白い人形

幸輝

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事件

10話

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 雨がしとしとと降る日曜日。
 人形をキクから貰ったが、僕は休みの日、変わらず寺へと通っていた。
 キクに会ってお礼を言おうと考えていたが、人形を貰ってからまだ再開を果たせていない。
 今日もキクは来ていないかと確認をして、ついでに何やら本堂の方を気にして、ちらちらと中を覗き込む僕である。
 先日の日本人形のように、もしかしたら中にはまだお宝が眠っているかもしれない、と思っていたのだ。
 一度入った時には、体の一部が欠けている不気味なものが多かったが、よくは見ていなかったので、再度勇気を持って本堂に続く階段に足をかける。
 湿度が高いためか、踏みしめる階段が湿っていて重くギィギィ鳴った。

「何してるの?」

 あの可愛らしい声。キクの声だ。
 僕は声の方向、後ろを振り返った。

「うぇええ!?」

 驚いておかしな叫び声を出す僕。
 声の主は、やはりキクだった。
 しかし、驚いたのはそこではない。

「何してるの?」
「何してるの?、はこっちのセリフだよ!」

 僕はキクのセリフに間髪いれずに突っ込みをいれた。
 キクはずぶ濡れだったのだ。
 傘をさしていないから雨に濡れて、ではなく、お風呂からそのまま出てきたようなびちゃびちゃな髪の毛。
 真っ白だった着物も汚くなっている。
 大量の水を含んでおり、とても重苦しい印象を与えていた。
 腰まである白い髪の毛と、地面すれすれの着物の裾、白い肌の顎や指先に至るところから水滴がボタボタと滴っている。
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