たんぽぽ 信一・維士

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信一 退院

2012年 春 信一

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2012年 春  信一
 
 朝、目が覚めると、いつも通り真っ白だ、
「あァぁ、今日も生きてた、」と、独り言をいい、ほっとした、
「検温の時間です」看護士が入って来た、
今日も一日いつも通りの流れがまっている。
 入院が陰の部分今なのか、光の部分なのか、たぶん陰だろう、陰とか光を考えると、ばあちゃん元気だろうかと思う、1年前会ったきりだ、
考えるの事は、全て過去の事だ、寂しい気もするが、未来は見ない、。
 
 昨年夏、仕事に来ない俺を社長が呼びに来て、起きないおれに異変を感じ救急車を呼んでくれてから、もう8か月くらい入院している、
内蔵が、悪いらしい、説明は受けたが、多すぎて面倒なので、まとめて内蔵だと思った、今日、明日死ぬ事はないが、そんなに長くもないような気もするが、一応先生は、治療次第だと言ってくれた。
 事務所と契約していて良かった、全て面倒をみてくれる、後1年契約は残っている。
実家に連絡は必要ないと言った、世間には病気入院とは発表せず、ただ単に仕事を入れていない状況だったので、自然引退の様だった。
 暇なので、いつも同じ事を考える、イシを飽きた理由は、そうするといつも子供の頃を思い出す、おれの顔色伺う、気を使った言葉をよこされても、無視をするおれがいる。
 無視をする事が悪いと思わない、なぜ、わからない、
最近、人がどう思っているかを考えればと、わかったが、おれが考れば、おれの考えだ、
内科医だけじゃなく精神科医も必要だな、呪術師もだなと、いつもの堂々巡りが頭の中で言っている
 
 珍しく社長がきた
「信一、そろそろ退院だって、先生からよ」
「あぁ、おれ、もう長くないって事かな」
「静かに暮らせば、20年、30年、大丈夫だって」
「そうならいいけどなぁ」
「で、これからの事、どうしたい」
「おれが決めれる事なんてない、引退か」
「そうね、丈夫な体と心じゃないと、無理だね、どおぅ音楽は作れそう」と、おれに聞いた
「低く音なら、なんとかなるけど、無理かな」
「このまま引退する方向でいいの」
「ずっと考えていたんだけど、おれ最後に画家ドクと対談したい、雑誌の方が時間気にしないでやれる、
雑誌見つからないなら、おれが出す、あっ悪い、おれとドクの対談でおれが出版する」
「そう、信一が出すなら、なにも言う事ないわ、全部信一が仕切れるの、」
「カメラマンと場所とドクの交渉頼む」
「全部じゃない、まぁいいわ、今、信一調子良さそうだから、退院早々に対談出来るように、ドクさんに聞いてみる、ちなみに何を対談するの」
「ドクの絵にドクはどう思うか、かな」
「ずいぶん、曖昧だけど、ドクさんと話したいだけじゃないの、振ったか振られたはどうでも良いけど、対談どうでもしたいの」
「おれの最後の区切りにしたい」と、おれは言った。
「ドクさんの返事次第ね、聞いてみる」と言って社長は帰った。

 ここの病院に退院後も通うなら、今まで通り後1年は事務所の上に住むつもりだ、ゆっくり引っ越し先を探そうと思った。仕事も無く、ひとりで生活だよな、急に退院って、おれ大丈夫かな、まあ全てゆっくりだよなぁ

 看護士と担当医がきて、退院の説明をして行った。1週間後に退院が決まった。

 いよいよ退院かと思い、今までのこと考えた、たくさんわかったことがある。
8年が短いか長いかは、わからないけど、
お金は人を変える、おれも裸の王様で周りを見下していた、ちょっと曲が売れると面白いくらい人が寄ってきた、同じ業界人はもちろん、あっちこっちの偉い人、ダンサーモデル俳優タレント売り出し中に曲を作れとか一緒に歌えとかいわれる、どこも駆け引きが凄い、売れるようにもっていく力も凄い、商品で脚光浴びるより、裏のビジネスの方が面白そうに見える、おれももっと勉強していればと思う時があった、、まだギリギリ若かったから脚光でも良かったが、30、40歳の脚光はおれの中ではない痛い。
四六時中追っかけのファンとか、、加齢臭の髪の薄くなったおじさんに付いてはこない、まあそれらを望むのが芸の道なんだと、、おれが望んだ世界と違かった、
 おれは音楽オタクの子供だから世の中の事、これっぽっちも知らなかった、
特に人前で、芸をするやつらの根性は半端なく、人を踏み台にするくらいの根性だ、その陰で亡くなったやつらも多く見てきた、
そんな異常な世界に、ドクを入れない為頑張ったお母さんって凄いなぁ
 
 おれが戻れるなら、音楽オタクの仲間見つけて、趣味でネットに発表して、ああでもないこうでもないと、飲みながら音楽論壇して、ワッハハと笑い、さぁ仕事頑張ろうってビジネスの世界で頭角表したいなぁ
 なんで、あの時見誤りした(本当に好きな事は趣味にしろ)と、
今のおれにはその言葉が痛い程わかる、なんか夢の世界だ、、、
涙が出ててきた、、、
今後も叶わない夢だ、、、、
これからも、独りぼっちだな、、。
 
 イシを思って、仕事も悩み、、様々辛い時期があった、音楽がおれの慰めになってくれていたら、どれだけ心が楽だったろう、、、、
 売れる音楽を求められ、売る音楽を作る。楽しいくなかった、表面だけの友達も楽しくなかった、落ちたと見切りをつけられた。
趣味も仕事も一緒だと言う人は、一生知り合いたくない、想像しただけでも気分悪くなる。
病気で弱っているせいか疲れた、引退だなぁ。最後はドクと対談がしたい。


 退院の日、社長が来てくれた
「ドクさんは、了承してくれなかった、何度頼んでもダメだった。結局直接は無理だったので、
大さんに間に入ってもらったの、お金の力でなんとか頼み込み、相当2人で話し合った見たい、やっと了承してもらったからね、
1週間後、信一の部屋に決めたから、それと、明日までに対談の流れ寄越して欲しいって、ちゃんと話しの流れ作ってね、支離滅裂に話が飛ばないでね、
当日12時から14時まで、プライベートの話なし、絵の事だけの対談で、事前の流れからそれたら途中でも終了の契約だからね、」
「わかった」


久しぶりの我が家だった8か月前は汚い部屋がすっきり綺麗になっていた。
1週間後、ドクが、来てくれる、対談をお願いしない限りもう一生会えない、と思う
会えるわけがない5年間執着して毎日苦しんだのに、手を取った瞬間たったひと月しないうちに飽きた。
 入院中考えたが、なぜ飽きたか、わからない、このまま一生考えたくないが答えがない限り考え続けるだろう、ドクにあったら、答えが分かりそうだ、と思い対談を思いついた。
 無理矢理対談かぁ、6年前も無理矢理会ってもらった。すべておれの我儘だな、、ため息が出た。アルコールが飲みたいが、飲めない、
 対談の流れ今日中に出来るか不安だ、他の事考えないで、まず作ろうと思った。

まず挨拶、
他の人の絵に興味があるか、(信一、ドク 返答次第で掘り下げ)
いつ頃から描いた( )
何を思って描くのか( )
信一ドクの絵 掘り下げ その返答 ドク
今描きたい絵はあるのか、( )
今どんなところで描いていてのか( )
これからの夢 ( )
うぅん、絵の事だけだとこんな感じか、後はドクにたくさん喋ってもらう、
喋るわけないよなぁ、本に残るし、やっぱりプロに頼むほうがよかったかぁ
どうにかなるか、ならないなぁ、、、
これで出そう。

社長に持って行った
呆れた顔したが「信一がいいのなら、これ大さんに送信するね」
「頼む」と言って部屋に帰った。







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