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59.この先もきっと
カーテンを閉め切った寝室で、私は迅と体を重ねた。肌の上を優しく滑る彼の手に、指に、全身が悦びに震え、唇から溢れる声を止められない。
迅は吐息と共に私の名前を唇で刻みながら、幾度も腰を動かして、私の中を深く衝き上げた。
事が終わった後、まだ熱が残る息を吐きながら、私はなかなか整わない呼吸に胸を弾ませていた。
迅はそんな私の胸に頭を乗せてしばらくじっとしていたが、ふっと小さく息をついて、しみじみとした口調で言う。
「美祈の傍にいるのって、なんだか落ち着く」
「私もよ。迅君の傍って安心するの」
胸の上に感じる温かさと重みに、この上なく幸せな気分になった。それと共に、彼への愛おしさがこみ上げてくる。何となく迅の髪を指ですくっては梳き、を繰り返していたが、その手つきもおのずと優しくなる。
迅は私に髪を弄ばれるがまま大人しくしていたが、ゆっくりと頭を持ち上げた。
「年末年始、美祈は実家に帰るんだっけ?」
「二日くらいまでね。そのうち一日は、高校時代の友達と飲もうって話も出ていてね」
「友達って女?」
「そうよ。どうしてそんなこと聞くの?」
「だって」
迅はもぞもぞと体を動かして私の隣に移動した。
「美祈に悪い虫がつかないか心配なんだよ」
私はぷっと吹き出す。
「余計な心配よ。だいたい、私、迅君みたいにモテないんだから」
「まったく、美祈は自分を知らないなぁ」
迅は苦笑を浮かべている。
「気づいていなかったかもしれないけど、中学の時、君を狙ってる奴ら、結構いたんだからね」
「狙うって何よ、それ」
私はくすくすと笑った。
しかし迅は真顔で続ける。
「昔のことだけじゃないよ。あの見合い相手もそう、君の従妹の結婚式の二次会だってそうだ。俺の仲間内のほとんどが、美祈のことを『あの子いいな』って言ってたんだから」
「そんな大げさな」
「大げさじゃないって。だから心配なんだ」
「私が誰かに誘われて、ホイホイ着いて行くような女だと思ってるの?」
「そんなことは思っていないけど……」
私は迅の方に体ごと向き直り、心配そうに寄せられた彼の眉間のしわを人差し指で軽くつつく。
「あのね。私が好きな人は迅君なのよ。だから心配しないで。それにね、この先も、迅君以上に好きだと思える人は現れないと思っているの」
「この先も……?」
迅は私の言葉を繰り返し、真顔になる。
「今の言葉は本心?」
迅は私の表情をうかがいながら、念を押すように訊ねた。
もちろん、と私は首を縦に振る。
彼は私の頭をそっと抱いて自分の胸に引き寄せると、静かな声で問いかけた。
「俺が、美祈との結婚を考えている、って言ったらどうする?」
「え……」
思いがけない彼の言葉に息を飲んだ。
これから先も、確かに彼と一緒にいたいと思っている。それは揺らぐことのない気持ちだ。しかし、まだそこまで現実的には考えていなかった。とは言え、迅にも話した通り、彼以外の人をこの先好きになることはないと、自分でも不思議に思うほどの確信があった。
結婚に焦りはない。けれどこの人と固く結ばれ、また、この人を自分だけの相手として周りにも認めてもらいたいのなら、結婚は最良の形なのかもしれないと思う。
私が黙ってしまったのは、返答に困っているからだと解釈したのか、迅はごめんとひと言謝り、穏やかだが真剣な口調で続ける。
「急にそんなこと言われても困るよね。まだ付き合って半年も経っていないわけだし。ただ、美祈とのことを俺が真面目に考えているってことは、覚えていてほしい」
迅は私の頭から手を離し、おもむろに体を起こした。照れ隠しか、もしくはほのかに緊張が漂うこの空気を変えるためか、明るい声で言いながらベッドから降りた。
「腹、減ってきたね。昼飯にしようか。それとも外に食べに行く?」
迅を追って私もすぐにベッドから降りた。背後から彼に抱きつき、引き留める。
「迅君、待って」
「うん?」
迅は足を止めて、肩越しに私を見た。
「迅君は、これからもずっと私だけを見て、大切にしてくれるの?」
私の問いかけに、苦笑をにじませた顔を見せる。
「どうしてそんな当たり前のことを聞くの?」
迅は体の向きを変えて私を胸に抱き、ゆっくりとした口調で話し出す。
「俺が言ったこと、忘れたの?だったら、もう一度言っておかないとね。俺はもう、美祈なしではいられない。離したくないって思った人は君だけだし、俺も美祈と同じで、君以上に愛せる人はこの先絶対に現れないって断言できる。今の言葉だけでは信じられないのなら、これから先もずっといつまでも、美祈が信じてくれるまで行動で示していくよ」
「それなら……」
私は彼の胸にぺたりと頬をくっつける。
「私、いつでも頷けるから」
「えっ?」
頭の上で、迅の戸惑う声がした。
はっきりと言葉にしなければ通じないわよねと自分に苦笑し、私は顔を上げて改めて続ける。
「結婚のこと。心の準備、できてるから」
迅の目が見開かれた。彼は言葉を探すように、口を開けたり閉じたりを繰り返していたが、すうっと何度か呼吸をした後、おずおずと私の顔をのぞき込む。
「後悔したりは、しないよね」
「後悔させるようなこと、するつもりなの?」
「そんなことしない!するつもりもないよ!」
迅は宣言するように声高に言い、すぐさま真剣な面持ちとなって私を見つめた。
「結婚してくれますか?ずっと俺と一緒にいてくれる?」
急展開の話ではあるけれど、彼との未来に何の不安も感じない。私もまた彼の瞳を見つめ返して答える。
「はい。あなたの傍にいます。だから大事にしてね」
「もちろん、一生大事にするよ」
迅はキスをしながら、その腕で私を抱き締めた。
迅は吐息と共に私の名前を唇で刻みながら、幾度も腰を動かして、私の中を深く衝き上げた。
事が終わった後、まだ熱が残る息を吐きながら、私はなかなか整わない呼吸に胸を弾ませていた。
迅はそんな私の胸に頭を乗せてしばらくじっとしていたが、ふっと小さく息をついて、しみじみとした口調で言う。
「美祈の傍にいるのって、なんだか落ち着く」
「私もよ。迅君の傍って安心するの」
胸の上に感じる温かさと重みに、この上なく幸せな気分になった。それと共に、彼への愛おしさがこみ上げてくる。何となく迅の髪を指ですくっては梳き、を繰り返していたが、その手つきもおのずと優しくなる。
迅は私に髪を弄ばれるがまま大人しくしていたが、ゆっくりと頭を持ち上げた。
「年末年始、美祈は実家に帰るんだっけ?」
「二日くらいまでね。そのうち一日は、高校時代の友達と飲もうって話も出ていてね」
「友達って女?」
「そうよ。どうしてそんなこと聞くの?」
「だって」
迅はもぞもぞと体を動かして私の隣に移動した。
「美祈に悪い虫がつかないか心配なんだよ」
私はぷっと吹き出す。
「余計な心配よ。だいたい、私、迅君みたいにモテないんだから」
「まったく、美祈は自分を知らないなぁ」
迅は苦笑を浮かべている。
「気づいていなかったかもしれないけど、中学の時、君を狙ってる奴ら、結構いたんだからね」
「狙うって何よ、それ」
私はくすくすと笑った。
しかし迅は真顔で続ける。
「昔のことだけじゃないよ。あの見合い相手もそう、君の従妹の結婚式の二次会だってそうだ。俺の仲間内のほとんどが、美祈のことを『あの子いいな』って言ってたんだから」
「そんな大げさな」
「大げさじゃないって。だから心配なんだ」
「私が誰かに誘われて、ホイホイ着いて行くような女だと思ってるの?」
「そんなことは思っていないけど……」
私は迅の方に体ごと向き直り、心配そうに寄せられた彼の眉間のしわを人差し指で軽くつつく。
「あのね。私が好きな人は迅君なのよ。だから心配しないで。それにね、この先も、迅君以上に好きだと思える人は現れないと思っているの」
「この先も……?」
迅は私の言葉を繰り返し、真顔になる。
「今の言葉は本心?」
迅は私の表情をうかがいながら、念を押すように訊ねた。
もちろん、と私は首を縦に振る。
彼は私の頭をそっと抱いて自分の胸に引き寄せると、静かな声で問いかけた。
「俺が、美祈との結婚を考えている、って言ったらどうする?」
「え……」
思いがけない彼の言葉に息を飲んだ。
これから先も、確かに彼と一緒にいたいと思っている。それは揺らぐことのない気持ちだ。しかし、まだそこまで現実的には考えていなかった。とは言え、迅にも話した通り、彼以外の人をこの先好きになることはないと、自分でも不思議に思うほどの確信があった。
結婚に焦りはない。けれどこの人と固く結ばれ、また、この人を自分だけの相手として周りにも認めてもらいたいのなら、結婚は最良の形なのかもしれないと思う。
私が黙ってしまったのは、返答に困っているからだと解釈したのか、迅はごめんとひと言謝り、穏やかだが真剣な口調で続ける。
「急にそんなこと言われても困るよね。まだ付き合って半年も経っていないわけだし。ただ、美祈とのことを俺が真面目に考えているってことは、覚えていてほしい」
迅は私の頭から手を離し、おもむろに体を起こした。照れ隠しか、もしくはほのかに緊張が漂うこの空気を変えるためか、明るい声で言いながらベッドから降りた。
「腹、減ってきたね。昼飯にしようか。それとも外に食べに行く?」
迅を追って私もすぐにベッドから降りた。背後から彼に抱きつき、引き留める。
「迅君、待って」
「うん?」
迅は足を止めて、肩越しに私を見た。
「迅君は、これからもずっと私だけを見て、大切にしてくれるの?」
私の問いかけに、苦笑をにじませた顔を見せる。
「どうしてそんな当たり前のことを聞くの?」
迅は体の向きを変えて私を胸に抱き、ゆっくりとした口調で話し出す。
「俺が言ったこと、忘れたの?だったら、もう一度言っておかないとね。俺はもう、美祈なしではいられない。離したくないって思った人は君だけだし、俺も美祈と同じで、君以上に愛せる人はこの先絶対に現れないって断言できる。今の言葉だけでは信じられないのなら、これから先もずっといつまでも、美祈が信じてくれるまで行動で示していくよ」
「それなら……」
私は彼の胸にぺたりと頬をくっつける。
「私、いつでも頷けるから」
「えっ?」
頭の上で、迅の戸惑う声がした。
はっきりと言葉にしなければ通じないわよねと自分に苦笑し、私は顔を上げて改めて続ける。
「結婚のこと。心の準備、できてるから」
迅の目が見開かれた。彼は言葉を探すように、口を開けたり閉じたりを繰り返していたが、すうっと何度か呼吸をした後、おずおずと私の顔をのぞき込む。
「後悔したりは、しないよね」
「後悔させるようなこと、するつもりなの?」
「そんなことしない!するつもりもないよ!」
迅は宣言するように声高に言い、すぐさま真剣な面持ちとなって私を見つめた。
「結婚してくれますか?ずっと俺と一緒にいてくれる?」
急展開の話ではあるけれど、彼との未来に何の不安も感じない。私もまた彼の瞳を見つめ返して答える。
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