たんぽぽ 信一・維士

みー

文字の大きさ
43 / 46
維士 35歳

2023年 夏 維士

しおりを挟む
2023年 夏 維士

 夏になり初めのころ、信ちゃんに孤児院の少年が訪ねてきた、相談があるようだ。

 芸能事務所にスカウトされ、どうしたら良いか悩んでいるらしい、中国人の少年だ。
中国人の俳優で世界的大スター似ている、あっ大ちゃんにも似ている。

 孤児院育ちの陰が良い味を出した少年だった、これだけの見栄えで陰があり、孤児院育ちを出せばあっという間にスターになるだろう。
 でも同じ早さで落ちるだろう。
 陰は暫くは同情を引くが、お金を払っていつまでも陰を愛でたい人は少ない。

 世間は次から次を待っている、気晴らしの気分転換要員を待っている。
 早さに敏感な人達に直ぐ捨てられる、その後生きていけなくなる人が多い、それを信ちゃんは肌で経験したので、違う世界で輝けと言っている。
 僕も同じ考えだ、信ちゃんに聞かれたので同じような事を少年に言った。
帰る際、

「君は幸せだな、相談出来る人がいる、それも元トップスターだ、僕が君の年齢の時は誰もいなかった、君の後ろは信ちゃんが守る大丈夫だ」と言ったいら、

『ありがとう」とはにかんでた。


 個展期間中,信ちゃんは大ちゃんに、

「今年も1人か,もうおじいさんに片足突っ込んでいるんだから、誰でも良いから相手見つけろよ,チューリップは話し相手に何ねぇぞ」って揶揄って楽しんでいる、

「イシ,あいつ家でも、うるさいのかぁ、」と、大ちゃんは面倒そうだが、2人は結構仲が良い、良いコンビに見える。

 さっきまでお母さんもいたが、帰った、
今は東京に住んでいるので,個展は必ず見に来てくれる。信ちゃんとお母さんも仲がいい、

「イシの言う事聞いて、長生きしてね」って会うといつも言われて、

「はい、はい」っていつも返している。

 信ちゃんは体調の波があって辛そうな時が最近多いような気がする、イシの管理のおかげで体調が良いと,誤魔化すが僕の前で無理する事ないのに、寝てろと言われるのが嫌なようだ。

 信ちゃんが、いなくなると、僕は寂しい,,絶対に長生きしてほしい、、こう言うことは考えたくないが、顔色が悪く辛そうな時は,僕も辛くなる。
 

 この個展の前,3人で初めておばあさんに会いに行った,3人でどうしても会っておかないと、後悔しそうな胸騒ぎがした。

 怖かった,何が怖いかわからないが、気持ちが落ち着かなかった,おばあさんに3人で会ったら、大きななにかで,3人を包んでくれた,胸騒ぎが収まった,きて良かったと思った。

 まさか信ちゃん、死なないよねと心の中でおばあさんに聞いたら、大丈夫って聞こえた。

 絶対大丈夫だよねって,心の中でもう一度聞いたら、返事が聞こえなかった。
さっきは聞こえた,だから大丈夫って自分に言い聞かせてたなぁ。
 
 個展最終日の今日も一緒に会場にこれたから信ちゃんは大丈夫だ。
 
 次の日は,大仕事が終わった感じで,全てがゆっくりしていた。
お昼ごはんを信ちゃんとゆっくり食べた、
つもりだが、座っている僕の体の動きが悪い,音の聞こえが悪い,しばらく座って様子を見た、信ちゃんが,うまいなぁ,どうしたって言っているようだ。

 すごく遠くから聞こえる、たぶん僕は座ってたまま動けない。
 動きがスローモーションのようだ、なにが起きたのか,地球が止まったようだ。
 ゆっくりテーブルにうつ伏せになったようだ、力が入らない、何か信ちゃんが言っていた、
 そのまま,気を失ったらしい。

 起きたら病院だった。

瞼をゆっくり動かせる、体もたぶんゆっくり動かせる,信ちゃんが僕の手を握って泣いてる、

「イシ,大丈夫か、、、」遠くから聞こえた。

 難聴からくる全身麻痺の難病で,僕のような外見の人が多い別名マネキン病というらしい、急な病気に見えるが、生まれた頃から耳の後ろの神経が敏感で原因不明だが予兆はあったと思う、、、残念だが日本では症例が少なく治療が出来ないと説明を受けた。
 僅かに聞こえた。
 しばらくはこのまま入院して,手続きが済み次第ここのドクターと渡米して治療する事になった、この難病を日本でも治せる足掛かりにする為ドクターも一緒との説明だった。
 
  僕はこれからどうなるのか,信ちゃんを残して先に行くのか、、、何が起こった、、ついこの前まで動けた。

 なぜ、なぜ、僕が、、無念だ、、、死にたくない 心の中で様々葛藤した。

 あまり、急に体が動かず、現実に僕がついていけない。たくさん考えなくてはいけない事があるはずだけど、何も考えられない。
 
 寂しい、だけだ。

 おばあさんに、3人で会いに行った胸騒ぎは、僕の事だった。
 信ちゃんじゃなくて、よかった。でも、やっぱり寂しい。

 信ちゃんとさっき入れ違いで、帰った大ちゃんとの別れも寂しい。

(イシが家を見に来て時から、恋をしていた。一生告白しないつもりだったに、
 信一が現れなかったら、側にいて守っていくつもりだったよ、
イシが、今病気になって、暫くいなくなるなんて、、もう会えないのだろうか。そんな事ないよな、
今でも恋しているよ)
大ちゃんは、泣きながらゆっくり言ってくれた。

(あ・り・が・と・う)僕が大ちゃん耳元で囁くと、ますます泣いていた。

信ちゃんが、大ちゃんとすれ違いの時、

「イシの事、これからも宜しくな、イシは元気になるから」

「任せろ」
と泣きながら言って、帰った。

信ちゃんは面会可能な時間はいつも来て,僕の隣で寝ている。

 僕は殆ど動けないがゆっくりと絶えず動いている,そうしていないと床ずれで痛くなる、

「おれの事ばかり、心配させて悪かった。
個展中いつも言ってたよな、耳の後ろ痛いって、この病気の前兆だったのかな、
早く、病院に来るべだった。
おれが、病気だから、おれがイシに甘えていた。もっと、しっかりしていたら良かった。
 甘えてばかりで、、おれ寂しい。」
信ちゃんも、言いながら泣いている。

 僕は頭の中で、もっと早くこの病気がわかったなら、何か変わったのか、個展中耳の後ろの痛みが関係していても、日本での治療が無理ならどうしよもうないか、これが運命と言うのか、今の事を考えないと。


 信ちゃんは面会可能な時間はいつも来て,僕の隣で寝ている。

 僕は殆ど動けないがゆっくりと絶えず動いている,そうしていないと床ずれで痛くなる。

 やっと上げた手で信ちゃんの顔を撫でる、見惚れる程良い男だ、信ちゃんは気持ち良さそうに撫でられ、目から涙が出ている。

 もう少しでこの時間もなくなる,,治療をしないとあまりもたない、、、がこのままでも良い、、かと弱きになる。

 脳も麻痺して何もかもわからないほうが、幸せかなぁと思う時がある、あまりのも辛い現実だ。

 数日前まで、信ちゃんの長生きを願っていた、今も願っているが、僕の方がが急に弱った、、、。

 信ちゃんには迷惑かけたくない、

「信・ちゃん、僕は・大・丈・夫だ・から」
と信ちゃんの耳元で囁く、

「そうだ、大丈夫だ」って泣き笑いしながら言ってくれた。

 病院の夜が怖い、ひとりぼっちだ。
 いつからこんなに、弱くなったんだろう。
 11年、信ちゃんといつも一緒だった。

 信ちゃんが僕を守ってくれていたんだ、僕が信ちゃんを守っていた、つもりだったが逆だった。


寂しい とっても寂しい、まだ、生きたい。

頭の中で物語を作った。

 僕は黄色い帽子を被った小学1年生、信ちゃんはちょっと大きい小学3年生、僕の手引っ張り学校に行く、

「イシ、意地悪されたらおれに言え、おれがイシを守るから、イシは、何も心配するな、笑ってろ」

 小学3年の信ちゃんがパソコンで音楽聞いて椅子からひっくり返ってる、

「信ちゃん、シェリーに口づけっていう曲だよ」って言って、
僕が信ちゃんに口づけをすると、またひっくり返っている。

信ちゃんはいつもかっこいい、
僕だけのヒーロー、、、、小学1年の僕は信ちゃんが大好きだ。

 信ちゃん、 僕、死にたくない、 、 いつまでも信ちゃんと居たい。

 信ちゃん、助けて、苦しい、、もう会えないの、、、寂しい、、
 僕は心の中で、叫んだ。

 僕の中の信ちゃんは、笑っていた、、信ちゃん聞こえてる、何度も声をかけた、  

 助けて、、欲しい、、、。

 だんだん白いカーテンの外が明るくなってくる。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...