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「はぁッ!」
僕は気合と共に聖剣を振りかぶり、オークの胴を両断する。
「グゲェッ!」
オークは断末魔の悲鳴と共に倒れ、それを聞きつけた他のモンスターがこちらに振り向く。
そして、その手に持った魔法の杖を一斉にこちらに向けた。
ズダダダダダダダダダダダダッ!!!
「うわっ!」
僕は咄嗟に近くにあった建物の残骸に身を隠す。
杖から発射された弾丸が石造りの塀を削り、僕の脇をかすめた。
「ふ~……危ないところだった」
僕は石壁を背に、ため息をついて座り込む。
もう何度同じことを繰り返しただろう。
戦場にいるモンスターはゴブリンにオーク、リザードマン、スケルトン、ゴーレム。
魔王が居城を構えるすぐ近くだけあって種類は豊富だが、どれも大した敵じゃない。
その中には手強い上級種もいるにはいたが、経験を積んだ僕たちに倒せない相手ではなかった。
しかし、魔大陸のモンスターが携帯している、鉄の弾丸を発射する魔法の杖。
エレトリアは「そんな魔法は存在しない」と怒っていたが、とにかくあの武器の存在が本来弱かったモンスター一匹一匹を恐ろしい脅威に変えてしまっている。
彼方まで届く飛距離と目にも止まらぬスピード、そして殺傷力。
僕と同じく戦場に残った討伐軍の兵士たちは、みんなあの武器にやられてしまった。
「……みんな、上手く逃げられたのかな」
誰にともなく呟く。
魔力を失ったエレトリアとソフィーをカナベルに任せ、僕は時間稼ぎのためにここに残った。
カナベルは未熟だが、やる時はやる男だ。きっと安全な所まで二人を逃がしてくれる。
しかし、僕の方はそろそろまずいかもしれない。
石壁からわずかに身を乗り出し周りの様子を探ると、モンスターの集団は僕を一気に仕留めようとはせず、徐々に包囲を狭めるようにこちらに近づいて来ていた。
僕の位置が正確に掴めていないのか、それともなぶり殺しにするつもりなのか。いずれにしても、さっきまでのような一撃離脱の戦い方も難しくなってきた。
撤退した仲間が助けを呼んできてくれればいいが、それは期待はできない。
おそらく他の部隊も同じような状況だろう。援軍を送る余裕があるとは思えなかった。
――僕はここで死ぬのか。
その予感が現実味を帯びていくにつれ、どっと疲労が押し寄せてきた。
今まで助けてくれた聖剣の力をもってしても、この非情な現実はどうにかなりそうにない。
「ジョン……」
ふと、無意識にその名前が口をついて出た。
ジョンがここにいたら、どうしていただろう?
僕と一緒に残って戦っていただろうか。いや、僕にも逃げろって言って一人で残ったかもしれない。彼はそういう奴だ。
だからあの時、パーティーから外れてもらうしかなかった。
ニーズヘッグのブレスを受けた時、ジョンが僕たちを庇っていたことは知っていた。
魔大陸にジョンを連れて行き、僕や仲間が危機に陥ったとしたら、ジョンはきっとまた同じことをするに違いない。
僕のせいでジョンが死んでしまうことを考えると心底恐ろしくなった。
正直言って彼の身を案じたわけじゃない。
僕に仲間の死の責任を持つ覚悟がなかっただけだ。
そうなるぐらいなら僕が死んだ方がいい。
そう、今のこの状況のように。
「……ふぅ」
よそう。別れた仲間のことを考えるなんて精神的に参っている証拠だ。
僕はかぶりを振って、走馬灯のように巡る頭の中の葛藤を打ち消した。
諦めるのは早い。僕はまだ戦える。
そう気を取り直して顔を上げると、少し距離を置いた所にいたリザードマンと目が合った。
例の魔法の杖を構え、こちらに向けている。
考え事をしていたせいで回り込んでいることに気づかなかったのだ。
「しまった……!」
回避しようとしたが間に合わない。
リザードマンが勝利を確信した笑みを浮かべ、引き金を引く様子がゆっくりと、スローモーションになって見えた。
今度こそ終わった……そう思った時だった。
「どうした若いの」
初めて彼と出会った、あの時とまったく同じ声が聞こえると共に、リザードマンの体が頭から縦に両断された。
◆
「よう勇者様。まだまだ根性が足りないな。……っておい、聞いてるのか?」
俺は呆けたような顔で座り込んでいるリュートに声をかける。
リュートはそのままたっぷり十秒ぐらい固まった後、我に返ったように口を開いた。
「……………………え? ジョン? え?」
「どうした。幻覚でも見えてるのか」
「……幻覚にそう言われるとは思わなかったな」
俺は手を差し伸べ、リュートの体を引き起こす。
怪我はしていないが、戦闘の疲労で心身共に疲弊しているようだ。
「なんでここにいるんだ! あの宿屋で別れたはずだろ!?」
「俺にだって事情があるんだ。怒鳴るなよ、敵に見つかる……もう遅いか」
周囲を見ると、モンスターの群れが俺たちを取り囲んでいた。
俺とリュートは背中合わせに立ち、俺は剣とショットガン、リュートは聖剣をそれぞれ目の前の敵に向け構える。
「まずはこいつらを蹴散らすぞ。訓練はサボってなかっただろうな」
「分かった。いや、まだよく分かってないけど。とりあえずこのまま死ぬわけにはいかなくなったよ」
僕は気合と共に聖剣を振りかぶり、オークの胴を両断する。
「グゲェッ!」
オークは断末魔の悲鳴と共に倒れ、それを聞きつけた他のモンスターがこちらに振り向く。
そして、その手に持った魔法の杖を一斉にこちらに向けた。
ズダダダダダダダダダダダダッ!!!
「うわっ!」
僕は咄嗟に近くにあった建物の残骸に身を隠す。
杖から発射された弾丸が石造りの塀を削り、僕の脇をかすめた。
「ふ~……危ないところだった」
僕は石壁を背に、ため息をついて座り込む。
もう何度同じことを繰り返しただろう。
戦場にいるモンスターはゴブリンにオーク、リザードマン、スケルトン、ゴーレム。
魔王が居城を構えるすぐ近くだけあって種類は豊富だが、どれも大した敵じゃない。
その中には手強い上級種もいるにはいたが、経験を積んだ僕たちに倒せない相手ではなかった。
しかし、魔大陸のモンスターが携帯している、鉄の弾丸を発射する魔法の杖。
エレトリアは「そんな魔法は存在しない」と怒っていたが、とにかくあの武器の存在が本来弱かったモンスター一匹一匹を恐ろしい脅威に変えてしまっている。
彼方まで届く飛距離と目にも止まらぬスピード、そして殺傷力。
僕と同じく戦場に残った討伐軍の兵士たちは、みんなあの武器にやられてしまった。
「……みんな、上手く逃げられたのかな」
誰にともなく呟く。
魔力を失ったエレトリアとソフィーをカナベルに任せ、僕は時間稼ぎのためにここに残った。
カナベルは未熟だが、やる時はやる男だ。きっと安全な所まで二人を逃がしてくれる。
しかし、僕の方はそろそろまずいかもしれない。
石壁からわずかに身を乗り出し周りの様子を探ると、モンスターの集団は僕を一気に仕留めようとはせず、徐々に包囲を狭めるようにこちらに近づいて来ていた。
僕の位置が正確に掴めていないのか、それともなぶり殺しにするつもりなのか。いずれにしても、さっきまでのような一撃離脱の戦い方も難しくなってきた。
撤退した仲間が助けを呼んできてくれればいいが、それは期待はできない。
おそらく他の部隊も同じような状況だろう。援軍を送る余裕があるとは思えなかった。
――僕はここで死ぬのか。
その予感が現実味を帯びていくにつれ、どっと疲労が押し寄せてきた。
今まで助けてくれた聖剣の力をもってしても、この非情な現実はどうにかなりそうにない。
「ジョン……」
ふと、無意識にその名前が口をついて出た。
ジョンがここにいたら、どうしていただろう?
僕と一緒に残って戦っていただろうか。いや、僕にも逃げろって言って一人で残ったかもしれない。彼はそういう奴だ。
だからあの時、パーティーから外れてもらうしかなかった。
ニーズヘッグのブレスを受けた時、ジョンが僕たちを庇っていたことは知っていた。
魔大陸にジョンを連れて行き、僕や仲間が危機に陥ったとしたら、ジョンはきっとまた同じことをするに違いない。
僕のせいでジョンが死んでしまうことを考えると心底恐ろしくなった。
正直言って彼の身を案じたわけじゃない。
僕に仲間の死の責任を持つ覚悟がなかっただけだ。
そうなるぐらいなら僕が死んだ方がいい。
そう、今のこの状況のように。
「……ふぅ」
よそう。別れた仲間のことを考えるなんて精神的に参っている証拠だ。
僕はかぶりを振って、走馬灯のように巡る頭の中の葛藤を打ち消した。
諦めるのは早い。僕はまだ戦える。
そう気を取り直して顔を上げると、少し距離を置いた所にいたリザードマンと目が合った。
例の魔法の杖を構え、こちらに向けている。
考え事をしていたせいで回り込んでいることに気づかなかったのだ。
「しまった……!」
回避しようとしたが間に合わない。
リザードマンが勝利を確信した笑みを浮かべ、引き金を引く様子がゆっくりと、スローモーションになって見えた。
今度こそ終わった……そう思った時だった。
「どうした若いの」
初めて彼と出会った、あの時とまったく同じ声が聞こえると共に、リザードマンの体が頭から縦に両断された。
◆
「よう勇者様。まだまだ根性が足りないな。……っておい、聞いてるのか?」
俺は呆けたような顔で座り込んでいるリュートに声をかける。
リュートはそのままたっぷり十秒ぐらい固まった後、我に返ったように口を開いた。
「……………………え? ジョン? え?」
「どうした。幻覚でも見えてるのか」
「……幻覚にそう言われるとは思わなかったな」
俺は手を差し伸べ、リュートの体を引き起こす。
怪我はしていないが、戦闘の疲労で心身共に疲弊しているようだ。
「なんでここにいるんだ! あの宿屋で別れたはずだろ!?」
「俺にだって事情があるんだ。怒鳴るなよ、敵に見つかる……もう遅いか」
周囲を見ると、モンスターの群れが俺たちを取り囲んでいた。
俺とリュートは背中合わせに立ち、俺は剣とショットガン、リュートは聖剣をそれぞれ目の前の敵に向け構える。
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