世界を救った勇者のパーティーに所属していたシーフです…

mitokami

文字の大きさ
3 / 15

003

しおりを挟む
 魔法使いが事前に注文していたのだろう。旅の後半、自信過剰と成った勇者が注文していたような上等な酒と、杯が2個、それに見合う豪華な皿に綺麗に並べられた御高い酒のつまみが僕の座る席へと運ばれて来た。
魔法使いは一緒に旅をしていた頃と変わる事無く…、酒と肴を運び…瓶から杯に酒を注いでいる配膳係の女性に軽く気安く声を掛けてスキンシップを図り…、酒瓶とトレーだけを持ち帰ろうとする女性の手を握ってチップを手渡し「追加注文する時も君が来てくれると嬉しいんだけど」とか言って…、僕に対しては絶対にしないであろう優しく嫌味の無い微笑を浮かべている……。相変わらず魔法使いさんは、女性との距離の詰め方が上手くていらっしゃる御様子だ。

 それが、ちょっと悔しくて「魔法使いさんに合い席を許した訳では無いんですけどね」と僕が言うと、魔法使いは「君の私物を回収して来てあげたんだから大目に見ろよ」と言って、僕が座る椅子の横に持っていた荷物を置き、上等な酒が入った杯も1つ僕に渡して来た。
取り敢えず。荷物を確認すると、それは確かに王城に入る時に取り上げられた僕の私物と馬車の中に残して来てしまった私財だった。

 魔法使いは「運び賃として、この酒と肴の料金は君の私財サイフから勝手に支払わせて貰ったので悪しからず」と言って僕の向かい側の席に座り。酒を一気に煽って飲み干し「もう一杯、奢ってくれても良いのだよ?」と空に成った杯を見せ言って来る。
僕は溜息を吐き、半分諦めていた大切な物まで手元に戻って来た事もあり「奢りはするけど、ランクは下げさせて貰います!」と宣言し、先に飲んでいた安い酒を飲み干して店員を呼んだ。

 僕が手を上げて店員を呼ぶと、先程の配膳係の女性がやって来て「オマエが注文すんのかよ」とでも言いた気な雰囲気で、注文とその料金、空いた杯を持って行く。
「相変わらず小金持ちだな…、釣銭が出るようにして釣りはいらねぇって言えば、配膳の御嬢さん達も笑顔でサービスしてくれるってのに……」
確かにそうだけど、ギルド直営の酒場で酒場の御嬢さん達と仲良く成っても、客室でサービスが受けれる訳ではない。
僕が「そう言うのは、サービス精神が過剰な店に行った時にするよ」と言うと魔法使いは「出来ると良いね」と言って笑った。
正直な御話。そう、思いはするのだが、出来たためしは一度も無い。若しかしたら僕に、その手のスキルの素質が存在していないのかもしれない。そう思わずにはいられないレベルで、女性を口説けたためしが無いのである。

 因みに先程から、魔法使いは旅先での僕の失敗を思い出してか?何某かが笑いのツボにはまってなのか?笑いを噛み殺し肩を震わせていた。僕が「素直に笑えば?」と言ったら、素直に笑い出したので、また、これが、少し腹立たしい。

 そんな感じで交流を交わしていると、自分と魔法使い用に注文した酒が同じ配膳係の手で運ばれて来た。その1杯を魔法使いの方へ押し出し僕は「で?荷物を届けに来たのは、何の口実ですか?」と質問する。
僕の知る魔法使いは独特の正義感を持った人物で、通常、女子供が相手なら「仕方が無いなぁ~」と言って率先的に行動し、男相手だと「面倒だな…」と言って放置。又は、基本的に、そこに女子供の危機が存在すれば、行動しない事も無い。と言う性質の持ち主。そんな魔法使いの事だから、僕に対して何の用事も無ければ、荷物を持って来てくれやしなかった事は、想像に易い事だったのだ。

「失礼だなぁ~…親切心で持って来てあげたのにぃ~……」
「では、本当に目的も無し・・・・・に、僕の荷物を持って来てくれたんですか?」
僕の強めな問い掛けに対し、一瞬、観念したみたいな様子を見せ、魔法使いは照れ笑いを浮かべて「…実は、凄く暇で……」と言った。

「暇?魔法使いさん、魔王討伐の褒賞で宮廷魔導士に成ったんですよね?今はまだ忙しい筈では?」
現在、王宮には魔王が討伐された御祝いで各国の要人が来ている。魔王討伐に参加した魔法使いで、王宮の魔法防御を司る宮廷魔導士が暇と言うのは信じ難い。

「魔法使いさんは、勇者のパーティーメンバーとして褒め称えれらていたんじゃないんですか?」
僕の言葉に今度は苦笑いを見せ、魔法使いは「あの俺様勇者が手柄を分ける訳が無いし、そんな勇者を夫に選んだ王女様の父親、国王様だぞ!」と言った。
「それくらい誰だって知ってますよ?」
僕には魔法使いの言葉の意味も意図も分からない。

 僕が首を傾げていると、僕が本当に理解していなさそうだと気付いたのであろう。魔法使いは「次世代の国王に勇者の血筋を混ぜる必要は無くとも、他国に向けての牽制で、我が国の王族に勇者の血筋を取り込んだ事をアピールしなければならない」と言う説明を始めた。

「次世代の国王に勇者の血筋を混ぜる必要は無くとも?」
僕の疑問に魔法使いは珍しく嫌味無く意地悪な笑みも無く「現役で戦える勇者が他国へ婿入りして貰っては困るけど、本人と、勇者の力を継いで生まれて来る訳でもない子孫を王様にしてやるつもりは無いって事、勇者は今後、飼殺される運命だ」と普通に答えてくれる。
「勇者と婚約した王女様が、気位の高い公爵家出の正室様の姫でも貴族位の妃の姫でも無く、貴族位持ちで無い家柄の下級妃の姫で、王位継承権100番台だってのは、っているか?」
「え?王様の子供って何人いるの?」
「…(そっちの方に引っ掛かるのか…)さぁ~…、でも、驚く事無いだろ?後宮ってのがあって、毎晩の日替わり定食の如く夜伽があっての結果…、まだ毎年、二桁増えたり減ったりしてるんじゃなかったっけ?王様の妃とその御子様」
「増えたり減ったり…」

 噂では、愛妾に成れば暗殺される等の事が日常茶飯事で…、女の覇権争いの末…、特に、貴族位持ちで無い家柄の下級妃が産んだ子供は…妃共々ほぼ死んで、運良く生き残れたとしても…、外交で人質として出して…出した先の王侯貴族に見初められるレベル限定…、気立て良さ気に振る舞える美姫や…男からも女からも美味しそうに見えて欲しがられる王子に育たなきゃ…、暗殺対象から外れる事が無いらしい……。
闇が深過ぎて関わり合いに成りたくも無い「酷い話だね」と僕は溜息交じりに言った。

「そう酷い話なんだよ…、あ、酷い話序に、勇者以外のパーティーメンバーは目立ったり、自ら他国から勧誘の受ける様な事をしたり、国外に出ようとしたら暗殺対象なんだって♪」
「マジですか」
「マジなんだよ…、って、そう言えば…、管理名目で問題が生じた盗賊シーフくんって…、王都に戻った初日、王様から内密に殺害命令出されてたそうだけど、無事で何より?」
「本当に酷い話だ!」

 僕と魔法使いは近況報告を続け、飲み掛けの酒を飲み干し、酒と肴を再度注文して受け取ってから会話を続ける。
そこで今更乍ら、僕は魔法使いがチップを払ってまで配膳係を指名した理由に気付いた。魔法使いは[こう言う会話の為に]注文と配膳の時しか店員が来ない様にしたかったのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

処理中です...