白い人形

幸輝

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人形供養のお寺

7話

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 キクは、持っていたガラスケースを足元に置き、僕の両手を自身の両手で包み込む。
 年下といっても女子のため、僕は顔が暑くなったを。
 すると、キクは何やら僕の耳にはっきりと聞き取れないほどブツブツと何かを唱え始めた。
 言い終わる瞬間に、大きく風が本堂から寺の門に向かって吹き抜けていった。
 この謎の風を感じたのは二度目である。
 あの時は不気味さを感じたが、今回はキクに手を包み込まれていたからか、その気持ちはなかった。

「これで大丈夫!」

 キクのその言葉で、僕は我に返った。
 キクは僕から手を離し、変わりにガラスケースを抱えて持った。

「どうぞー」
「えっ、これだけで本当に大丈夫なの? 僕、お母さんに人形どころかぬいぐるみだって買ってもらえ……」

 僕が言葉を言い切る前に
「いいの!」
と、キクは怒鳴りつける。

「キクのおまじないは特別なの! 絶対なの!」

 キクの赤い目は、白い前髪を通して妖しく光る。
 あまりの剣幕に僕は怯んだ。

「ご、ごめん、怒った?」
「怒ってない、どうぞ!」

 半ば押し付けるように、キクは僕にガラスケースを渡す。
 おどおどはしたものの、貰った僕は嬉しくなる。
 愛おしそうに、中の人形を見つめる。

「ありがとう、大切にす……」

 お礼を言おうと、もう一度キクに目をやろうとするも、そこにはキクの姿はない。

「キクー? キクちゃーん?」

 僕は叫んだが返答もない。
 ただ風が木の葉を揺らす音だけが聞こえるだけであった。
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