たんぽぽ 信一・維士

みー

文字の大きさ
37 / 46
信一 対談

2012年 春 信一

しおりを挟む
2012年 春 日曜日 信一

 流れ通りに、何回もおれは確認した。
他の人の絵に興味があるか、(信一、ドク 返答次第で掘り下げ)
いつ頃から描いた( )
何を思って描くのか( )
信一ドクの絵 掘り下げ その返答 ドク
今描きたい絵はあるのか、( )
今どんなところで描いていてのか( )
これからの夢 ( )

 朝早くからおれの部屋は次から次と人だらけだった。あれよあれよと言う間にスタジオに変わった、その隅での確認作業だった。
 
 ドクが来た、
 ありがとうとおれは言った。

 1年ぶりで会うと、凄い眩しい自信なのか、髪は伸びて肩のあたりだ。周りのスタッフも息を呑む気配がする、その隣のチューリップもドク程ではないが、凄いの一言だ。

 2人ともスーツ姿で一流のモデルのようだ。
 大丈夫かなおれ、霞んでないか、たぶん霞んでいるなぁ、大丈夫だと自分を励ました。

対談を初めてた、
「画家ドクさんと対談光栄です、田真信一です。今日は宜しくお願い致します。」

「宜しくお願い致します」

「気になっていたんですが、ご自分の絵以外で好きな画家とか興味のある絵とかありますか、おれは自分で絵を描いてCDとかで発表してますが、ドクさんの絵を2枚TVの前に飾って毎日話し掛けています。TVに出ているおれが、TVを見ないって言ったも同然ですね、
この絵は生まれて初めて、体が震えた絵です」と、言って椅子の絵を見せた。

「ありがとうございます、僕は他の人の絵に興味はありません。強いて言えばチューリップが好きです」

「ドクさんの個展とチューリップはセットでしたね」

「はい」

「チューリップについてもっと聞きたいですが、話を絵に戻して、いつ頃から描き始めましたか、おれはデビューのきっかけになった曲の投稿サイトように描いたのが始まりかな、
描きたくて描いたわけじゃないので少し微妙ですが」

「僕は、小3くらいです」

「それから、ずっとですか、ブランクは」

「ずっとです」

「凄いですねぇ、経歴を見ると2年前に東東大卒業してその後画家で食べているのかぁ 凄過ぎて、高卒のおれじゃ話し、あいませんね」と、余計な事を言ってしまった、あっ周りの空気が変わった、何言ってんだ、元に戻せと別のおれが急かす、

「うぁ、申し訳ない、不甲斐ないので自虐が、でました」

「特に気にしません」と、ドクがどうでも良いように言った。

 あっまた上から来られた、思い出した最後の日と同じだった。

「小3の時、何かきっかけがあったのですか」

「何もないです、後で思い出すかもしれません」と、ドクがこの対談をやりたくないのを言葉で出した。

「じゃ思い出したら教えて下さい、今迄他人行儀でしたが、読者のみなさん、おれとドクさんはかなり親しかった、過去形ですが、」

「そうですか」と ドクは聞き返しの返答してくれた。

「毎日ドクさんの絵を見て、ドクさんの顔思い出すので、毎日会っているように錯覚してしまいました、親しかったではなく、親しいつもりだった、ですね、」と、おれは答えた。

 この茶番の対談で1年前の答えを見つける事は出来るのか、無理そうだ。

 残りの流れの台本を飛ばして、夢を聞いて終わりにしようと思った、

「最後に、ドクさんの夢、教えて下さい、本当は対談なので会話が出来ればよかったけど、話しの組み立てが下手で、インタビューになってしまいドクさんには申し訳なかったです。

 まずおれの夢からですが、
いざ夢って考えて思った事は、生きることかなぁ、、ドクさんも、読者さんも、おれを見て驚いたと思う、察してくれ、なんてカッコつけている場合じゃないくらい変わったでしょう、
 今まで、脚光をたくさん浴びてきた、今は陰の部分かなぁ、

 おれのばあちゃんが、大きい光には大きな陰だよ気をつけろと、言ってたんだ、その意味が今わかるよ、後どのくらいか、わからないけど、夢は生きる事かな、少し大袈裟ですが、、でドクさんは」と、おれが言うと、ドクは何かを考えている顔で、

「僕の夢は絵を描き続けたい、信ちゃんの、、、生きたいと一緒だよ、、

 僕、数ヶ月に1回知り合いに、会いに施設に行くんだ、その人は痴呆で、僕を自分の中学生の子供だと勘違いして、いつも会うと、

(笑って生きてちょうだい、お願い笑って、辛くさせて、ごめんなさい、)って言って泣くんだ。当時言えなくて後悔した言葉を今、言っているんだ。生きるって大変だよね。

 信ちゃん、性格悪いから友達いないよな、
僕がなってあげるよ、これから宜しく」と、ドクがおれの目を見て、ゆっくり言った。

「イシ、ありがとう、施設に入っている人はイシと出会えてよかった、ありがとう、おれはずっと寂しかった」おれは、思わず言った、泣いた。

おれの主催の対談に涙が止まらない。

 社長がまとめてくれた、スタッフみんながもらい泣きしていた。撤収した。
 2人が帰るところに、おれが、

 「イシ、おまえからメールして欲しい、明日から毎日暇だ、いつでも良い、ばあちゃんの事ありがとう、メール待っている」と、おれはすがるように言った。
隣のチューリップは面白くなさそうな顔を
していた。

「わかった、じゃあ」と、イシは言って帰った。
皆んなが帰って1人だ、
寂しかった。


 答えなんて悩む必要なかった、子供が欲しい物を手に入れるまで、駄々を捏ねて、手に入れた瞬間飽きるのと同じ事だった。

 本当に欲しい物ではなかった、あの椅子の絵を描いたドクが欲しかったのか自分の心が定かではないが、あの時は、イシではなかったのは確かだ。

 イシはおれの家族を見ておれが隠してた部分を見抜いた、我儘な、はだかの王様のおれを知って、おれより悩んだ末の話合いだった、全て振り回していた。
 まだ20時だ。家に電話した、

「おれ明日昼に帰る、日帰りだよ」と言う
母さんが待っていると、言ってくれた。
電話を切った後、おれの事(待っている)人がいたんだって、泣けた、病気のせいか、涙腺が緩い。

 ドクの絵は今日の対談用に出したが、今のおれには、見れないのでしまった。
イシも大学3年までの絵は見ないって言っていたなぁと思い出した。絵はドクで実際の人はイシだった勝手に思ってた、
(早く売りたい)と言っていた事も思い出したが、今さらおれに売らせろなんて、言えないなぁ。

 母さんに会って何を言うか、その場で考える事にした。退院間もないので疲れた、寝れないが、横になって目を閉じた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...