パーティーをクビになったおっさん戦士は、地球を追放された最強AIと旅をする。

王加王非

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03 冒険者ギルド/職業紹介所

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「た、助けてくれてありがとうございます……」

 女の子は今だ恐怖が冷めやらぬ震えた声でお礼を言ってきた。
 金髪のショートカットが震えに合わせて小刻みに揺れている。

「よしよし、怖かったな。もう大丈夫だ」
【恐怖の内訳は盗賊に誘拐されたことが78%、残りの22%はあなたの外見に対してです】
「余計なことを言うな」

 確かに目つきが悪いとか言われたことはあるが。

「あ、あの。わたし、隣町から誘拐されてきたんです。連れて帰ってもらえたら、色々とお礼も出来ると思います」
【彼女の身なりや馬車の装飾からプロファイリングするに、彼女の父親はその町でも有数の富豪のようです。期待して良いでしょう】
「その人間の素性まで分かるのか?」
【彼女の実家の財政状況から推測される謝礼金はこの星の通貨で500ゴールドですが、強気に交渉することで最大120%の追加報酬が請求できます。その場合、『言い値を払わないと彼女を返さない』といった主旨の発言が効果的です】
「やめろ」

 余計な助言をしてくる機械を小声で黙らせる。人をゆすり屋にする気か。
 そりゃ一銭の礼も期待していなかったと言えば嘘になるが、そこまでして金は欲しくない。

「俺たち、いや俺も隣町に行く途中だったんだ。良ければ家に送っていくよ」
「は、はい! ありがとうございます!」

 恐怖心を与えないようニッコリと優しい笑顔で言うと、彼女は深々と頭を下げた。
 よし、警戒心はほぐれたようだな。

【先ほどの作り笑顔で彼女のあなたへの恐怖心が3.7%上昇しました】

 失敗だったらしい。
 そんなに怖い顔してるか? 俺。



 彼女を家に送り届けると、父親と思われる男から大げさな歓迎を受けた。

「本っ当~~~にありがとうございましたッ! ユニがいなければ我々は生きていけません!」

 ユニというのが誘拐少女の名前らしい。
 相当な溺愛ぶりである。
 彼女の実家は、スリサズの情報通り町でも有数の富豪のようで、町の入口からでも立派なお屋敷が目に入った。

「是非ともお礼をさせてください。おい、戦士様に例の物を」

 男が命令すると、執事が金貨の詰まった袋を俺の前に置いた。
 中身はきっちり500ゴールド。これもスリサズの情報と同じだ。
 もちろん上乗せの脅迫なんてしなかったが。

「あなたはむしょ……仕事を探しに来られたんですよね? 私はこの町のギルドに顔が利きます。盗賊を退治したことも含めて、推薦状を書かせていただきましょう」
「それはありがたい。この町でも仕事にありつけるか不安だったので助かります」
「ハッハッハ。あなたほどの腕前があれば、いくらでも仕事はありますよ」
【今、彼は無職と言おうとしましたが】
「こっちが聞かなかったふりしてるんだからいいんだよ」

 余計なことを言うリンゴを懐の奥に押し込む。

 ほどなくして、執事が丁重に封をされた推薦状を持ってきた。
 家紋の押された蝋の封印が、中身の重要さを強調している。

【この推薦状の効力は確かなようです。少なくとも、これがあれば年齢制限で弾かれるようなことはなくなるでしょう。これも私の計算通りです】
「それは嘘だろ」
【あなたは疑り深い人間だとSNSに書いておきます。おや、前回の記事がバズってました】



 俺は少女の実家を後にし、さっそくギルドでその推薦状を見せてみた。

「あなたがこの推薦状を? う~ん、確かに本物っぽいけど……」

 受付嬢は怪訝な顔で俺と推薦状を交互に見比べる。
 もっと見た瞬間に飛びあがって特別室に招待される、みたいな展開を期待していたのだが、世の中そんなに単純ではないらしい。
 むしろ偽造書類ではないかと疑われているようだ。

【見すぼらしい無職の中年が豪華な装丁の推薦状を持ってきたことで、彼女の社会的認識がミスマッチを起こしているようですね。先に謝礼金を使って身なりを整えるべきでした】
「解説しなくていい」

 言っている意味は分からなかったが馬鹿にされてることだけは分かった。

「まあここに書いてあることが事実なら、そこそこ難しい依頼もこなせるでしょ。ちょうどいい仕事が入ってるから貼り紙を見て」

 言いながら彼女は俺の背後に吊り下げられている、コルクボードの掲示板を指さした。
 そこには、指名手配のポスターや新聞記事の切り抜きが無造作に貼り付けられている。

「なになに? 『街道を脅かしていた野盗の一団が壊滅。通報者によると、目つきの悪い高齢の剣士と乱闘を起こしており、盗品の取り分をめぐる仲間割れが原因と思われ――』」
「そっちじゃないわよ。隣のポスター」

 ちょっと見過ごせない記事の内容だった気がしたのだが、読むのを中断して受付嬢に言われた方を見る。
 大きめのポスターには巨大なドラゴンの絵と、その下の余白に賞金2000ゴールドの記載があった。

「賞金首の貼り紙か」
「近くの山に突然現れて登山者が襲われてるのよ。都市への交易路にもなってるからこのまま住み着かれると困るわ」
「なになに……霧の中から突然現れることから通称『ミスティック・ド神秘竜ラゴン』と呼ばれている、か。仰々しい名前だな」
【データベースに追加しました。『ミステイク・ド失敗竜ラゴン』】
「ミスティックだよ」
【ミステイク】
「ミスティックだって」
【言語認識機能に障害があるようです。リンゴの電力低下が原因と思われます】

 小声で言い合いを続ける俺たちに、受付嬢が不機嫌な様子で声をかけてきた。

「なにブツブツ言ってるの? 受けるの? 受けないの?」
【戦力差を考慮すると推奨はできません】
「ああ受けるよ、受ける」

 急かされた俺はスリサズを無視して、二つ返事で依頼を了承した。
 パーティーにいた頃はドラゴンを倒したこともある。
 単独では確実に倒せる保証はないが、ちゃんと準備していけば無謀な挑戦でもないはずだ。
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