パーティーをクビになったおっさん戦士は、地球を追放された最強AIと旅をする。

王加王非

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「攻撃が止んだな……各自状況を報告せよ!」

 モンスターの襲撃が収まり、フィノが馬上から生き残った兵士たちに呼びかける。

「爆発で何人か負傷者が出ましたが、被害は軽微です。大盾もやられていません」
「よし、皆よくやってくれた。まだ油断はできないが、各部隊は陣形を維持したまま小休止。治療班は負傷者の手当てにあたれ」
「ジョン、それにカナベルも大丈夫ですか?」

 ソフィーが心配そうに俺たちの傍に駆けつけ、治療を始める。
 ウォーロードとの戦闘をどこからか見ていたのだろう。

「あなたはいくら手当てしてもすぐ怪我をするんですから、昔から」
「今回は大丈夫だ。この新人が助けてくれたからな」

 俺はカナベルの肩をぽんと叩いた。

「いえ、僕は体当たりしただけですし……ジョンさんは凄いですね、やっぱり。ウォーロードを一人で倒してしまうなんて。相手は凄い剣も持ってたのに」
「体当たりのおかげでその凄い剣が奪えたんだ。これがなきゃ勝てる算段がつかなかった。なかなかいい筋してるぞ、若いの」

 謙遜するカナベルに、俺はそう称賛しながらウォーロードから奪った高周波ブレードを見せる。

「その剣……僕の大盾を易々と斬り裂いてましたけど、奴らはどこからそんな物を持ってきてるんでしょう? この世界のどんな鍛冶の名匠が打ったところで、そこまでの切れ味は出せないと思いますよ」
「さあな、分からないことを気にしても仕方ない」
「分からないのはあなたも同じです、ジョン」

 ソフィーが俺に向き直り、スリサズとマルにも険しい視線を向ける。

「別れたはずのあなたがなぜこの魔大陸に来ているのですか? それにその、機械とかトカゲとか……えーと、彼女……いや彼?……とにかくその方たちは一体?」
「こんな奴らに無理して礼儀正しくすることはないぞ」

 警戒しているわけではなく、どう言えば失礼にならないのか言葉を探していたようだ。
 しかしいくら考えてもこんな得体の知れない連中に対する正しい作法など分かるはずもない。
 ソフィーは昔からそういう生真面目すぎるところがあった。

「詮索しちゃ駄目よソフィー。爬虫類や無機物しか話し相手のいない孤独なお年寄りの気持ちを考えてあげなきゃ」
「お前は黙ってろ」

 エレトリアがからかうような目をして茶々を入れにきた。
 こっちは逆に不真面目が過ぎる。

「こんな奴らとはなんじゃ、無礼者め。それに小娘、我はトカゲではなく誇り高きミスティック・神秘竜ドラゴンであるぞ」
「ミステイク・ド失敗竜ラゴンの間違いじゃなーい?」
「なんだとーッ!」

 同じ発想をする奴がここにもいたようだ。

【なぜ私を見るのですか】





 リュートやフィノも交え、俺はこれまでの旅の経緯を簡単に説明した。
 これから戦おうとしている敵がスリサズと同じ世界の存在である以上、情報は共有しておいた方がいいと思ったからだ。

「つまりジョンはドラゴンの子を巣に返すためにここまで来たんだね」
「ほとんどは成り行きだけどな。そこのフィノに言われるがままについて行ったらこうなった」
「騙して連れて来たような言い方はひどいな。南へ行くには他に手段はなかったはずだよ」

 フィノは肩をすくめてそんな風にうそぶく。

「でも、これは運命かもしれない。僕が聖剣を抜いたせいで魔王を倒すためにここに来ることになったように、スリサズを持つジョンもあのアダムを倒すために導かれてきたのかも。実際、スリサズがいなかったら敵の武器の正体も分からず全滅させられていただろうからね」
「フン、その手の話に頼り出したら早死にするぞ」

 俺は迷信深いことを言い出すリュートをたしなめる。
 ただの青年が勇者という運命を背負わされたとあっては仕方のないことかもしれないが、戦場においてそれは気休めや現実逃避にしかならない。

「ていうかさ。この子ドラゴンなんでしょ? でっかくなってモンスターを一掃したりできないの?」

 マルを膝に座らせて抱いているエレトリアが口を挟む。

「気に入ったのか、それ?」
「うーん、あんまり。鱗がギザギザで痛いし」
「それなら離さんか無礼者。我をぬいぐるみ扱いしおって」
「ミスティック・ドラゴンはドラゴンの中でも特に強力な種族だと聞いたことがありますが……これでは見る影もありませんね」

 ソフィーも言いながらマルの頭を撫でる。

「ええい、やめろと言うのに」
「そういえばお前、少しずつ力が回復してきてるって言ってたよな。そろそろ元の姿に戻れたりしないのか?」

 俺は二人に弄ばれているマルに駄目元で聞いてみた。
 元のドラゴン形態になったマルの強さは実際に戦った俺がよく知っている。
 地球の兵器で武装したモンスターを全滅させられるほどではないだろうが、今よりは確実に戦力になるはずだ。
 
「たわけ。戻れたらさっさと戻っておるわ。お前らが我の電気を盗んだくせに何を言うか」
「ま、そうだろうな」

 元から期待はしていなかったが、駄目元で聞くことはやはり駄目だな。

「それに何を期待しておるのか知らんが、我には人間と魔王の争いなんぞ知ったことではない。竜の姿に戻れたらこんな危険極まりない所、空を飛んでさっさとおさらばしてやるわ! ――そう、ちょうどあんな風にな」
「ん?」

 マルが指さした方向を見ると、遠くの空に黒い影が見えた。
 鳥でも飛んでいるのだろうか。

「妙だな。鳥なんかこの魔大陸に来て一度も見たことがないぞ。それにあの鳥、こっちに近づいてきているような……」

 フィノが不思議そうに首を傾げている。
 確かに俺の目から見ても、空の黒い影はこちらに向かって徐々に大きくなっているように見えた。

 ババババババ――――――――。
 それに合わせて、虫の羽音にも似たはばたくような音が近づいてきている。

「な、なんだあれは!?」

 その飛翔体がはっきりと見える距離まで近づいたところで、待機していた兵士の一人が驚きの声を上げた。

 ババババババババババババッ―――――――!!
 羽音は耳を塞ぎたくなるほどに大きくなり、周囲に風を巻き起こすら。
 そして、小さな点だった黒い影は人間よりも遥かに巨大な姿を俺たちの頭上に現した。
 それはどう言い表せばいいのか、鉄で出来た船の頭に羽が生えたような物体だった。
 頭の羽が高速で回転し、金属の巨体を宙に浮かべている。

 ヒューンッ――――。
 鉄の船から何かが落下してくる。

 ――――――――ドオオォォォォンッ!!

「うわあぁッ!!」

 落下地点で爆発が起き、そこにいた兵士たちを吹き飛ばした。

「爆弾だ! あの船の真下にいる部隊はすぐに離れろ!」

 慌ててフィノが全軍に指示を飛ばす。

「……スリサズ、どうせお前は知ってるんだろ。ありゃあ何なんだ?」
【あれは戦闘ヘリです。詳しい説明は省きますが今までの銃火器とはレベルが違います】

『――勇者だと? 魔法だと? ファンタジーかぶれの異星人め。下らぬロールプレイもいい加減にするんだな!』

 雑音混じりのアダムの怒声が戦場に響き渡る。
 戦闘ヘリと呼ばれた鉄の箱の窓ガラス越しに、奴の姿が見えた。

 おそらく、ヘルハウンドやウォーロードをけしかけたのは部隊の陣形を崩すためではない。
 あれを用意するための時間稼ぎだったのだ。

『原始人共! 文明の差を思い知るがいい!』
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