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58.甘い夜の翌朝に
のろのろと目を開けた時、隣に迅の姿はすでになかった。
カーテンの隙間から明るい日差しが見えて、私は瞬きを繰り返した。ゆっくりと体を起こしてはっとする。裸だった。迅に愛された証が所々に残っていた。
昨夜迅に初めて抱かれ、その後結局一度では終わらず、彼の甘い誘惑に負けて、二度も彼と体を重ね、彼を受け入れた。余裕の表情を見せる迅の下で、さすがに力尽きた私は、いつの間にかそのまま眠ってしまったようだ。
迅とのことを思い出すと、恥ずかしさよりも幸せな気持ちの方が勝って胸がいっぱいになる。肌を許した男性は迅が初めてだったが、その相手が彼で良かったと思うだけでなく、この先、彼しか知らなくてもいいとさえ思えた。それほど私は、迅にひたすら甘く溶かされた。
今の私の顔はきっと、相当緩んでいるに違いない。そんな顔を迅に見られずにすんで良かったと思いながら、昨夜脱いだはずの自分の服を探してきょろきょろと辺りを見回した。
「あった」
私のルームウェアと下着は、ベッドとは反対側にある収納ボックスの上にあった。きちんと畳まれているのは、迅のおかげだろう。彼に手間をかけてしまったことに苦笑し、また、感謝しながら、私はそれらを取りに行くためにベッドから降りた。
その時、ドアがそうっと開いて、迅が顔を出した。
素っ裸だった私は、慌ててベッドに戻り布団の中に潜り込もうとした。しかし、あっという間に迅に捕まってしまった。背後から抱き締められて、どきどきした。
「やっと起きた」
「う、うん、さっき。寝坊してごめんなさい」
「全然。夕べ、疲れたんだよね。ごめんね、たくさんしちゃって」
「う、うぅん、大丈夫……」
自分だけ裸でいるのは恥ずかしすぎる。早く服を着たいと思い、私は振り返らないまま迅に言う。
「あの、迅君、私、服を着たいんだけど……」
迅は私の肩に口づけながら囁く。
「朝食ができたよって呼びに来たんだけど、その前に抱きたくなってしまったな」
「な、何言ってるの」
「だってこんな姿を見せられて、我慢できるわけがないって」
迅は私の胸を手のひらで包み、首筋に口づけた。
「じ、迅君、あ、朝だから……」
「朝だから、何?」
迅は前に回り込んで私の顔をのぞき込んだ。慌てて胸を両腕で隠す私に、彼は囁き声で言う。
「抱きたい」
「え……っ」
「だめ?」
迅は私の鎖骨の上をつうっと指でなぞった。
さらには色気ある眼差しを向けられて、私はくらりとめまいを起こしそうになった。
迅は私の腕を解きながら、はぁっとため息をついた。
「俺、美祈中毒みたいだ」
「何、それ」
夕べから迅は私を「美祈」と呼ぶようになっている。その甘い響きがくすぐったい。
「もう美祈無しじゃいられない」
迅は私の背に腕を回して、顔中にキスを落とし始めた。
「迅君、待って……っ」
止めようとする私の声には答えず、彼は私を抱き締めてベッドのある方へじりじりと移動していった。
足がとんっとベッドの端にぶつかり、その弾みで私はマットレスの上に倒れ込みそうになった。
迅はそのまま私をベッドの上に横たえようとする。
しかし私はその腕をつかんで止めた。彼のキスが止まったその隙に、私は言う。
「お願い。まずはシャワーをさせて」
「ってことは、いいってこと?」
念を押すように迅に訊ねられて、私の頬はあっという間に熱を持った。
迅は私の頬を撫で、くすりと笑う。
「そう言えば、あの後そのまま寝ちゃったんだよな。分かった。じゃあ、その後、軽く朝食取って、それからね」
私はどぎまぎしながら迅の顔を見上げた。
「ほ、ほんとにするの」
「嫌?」
訊き返されて、私はもじもじと答える。
「だって、そうしたら、帰るのが遅くなるから……」
「何か用事でもできた?少なくとも夕方までは、一緒にいてくれるんじゃないの?土曜から日曜までずっとっていうのは、そういう意味だと思ってたんだけど、違った?」
確かに、この週末の約束をした時、彼は「ずっと」と言っていた。しかし、だからと言って、長々と彼の部屋に入り浸っていいのだろうか。
「でも、迷惑でしょ?」
「全然!」
迅は驚いたように目を見開いた。
「好きなだけいてくれて構わない。なんなら、ウチから会社に行ってもいいよ。俺と同じで、明日までは出社だって言ってたよね」
互いに明日が年内最後の出社日だ。一日だけ会社に行ってから年末年始の休みというのは面倒でしかないが、会社のスケジュールでそのように決められているのだから仕方がない。
「それは、ちょっと……」
苦笑で返す私に迅はあっさりと笑う。
「あはは、冗談だよ。だけどいつかは、ずっと一緒に居られるようになったらいいな、と思ってるよ」
「え……」
どきりとして、私は息を飲んだ。彼の言葉に深い意味はなかったかもしれない。けれど私の耳には、まるでプロポーズでもあるかのように聞こえてしまった。
自分の言葉が私を動揺させたことに気づいた様子はない。迅は私の手を取って促す。
「先にシャワーしておいでよ。朝食は温め直せば大丈夫だから、ゆっくりどうぞ」
「あ、ありがとう」
迅は収納ボックスに近づいて行き、その一番上の引き出しを開けた。中から厚みのあるタオルを取り出し、小脇に私の服を抱えて戻ってきた。服をベッドの上に置き、タオルを広げて私の体にかける。
「そうそう、美祈のカバンはそこに置いておいたよ」
「何から何までありがとう」
バスタオルにくるまって、私は彼に礼を言った。
「どういたしまして。それから、フェイスタオルは洗面所に用意してあるから、それ、使って」
私が頷いたのを見ると、迅は寝室から出て行った。
一人になった私は、バスタオルを外してルームウェアを身に着けた。カバンを手元に持ってきてファスナーを開けながら、シャワーを借りた後はどんな格好でいようかと考え込んだ。
迅はラフなルームウェア姿だった。それならば、私も彼に合わせてルームウェアでいた方がいいだろうかと思う。けれど結局、いかにも「その時のため」のように思われたくなくて、昨日着てきたワンピースとレギンスでいようと決めた。それらと一緒に新しい下着を取り出し、カバンの口を閉める。
ふと、どうせならもっと可愛い下着を買っておけば良かっただろうかと、後悔の念が浮かんだ。近いうちに何着か新調しようと思いながら、私は着替えを胸に抱えて立ち上がった。
カーテンの隙間から明るい日差しが見えて、私は瞬きを繰り返した。ゆっくりと体を起こしてはっとする。裸だった。迅に愛された証が所々に残っていた。
昨夜迅に初めて抱かれ、その後結局一度では終わらず、彼の甘い誘惑に負けて、二度も彼と体を重ね、彼を受け入れた。余裕の表情を見せる迅の下で、さすがに力尽きた私は、いつの間にかそのまま眠ってしまったようだ。
迅とのことを思い出すと、恥ずかしさよりも幸せな気持ちの方が勝って胸がいっぱいになる。肌を許した男性は迅が初めてだったが、その相手が彼で良かったと思うだけでなく、この先、彼しか知らなくてもいいとさえ思えた。それほど私は、迅にひたすら甘く溶かされた。
今の私の顔はきっと、相当緩んでいるに違いない。そんな顔を迅に見られずにすんで良かったと思いながら、昨夜脱いだはずの自分の服を探してきょろきょろと辺りを見回した。
「あった」
私のルームウェアと下着は、ベッドとは反対側にある収納ボックスの上にあった。きちんと畳まれているのは、迅のおかげだろう。彼に手間をかけてしまったことに苦笑し、また、感謝しながら、私はそれらを取りに行くためにベッドから降りた。
その時、ドアがそうっと開いて、迅が顔を出した。
素っ裸だった私は、慌ててベッドに戻り布団の中に潜り込もうとした。しかし、あっという間に迅に捕まってしまった。背後から抱き締められて、どきどきした。
「やっと起きた」
「う、うん、さっき。寝坊してごめんなさい」
「全然。夕べ、疲れたんだよね。ごめんね、たくさんしちゃって」
「う、うぅん、大丈夫……」
自分だけ裸でいるのは恥ずかしすぎる。早く服を着たいと思い、私は振り返らないまま迅に言う。
「あの、迅君、私、服を着たいんだけど……」
迅は私の肩に口づけながら囁く。
「朝食ができたよって呼びに来たんだけど、その前に抱きたくなってしまったな」
「な、何言ってるの」
「だってこんな姿を見せられて、我慢できるわけがないって」
迅は私の胸を手のひらで包み、首筋に口づけた。
「じ、迅君、あ、朝だから……」
「朝だから、何?」
迅は前に回り込んで私の顔をのぞき込んだ。慌てて胸を両腕で隠す私に、彼は囁き声で言う。
「抱きたい」
「え……っ」
「だめ?」
迅は私の鎖骨の上をつうっと指でなぞった。
さらには色気ある眼差しを向けられて、私はくらりとめまいを起こしそうになった。
迅は私の腕を解きながら、はぁっとため息をついた。
「俺、美祈中毒みたいだ」
「何、それ」
夕べから迅は私を「美祈」と呼ぶようになっている。その甘い響きがくすぐったい。
「もう美祈無しじゃいられない」
迅は私の背に腕を回して、顔中にキスを落とし始めた。
「迅君、待って……っ」
止めようとする私の声には答えず、彼は私を抱き締めてベッドのある方へじりじりと移動していった。
足がとんっとベッドの端にぶつかり、その弾みで私はマットレスの上に倒れ込みそうになった。
迅はそのまま私をベッドの上に横たえようとする。
しかし私はその腕をつかんで止めた。彼のキスが止まったその隙に、私は言う。
「お願い。まずはシャワーをさせて」
「ってことは、いいってこと?」
念を押すように迅に訊ねられて、私の頬はあっという間に熱を持った。
迅は私の頬を撫で、くすりと笑う。
「そう言えば、あの後そのまま寝ちゃったんだよな。分かった。じゃあ、その後、軽く朝食取って、それからね」
私はどぎまぎしながら迅の顔を見上げた。
「ほ、ほんとにするの」
「嫌?」
訊き返されて、私はもじもじと答える。
「だって、そうしたら、帰るのが遅くなるから……」
「何か用事でもできた?少なくとも夕方までは、一緒にいてくれるんじゃないの?土曜から日曜までずっとっていうのは、そういう意味だと思ってたんだけど、違った?」
確かに、この週末の約束をした時、彼は「ずっと」と言っていた。しかし、だからと言って、長々と彼の部屋に入り浸っていいのだろうか。
「でも、迷惑でしょ?」
「全然!」
迅は驚いたように目を見開いた。
「好きなだけいてくれて構わない。なんなら、ウチから会社に行ってもいいよ。俺と同じで、明日までは出社だって言ってたよね」
互いに明日が年内最後の出社日だ。一日だけ会社に行ってから年末年始の休みというのは面倒でしかないが、会社のスケジュールでそのように決められているのだから仕方がない。
「それは、ちょっと……」
苦笑で返す私に迅はあっさりと笑う。
「あはは、冗談だよ。だけどいつかは、ずっと一緒に居られるようになったらいいな、と思ってるよ」
「え……」
どきりとして、私は息を飲んだ。彼の言葉に深い意味はなかったかもしれない。けれど私の耳には、まるでプロポーズでもあるかのように聞こえてしまった。
自分の言葉が私を動揺させたことに気づいた様子はない。迅は私の手を取って促す。
「先にシャワーしておいでよ。朝食は温め直せば大丈夫だから、ゆっくりどうぞ」
「あ、ありがとう」
迅は収納ボックスに近づいて行き、その一番上の引き出しを開けた。中から厚みのあるタオルを取り出し、小脇に私の服を抱えて戻ってきた。服をベッドの上に置き、タオルを広げて私の体にかける。
「そうそう、美祈のカバンはそこに置いておいたよ」
「何から何までありがとう」
バスタオルにくるまって、私は彼に礼を言った。
「どういたしまして。それから、フェイスタオルは洗面所に用意してあるから、それ、使って」
私が頷いたのを見ると、迅は寝室から出て行った。
一人になった私は、バスタオルを外してルームウェアを身に着けた。カバンを手元に持ってきてファスナーを開けながら、シャワーを借りた後はどんな格好でいようかと考え込んだ。
迅はラフなルームウェア姿だった。それならば、私も彼に合わせてルームウェアでいた方がいいだろうかと思う。けれど結局、いかにも「その時のため」のように思われたくなくて、昨日着てきたワンピースとレギンスでいようと決めた。それらと一緒に新しい下着を取り出し、カバンの口を閉める。
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