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信一 37歳
2013年 夏 信一
しおりを挟む2023年 夏 信一
イシとばあちゃんの家で暮らして11年たった。
37歳になったおれの病気は体調管理のおかげで現状維持だ。
春に、おれが、惣菜を貰いに実家に行ってる間に、世界で活躍しているピアニストが訪ねてきたらしい、本人だったとイシは教えてくれた。
なんで、おれのいない間にと、軽く嫉妬した。
「僕の絵のファンで、絵に乗せて音楽を作りたいとプロのピアニストがきた、オーラを隠しているつもりの様子だったけど、凄いよ、プロの音楽家の自信に満ち溢れていた、彼は隠しているつもりだろうがね」
「おれも仕事でプロのピアニストに会った事ある格が違う、俺の大衆音楽との違いを見せつけられて勉強不足で恥ずかし思いをした。
まあアイツらは ハイハイ終わった2歳辺りから1日何時間も、それこそ命削って音楽に携わってきたからなぁ、
それこそ途方もない天才達でふるいにかけられ残った大天才だからな。
俺の大衆音楽の時代の乗って、たまたま売れたのとは、同じ音楽でも土台が違う、滲み出る自信が半端ない」とおれも絶賛した。
「だね、プロとプロが友達には絶対になれないなぁ、表面上の友達にはなれるけど」
「なんで」
「えっ、信ちゃんわからないの、、、、理由は、簡単でしょ 命を削って作った作品が、片方の人だけ脚光浴びたら、片方は(認められて良かったね)、と口で言っても心の中で悔しいからだよ、心が病むょ」
「あぁ、そうだなぁ」
「信ちゃん前に同業者と音楽対談の、
仲良しごっこしてたよね、同業者で親友だと言っているのはどちらかが、プロじゃないからだよ、それか2人ともプロじゃないかもね」
「仲良しごっこって、仕事だよ。
おれら仲良いんだアピール、売れている方に乗っかるの、裏で金動いてんだ大衆音楽は商品だから、命削って作品生み出さない、今だ1番2番って繰り返しじゃないと、ついて来れないで売れないからなぁ」
「プロ同士の親友は、片方生きていけないね」
「まぁなぁ」
「曲は断った、彼に軍配上がっても嫌だし、それに僕の個展だよ、」とイシが言った。
「おれも昔、イシの絵に曲乗せたいと思ってたよ」
「2-3年後でも10年後でも、いつでも作って軽くで良いよ、信ちゃんとならコラボするよ」
「おい、おれはプロじゃないのか、、、まあなぁ、、、」と、おれは病気で音が苦手になったが、もし出来たら、1枚の絵のような曲を、個展会場で流したい。
「信ちゃん、僕達は一心同体だ、もし片方が脚光浴びても、直ぐ手放すよ何の意味もない、脚光の無意味さを僕達は良く知っているから、もっと大切な物を僕達は壊したくないからね」と、おれは目を見開き、涙が溢れるのを我慢して、
「ありがとう」が出た。
脚光を浴びるのは維士だけだ、おれは無理だ、それを軽くいらないと、おれの為に言ってくれた。
昔のおれに聞かせたい、おれは大馬鹿野郎だった。
ダメだ、オイオイ涙が出て止まらない、、、、。
毎年夏に歯科医院のロビーでの個展が続いている。
相変わらずチューリップともコラボして年1回は会って近況報告しあっている。
ドクだった頃の500枚の絵は5年くらい前に売り切った。その後も年60枚くらい出品した。ゆっくりペースで描いているようだが、在庫で200枚くらいはまだある。
殆どの収入は子供達の施設、孤児院等に寄付している、それも11年前に話し合った。
昔、イシと一緒なる前1人で想像した通りになった(僕は生活出来だけのお金があれば良い、お母さんのおかげで大きくなった、親のいない子供達に寄付しよう)のような事だった、もちろんおれの印税とかの収入も寄付している。
梅雨が終わりごろ、寄付している先の孤児院で2歳から知っている少年が先日おれを訪ねて相談してきた。小さい時から誰にも懐かず、おれの子供の頃のような少年だ。
中国人の子供だ。
13歳、見た目はどこの芸能事務所でも欲しそうな外見に育った。
ひねくれて、生意気な子供だが、おれにはまとわりつくので、相談したい事があったらいつでも言えって言ってあった。
芸能事務所が全て面倒見たいと言って、金額も提示され13歳の少年には大金だったようだ、
「直ぐ捨てられるぞ、おまえバカなんだから勉強して知識で勝負しろ、何も出来ないのに外見だけで勝負できる殆ど甘い世界じぁない、若いうちは、歌え、俳優やれ、写真集出せ、ラジオに出ろ、作った事のない歌までほら、おまえの作った歌だって渡されるぞ、あらゆる事で金稼げと言われる。
売ってもらっているうちは良いが、スピードの早い世界だ、次から次と後ろからやってくる、図太い神経のやつでも病気になる。
おれでさえ、右手に精神科医、左手にシャーマン後ろに美容家って本気に悩んだ。
おまえ将来の事真剣に考えろ、勉強する大事な時期に歌って踊るか、まあな、華やかな世界に憧れる気持ちもわかるがなぁ、まず勉強しろ、おまえを助けるのは、おまえしかいない」とおれは言って「イシおまえはどう思う」と、他の意見を聞きたかった。
「そうだね、13歳かあ、僕も信ちゃんと同じ考えだよ、直ぐまでいかなくても、捨てられるよ。
君は親がいない、後ろがスカスカだから捨てやすい、親がいない事を責めているわけじゃない、これはばかりは自分の力でどうこう出来ないからね、仕方がない。
親がいなくても孤児院の仲間がいる羨ましいよ。
僕は友達いなかったからね、仲間は一生君を助けてくれると思う、君も仲間を助けなければね、今貰えるお金は大きいけど、一生じゃない、一生自分の生活支えるのは自分しかいないのはわかるよね。
知識と教養は君を助ける、まず勉強しよう」とイシが言ってくれた。
あぁ同じ考えなんだ、18歳のおれにも言ってくれたら違う人生だったかな。
少年は勉強してするって言って晴れ晴れとした顔で帰った。
子供ながらも胡散臭さを感じていたのだろう、簡単に寄付って言っても人の人生にも関わる責任を感じる。
2人とも、金が幸せにしてくれない事を痛い程知っている。
生活が回る程度の金があるのが幸せだ、それ以上でもそれ以下でも不幸だ。
ばあちゃんの言っていた禍福の法則は凄い、生きてきて全て当てはまる、人の生き様は大体平等に出来てる、不思議だよなぁ。
夏の個展になると耳の後ろがキリキリ痛いとイシが言う、毎年病院に行けと言っても絶対に行かない、1週間くらいで治るらしいので、おれも直ぐ忘れて、毎年改めて思い出すのであまり気にしていないが,さっきも痛いって言っていたが直ぐ治るだろう。
この時期になると思い出す、歌って踊ってたのが自分かと思う程実感がない。
たぶん地に足が着いていないまま動いていたからだろう。
裸の王様で周りにチヤホヤされだいぶ生意気だった。
大きな反動が今なのか、この先に反動が起こるか考えると怖いと思う。
今幸せだ、イシは可愛い、愛しい、うぅん言葉で表現出来ない、愛しているとか、、好きだとかじゃない,そんな軽い言葉じゃなく、1番しっくりくるのは(おれの全てだ)だろう。
いつまでもずっと一緒だと思う、、イシもおれの事を大切にしてくれる,おれもイシには甘い。
11年間色褪せないどころか、ますます仲良くなる。
自分の人生がこうなると若い頃は思わなかった。色々病気の為の制限あるが、イシが居るから良しとしよう。
イシと母さんはおれ達がここに住んでから,週一回ばあちゃんの施設へ2人で行く。毎日11時頃惣菜をもらいに、実家に取りに行くのはおれの仕事だ。 (おれの体調管理のひとつだ)
母さんとの蟠りも消え,最初の頃「なんで,おれを誘わないんだ」と母さんに聞いた
「そうねぇ、、、イシくんに聞いて、私はどっちでもいいから,,,,毎日一緒でしょう、週1回ぐらい解放してあげたら、」って言って笑ってた、、
イシに聞けないから母さんに頼んだようなものなのに,遠回しに断られた、寂しいが仕方がない,前に大切な時間だと言われてた。
まぁ、ばあちゃんのところへは、イシと2人でおれも週1回行っているしなぁ、
この個展の前に,初めて3人で行こうと誘われた、この前イシと2人でいった時はばあちゃん普通だった,何が起こったんだろう、
「おれも,良いのか,何かあったか」聞いたら、
「何にもない,なんとなくだよ」
「ふぅん、、そうか」と,おれもなんとなく腑に落ちないが、、。
いつもは、おれとイシが行ってもベッドに横になっている。側に15分くらい、居て帰ってくる。殆ど喋ることはしない。寂しけど、生きているだけで良い、長生きしてほしいと思う。
おれ,ばあちゃんより長生き頑張るよ、とばあちゃんの顔見ながら、心の中で色々会話している。おれも大切な時間だった。
3人で初めてばあちゃんの施設に行った。
ばあちゃんはゆっくりと起き出した、
イシを見て
「夕,結婚したの,素敵な人ね、良かった,,良かった,,,大人になれたのね,良かった,,、、生き続けてくれて良かった,,私は良い母親になれなかった、、夕,あなたは大丈夫ねぇ、、こんな素敵な人が一緒だから、、、夕、、、私の元に生まれてくれてありがとう、生き続けてくれてありがとう、、、、
これからもは,2人で 笑って 生きてちょうだい」と,おれが母さんの夫だと思ったらしい、イシは母さんだ。
部屋の隅で母さんが泣いていた。
イシは、ばあちゃんの手をずっと握っていた。
こんなに喋る元気があったんだ,ばあちゃんは母さんの事ずっと心配しているんだなあぁ、
生きるって,難儀だなぁ、、、。
帰りは3人とも放心状態だった。
イシ曰く、母さんの匂いが、おばあさんに母さんがいるって分かるらしい、人間も動物だと言う事かぁ、、。
昨日個展が終わって、今年の大仕事が終わった感じだ。
いつも通り11時にお惣菜とってきて,お昼に2人で食べた。
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