に作りたいので、真剣に見て欲しかった。

「今世の中に、求められているのは、少し懐かしい単純なメロディだと思うんだ。これ2つ合わせて音膨らせて作りたい」と信ちゃんから真剣に言われた。
 
 ミミの頭の中では(軽いノリで手伝いok)のレベルじゃない気がする、なんか凄い事やっている(手伝えるかなぁ)と不安が過った。

 背中に汗びっしょりかいて、言われた通りボタン押しまくって、間違えても軽く「初めからね」って、出来ない俺にイライラしない信ちゃんが、大人に見えた。

 帰る時「盆踊りって知っているか」って聞かれて、音で溢れているおれの頭では考えられなくて「知らない」と答えたら、
「熱帯雨林の奥とか外国の山奥の部族の踊りの日本版だよ、おれ、あの音好きなんだ」と信ちゃんが言っていた。

 俺の事ミミって呼ぶのも信ちゃんだけだ、だいぶ違う世界行ってんなぁと帰りながら思った。

 ミミに手伝って貰い曲は出来た。
 後は絵だ。
 簡単に言うとCDの表紙と曲とセットで発表する感じで、殆どの人は自分で絵を描いて、まるで世間で認められた芸術家気取りがわかる。   

 おれは、二兎を追う者は一兎をも得ずと頭に浮かぶが自分で描く事にした。

 進路も決める時期だった。
 本当は一日中好きな曲を作っていたい、そんな事無理だよなと自分に言った。
 働く、大学、専門、、どれもなんか違う。
 
 おれは自分のことを考えた。
 殆ど喋る事がないなんて7割方男ならそんなもんだろうし、空想の世界で生きているなんても当たり前過ぎて普通だ。 

 おれくらいの生き方だと陰がない、大学中退の経歴が欲しいと思った。
 世間が勝手に何があったんだとベールに包んでくれる。
 あれ、もしかしておれ世の中に出たいかも、(相談しなきゃなぁ)と、ふと思ったが。
 誰にだぁと考えた。
 父さん母さんは医者で世間に疎いし殆ど喋った事がない。

 やっぱり、ばあちゃんだよな、泥水を啜りながら生きてきたばあちゃんは凄い、おれは明日会いにいこうと決めた。

「後悔しない生き方を、したら良いよ、3年前、禍福の法則の話覚えているかなぁ 誰もが皆、好きな事出来る訳じゃない事はわかるよね。
 もうそこからプラス、マイナスの、足し算引き算が始まるんだよ、
 好きな仕事イコール幸せじゃない事は覚悟してね」と苦笑いしてばあちゃんが、言ってくれた。

 目を光らせて、声も小さくなり
「いじわるに聞こえるかもしれないけど、好きな事は、本当は仕事にしてはダメだよ。
 嫌いになってなしまうからね。
 好きな事は大事にとっておいてね、少しずつ楽しんで、自分が悩んだり苦しい時は助けてくれるよ、好き事はお守りなんだよ」って言っていたような気がするが、あまり聞いていなかった。

 音楽は趣味にしとけって言うことかなぁとも思ったが、
(後悔しない生き方するよ、ばあちゃんありがとう)と心で言った。

 胸に小さいトゲが刺さっているようで少し痛いが、考えない事にした。
 
 帰り道、強風で前髪が、目の前にカーテンのようで気になった。
 いつもは半分が定位置だった。

 目も悪いのにメガネもコンタクトもしていない、小学5年生あたりから、世の中ボヤけて半分見えるくらいが、丁度良いと思っている。
 いつまでも中2病だなと思った、あれどうしたんだおれ、自分に驚いた。

 パソコンで描いた絵と曲を発表した。
パソコンだとそれらしく、見えるらしい。それって芸術家って事、違うだろうと思った。

 もうすぐ正月だ聴いた人の人数が凄い事になっている。暫くは見ない事した。
いつもと変わらぬ日常だ。
 ネットの人数、本当かどうわからないが、怖いなぁと漠然と思った。

 正月開け2人の女の人が「CD出しましょう」と、おれの家に来た。

 最初は何を言っているか、わからなかった。
 このまま曲を作れると知って、高校卒業と同時におれのデビューが決まった。
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