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3月
ホワイトデー
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まだまだ寒い三月。そう、運命の三月。
3月31日をもって、このソーシャルゲーム・学園討伐部はサービスを終了してしまうのです。
本日は3月14日のホワイトデー。
本来であれば、部長が部員達にバレンタインデーのお返しをする日であります。
「ログインはすれど、なんもないのよね~」
ヒメノ先輩は、机に寝そべりながら携帯電話をいじっている。たまにネイルの長い爪が画面にあたってカチカチなった。
「例年だったら、課金アイテムで特別なアイテムとか贈ってくれたけど……」
のっぺらぼうを伏せながらあやなは、はぁ、とため息をつく。
「今はもう課金通貨販売も停止してるからね」
スズ先輩も窓際の席で頬杖をついて外を眺めていた。
「去年は私ヘアピン貰ったんだ~」
「私はカチューシャ! でも貰っても、部長が着替えさせてくれないと付けれないんだよね~」
「それ!! 貰ったものくらい自分で身に付けさせてほしいよねー!」
「システム上、うちらにそういう機能ついてないから仕方がないでしょ」
一年生の和気あいあいトークに、ピシャリと外を眺めたまま割ってはいるスズ先輩。
一年生組が、なんか言ってやってよ、という視線を私に向けてきた。
「えーっと、スズ先輩、何かありました?」
私が刺々しい本人に聞いたものの、無視である。
「それより、先生は部員をここに集めてなんなのー?」
「3月14日の正午に部室集合って言ってましたよね」
ヒメノ先輩はミニゲームでゲームオーバーしたようで、私の返事をかき消した。
そんな時である。部室の扉がガラリと開く。
「お待たせしました! 全員集まってますね?」
先生は大量の資料を抱えて登場した。
「何事?」
「勉強?」
一年生組は、紙=机での作業だと思い込み、あからさまに嫌な顔をする。
「え、だる」
ヒメノ先輩も、またミニゲームをしようと指を動かし始めそうになる。
「違いますよ~、部長からのプレゼントです!」
スズ先輩以外の五人全員が先生に食いつく。
「スズ先輩には止められましたが、私達の部長は不正アクセスに寛容なようなので、何度も私は部長のSNSに潜り込みました」
大量の紙を配り始める先生。
「対応の仕方が分からなかっただけよ、部長は」
「そこで! 部長は神絵師として崇められている人物と知りました! 私は部長の描いたイラストを印刷してきたのです」
「無断でダウンロードして見せて回るとかサイテー」
「スズさん、ちょっと黙っててください!」
先生とスズ先輩のやり取りをみる限り、不機嫌の原因はこれだと全員が悟った。
「今配った資料は、部長が一キャラクターのみを描いていたものをその人に。二名以上の場合は、黒板前のスクリーンに表示します。配った資料はプレゼントですので、更衣室で見てもいいですよ」
全員に資料が行き渡る。全員同じくらいの量で、誰が推し、というものはなさそうで、満遍なく愛していたことがわかる。
それからスクリーンが降り、全員集合絵から学年ペアイラスト、意外性ペアなど、様々な10年間にあったイラストが映し出された。
「こんなこともあったね~」
「初期メンバーはあたしとゆま先輩とヒメノ先輩だけでしたよね!」
「これ誰!? って思ったらあやな先輩でしたか!」
「ヒドイよハナコちゃん~」
笑い声が久々に部室に響く。まるで女子校のようだ。
映像が終わると、さて、と先生は続ける。
「そしてお知らせです! なんと部長は3月22日から10日間、1日1枚私達の新作イラストをアップするようです!」
一人を除いて、わあ!、と歓声が上がる。
「ホワイトデーのプレゼントは貰えませんが、こんな素敵なプレゼントを今まで知らない間貰い続けていたのですから、皆もクヨクヨしないで過ごしていきましょうね!」
誰からも、はい、の言葉は出てきません。
しかし、もう皆の覚悟は決まっているように見えました。
もちろん、それは、私もです。
3月31日をもって、このソーシャルゲーム・学園討伐部はサービスを終了してしまうのです。
本日は3月14日のホワイトデー。
本来であれば、部長が部員達にバレンタインデーのお返しをする日であります。
「ログインはすれど、なんもないのよね~」
ヒメノ先輩は、机に寝そべりながら携帯電話をいじっている。たまにネイルの長い爪が画面にあたってカチカチなった。
「例年だったら、課金アイテムで特別なアイテムとか贈ってくれたけど……」
のっぺらぼうを伏せながらあやなは、はぁ、とため息をつく。
「今はもう課金通貨販売も停止してるからね」
スズ先輩も窓際の席で頬杖をついて外を眺めていた。
「去年は私ヘアピン貰ったんだ~」
「私はカチューシャ! でも貰っても、部長が着替えさせてくれないと付けれないんだよね~」
「それ!! 貰ったものくらい自分で身に付けさせてほしいよねー!」
「システム上、うちらにそういう機能ついてないから仕方がないでしょ」
一年生の和気あいあいトークに、ピシャリと外を眺めたまま割ってはいるスズ先輩。
一年生組が、なんか言ってやってよ、という視線を私に向けてきた。
「えーっと、スズ先輩、何かありました?」
私が刺々しい本人に聞いたものの、無視である。
「それより、先生は部員をここに集めてなんなのー?」
「3月14日の正午に部室集合って言ってましたよね」
ヒメノ先輩はミニゲームでゲームオーバーしたようで、私の返事をかき消した。
そんな時である。部室の扉がガラリと開く。
「お待たせしました! 全員集まってますね?」
先生は大量の資料を抱えて登場した。
「何事?」
「勉強?」
一年生組は、紙=机での作業だと思い込み、あからさまに嫌な顔をする。
「え、だる」
ヒメノ先輩も、またミニゲームをしようと指を動かし始めそうになる。
「違いますよ~、部長からのプレゼントです!」
スズ先輩以外の五人全員が先生に食いつく。
「スズ先輩には止められましたが、私達の部長は不正アクセスに寛容なようなので、何度も私は部長のSNSに潜り込みました」
大量の紙を配り始める先生。
「対応の仕方が分からなかっただけよ、部長は」
「そこで! 部長は神絵師として崇められている人物と知りました! 私は部長の描いたイラストを印刷してきたのです」
「無断でダウンロードして見せて回るとかサイテー」
「スズさん、ちょっと黙っててください!」
先生とスズ先輩のやり取りをみる限り、不機嫌の原因はこれだと全員が悟った。
「今配った資料は、部長が一キャラクターのみを描いていたものをその人に。二名以上の場合は、黒板前のスクリーンに表示します。配った資料はプレゼントですので、更衣室で見てもいいですよ」
全員に資料が行き渡る。全員同じくらいの量で、誰が推し、というものはなさそうで、満遍なく愛していたことがわかる。
それからスクリーンが降り、全員集合絵から学年ペアイラスト、意外性ペアなど、様々な10年間にあったイラストが映し出された。
「こんなこともあったね~」
「初期メンバーはあたしとゆま先輩とヒメノ先輩だけでしたよね!」
「これ誰!? って思ったらあやな先輩でしたか!」
「ヒドイよハナコちゃん~」
笑い声が久々に部室に響く。まるで女子校のようだ。
映像が終わると、さて、と先生は続ける。
「そしてお知らせです! なんと部長は3月22日から10日間、1日1枚私達の新作イラストをアップするようです!」
一人を除いて、わあ!、と歓声が上がる。
「ホワイトデーのプレゼントは貰えませんが、こんな素敵なプレゼントを今まで知らない間貰い続けていたのですから、皆もクヨクヨしないで過ごしていきましょうね!」
誰からも、はい、の言葉は出てきません。
しかし、もう皆の覚悟は決まっているように見えました。
もちろん、それは、私もです。
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