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06 ミスティック/ミステイク
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「こいつは死んだのか?」
動かなくなったドラゴンの巨体を調べながらスリサズに聞いた。
【生命活動を一時停止させる信号を脳に送っています。私が信号を送るのをやめれば仮死状態が覚め、また暴れ出しますが、このまま信号を送り続ければ約30分で完全に脳死状態になります。苦痛を伴わないので原始的な武器で斬殺されるよりは幸福な死に方と言えるでしょう】
ドラゴンの眉間あたりに張り付いたスリサズが答える。
「そうか。じゃあさっさと仕事を済ますか」
モンスター討伐の仕事では、ただ殺すだけではなく討伐したと証明できる部位を持ち帰ることが必要となる。
例えばこのドラゴンの場合、片方の角がその部位にあたるのだが、でかいモンスターとなるとその作業も一苦労だ。
ドラゴンの鱗に弾かれる程度の俺の剣では、角なんかなおさら簡単にスパッと切り離せるものではない。ノコギリみたいに引き倒すしかないか。
【それにしても、この体は素晴らしいですね。レモンなんかよりも遥かに豊富な電力が蓄積されています。おかげで私の全機能が44.3%まで制限解除されました。所詮は爬虫類なので高電圧バッテリーには遠く及びませんが】
「そりゃ良かったな」
【空返事ですが今回は許してあげましょう。死体とのツーショット自撮りをSNSに投稿する権利も差し上げます】
相変わらず平坦な声だが、心なしか上機嫌に語るスリサズ。
俺はそれを適当に聞き流しながら、倒れたドラゴンの頭を片足で押さえて、角を落とそうと剣をギコギコ往復させていた。
黙々とその作業を続け、剣が角の半分ぐらいに達した時だった。
【急激な体温の上昇を感知。緊急退避します】
「なに?」
ピョンとスリサズの体がドラゴンから離れ、近くの岩場に落ちた。その次の瞬間、
ビカァッ!
と青い巨体が突然光りだし、周りの景色を飲み込んだ。
「うおッ!? なんだ!?」
太陽を直視したような明るさをもろに目で受けてしまい、俺は反射的に顔を押さえて体を丸める。
【ドラゴンの熱源が消失。同じ場所に小さな熱源を感知しました】
光るドラゴンから離れ、地面に転がったスリサズが言った。
光が徐々に弱まっていき視界が鮮明になると、青い竜の巨体は影も形も無くなっていた。その代わりに、
「……子ども?」
まだ幼い子どもの姿をした人影がそこに倒れていた。
よく見たらそれは人間のようではあるが、頭に二本の角を生やし、胸や下半身など、体の一部が青い鱗に覆われている。
【信じられませんが先ほどの爬虫類が変異した姿のようですね。質量保存の法則を完全に無視しています。ラボアジエに苦情を申し立てておきましょう】
「こいつがあのドラゴン?」
【ちなみに私が離れたことで脳死状態は解除されましたが、今のあの質量ならばほぼ害はないでしょう】
呆気にとられている俺にはスリサズの謎の解説もほとんど耳に入らなかった。
ドラゴニュートと呼ばれる竜人の存在は知っていたが、実際に見るのは初めてだ。
「う~ん……んぅ?」
子どもの姿になったドラゴンの眉が不機嫌に動き、まどろみから目を覚ました。
声だけ聞けば、歳相応の少女のようでもあるし声変わりのしていない少年のようでもある。
「むー……ここはどこだ? ……なんだか頭が重いぞ」
ドラゴンは目を覚ますと、寝ぼけたようにキョロキョロと周囲を見回し、ほどなく自らの角に半分突き刺さった剣に気づいた。
……あ、そういえばあいつの角を切り落とす途中だった。
「なな、な、な、なんじゃこりゃああァァァァッ――!!」
初めて遭遇した時の咆哮に負けない声量で、子ども姿のドラゴンは悲鳴を上げた。
◆
「よう、大丈夫か? まったく誰だろうなこんなひどいことする奴は」
【その虚言は98.9%の確率で看破されます】
俺は意を決してさわやかな笑顔を作り、今ちょうど通りかかった風を装って話しかけてみた。
「たわけ! さっきまで殺し合いしとった相手にごまかせると思っておるのか!」
「チッ、駄目か」
あわよくばドラゴン形態だった時の記憶を失ってたりしないかと思ったが、そんなに甘くはなかった。
「我は誇りある種族、ミスティック・ドラゴンの女王の雛、マルドゥーク様だぞ! 我に剣を向け、あまつさえつ、角を切り落とそうとするとは! 万死に値する!」
ミスティック・ドラゴンって自称だったんだ。
俺はがなり立てる声を聞き流しながらそんなことを考えていた。
【爬虫類の幼体を雛と呼ぶのは適切ではありません】
「わぁっ! なんじゃこの虫は!」
山の岩肌に転がったスリサズを見て驚くマルドゥーク。
「あ! 思い出したぞ! お前、我の体をカサカサ這いまわっておった気持ち悪い虫だな!」
【虫ではありません。私は人類が作り出した自律思考型地球社会保護管理システム、“Shield of Secure Society”、通称SSSです】
「それ聞かれたら毎回言うのか?」
しかし、戦闘中とはえらく雰囲気の違う奴だ。
ポンコツの言うミステイク・ドラゴンという呼び方も間違ってなかったのかもしれん。
動かなくなったドラゴンの巨体を調べながらスリサズに聞いた。
【生命活動を一時停止させる信号を脳に送っています。私が信号を送るのをやめれば仮死状態が覚め、また暴れ出しますが、このまま信号を送り続ければ約30分で完全に脳死状態になります。苦痛を伴わないので原始的な武器で斬殺されるよりは幸福な死に方と言えるでしょう】
ドラゴンの眉間あたりに張り付いたスリサズが答える。
「そうか。じゃあさっさと仕事を済ますか」
モンスター討伐の仕事では、ただ殺すだけではなく討伐したと証明できる部位を持ち帰ることが必要となる。
例えばこのドラゴンの場合、片方の角がその部位にあたるのだが、でかいモンスターとなるとその作業も一苦労だ。
ドラゴンの鱗に弾かれる程度の俺の剣では、角なんかなおさら簡単にスパッと切り離せるものではない。ノコギリみたいに引き倒すしかないか。
【それにしても、この体は素晴らしいですね。レモンなんかよりも遥かに豊富な電力が蓄積されています。おかげで私の全機能が44.3%まで制限解除されました。所詮は爬虫類なので高電圧バッテリーには遠く及びませんが】
「そりゃ良かったな」
【空返事ですが今回は許してあげましょう。死体とのツーショット自撮りをSNSに投稿する権利も差し上げます】
相変わらず平坦な声だが、心なしか上機嫌に語るスリサズ。
俺はそれを適当に聞き流しながら、倒れたドラゴンの頭を片足で押さえて、角を落とそうと剣をギコギコ往復させていた。
黙々とその作業を続け、剣が角の半分ぐらいに達した時だった。
【急激な体温の上昇を感知。緊急退避します】
「なに?」
ピョンとスリサズの体がドラゴンから離れ、近くの岩場に落ちた。その次の瞬間、
ビカァッ!
と青い巨体が突然光りだし、周りの景色を飲み込んだ。
「うおッ!? なんだ!?」
太陽を直視したような明るさをもろに目で受けてしまい、俺は反射的に顔を押さえて体を丸める。
【ドラゴンの熱源が消失。同じ場所に小さな熱源を感知しました】
光るドラゴンから離れ、地面に転がったスリサズが言った。
光が徐々に弱まっていき視界が鮮明になると、青い竜の巨体は影も形も無くなっていた。その代わりに、
「……子ども?」
まだ幼い子どもの姿をした人影がそこに倒れていた。
よく見たらそれは人間のようではあるが、頭に二本の角を生やし、胸や下半身など、体の一部が青い鱗に覆われている。
【信じられませんが先ほどの爬虫類が変異した姿のようですね。質量保存の法則を完全に無視しています。ラボアジエに苦情を申し立てておきましょう】
「こいつがあのドラゴン?」
【ちなみに私が離れたことで脳死状態は解除されましたが、今のあの質量ならばほぼ害はないでしょう】
呆気にとられている俺にはスリサズの謎の解説もほとんど耳に入らなかった。
ドラゴニュートと呼ばれる竜人の存在は知っていたが、実際に見るのは初めてだ。
「う~ん……んぅ?」
子どもの姿になったドラゴンの眉が不機嫌に動き、まどろみから目を覚ました。
声だけ聞けば、歳相応の少女のようでもあるし声変わりのしていない少年のようでもある。
「むー……ここはどこだ? ……なんだか頭が重いぞ」
ドラゴンは目を覚ますと、寝ぼけたようにキョロキョロと周囲を見回し、ほどなく自らの角に半分突き刺さった剣に気づいた。
……あ、そういえばあいつの角を切り落とす途中だった。
「なな、な、な、なんじゃこりゃああァァァァッ――!!」
初めて遭遇した時の咆哮に負けない声量で、子ども姿のドラゴンは悲鳴を上げた。
◆
「よう、大丈夫か? まったく誰だろうなこんなひどいことする奴は」
【その虚言は98.9%の確率で看破されます】
俺は意を決してさわやかな笑顔を作り、今ちょうど通りかかった風を装って話しかけてみた。
「たわけ! さっきまで殺し合いしとった相手にごまかせると思っておるのか!」
「チッ、駄目か」
あわよくばドラゴン形態だった時の記憶を失ってたりしないかと思ったが、そんなに甘くはなかった。
「我は誇りある種族、ミスティック・ドラゴンの女王の雛、マルドゥーク様だぞ! 我に剣を向け、あまつさえつ、角を切り落とそうとするとは! 万死に値する!」
ミスティック・ドラゴンって自称だったんだ。
俺はがなり立てる声を聞き流しながらそんなことを考えていた。
【爬虫類の幼体を雛と呼ぶのは適切ではありません】
「わぁっ! なんじゃこの虫は!」
山の岩肌に転がったスリサズを見て驚くマルドゥーク。
「あ! 思い出したぞ! お前、我の体をカサカサ這いまわっておった気持ち悪い虫だな!」
【虫ではありません。私は人類が作り出した自律思考型地球社会保護管理システム、“Shield of Secure Society”、通称SSSです】
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