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003 嘘も方便。護るべきは…
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僕の妹[楓]に巣くう病魔の正体が判明してから、母さんは楓の存在を無視する様になった。楓の方も、今までと態度が変わり、母親に信頼を寄せる事は無くなった。
ある日、楓の洗濯物だけ、洗濯機の中に残され、生乾きで放置されている事に僕が気が付く事に成る。母さんにそれを言うと「忘れていた」と言ったが…、その次からは、洗濯機から楓の着ていた物を出し、洗わずに楓の机の上に畳んで置くのを見る事に成った……。それを僕が父さんに言っても信じて貰えなかった。楓も、何度か父さんに助けを求めていたみたいだけど、何時の間にか楓は諦めた様な表情をする様に成って、口数も減っていた。
更に、出される食事も、楓のだけ見た目は兎も角、味が酷い物に替えられている事に気付いたのは偶然であり必然だった。初めて、楓がお腹を鳴らしながら「食べたくない」と言って食卓に着かなかった日、僕は妹用に取り分けられた皿の料理をワザと取り違えて食べ、確証を持ち。「証拠が無いと信じられない。」と言った父さんに、証拠として[それ]と[楓の洗濯を拒否された衣類]を提出する。やっと少しは信じて貰えたみたいだけど…、父さんは母さんにそれを注意する感じの言葉を言っただけ…、母さんからの楓への扱いが酷くなっただけだった……。
僕は自分が[母さん]と呼んでいた[存在のあり方]が怖くなって[次は僕に同じ事をしてくるかもしれない]と不安に成って、楓を助ける事が出来なく成って行った。
そうこうする内に、食事療法だけで助かる筈だった楓の病状が悪化する。
学校で意識を失い。救急車で運ばれ、楓が入院する事に成る。その時に勇気を出して言った僕の証言と楓の痩せた体、楓の母親でもあった筈の女が付けた黒く変色する痣の御陰で、[親が虐待をしているのではないか?]と疑われる事に成ってやっと、父さんは僕の言う事を漸くちゃんと信じてくれ、自分の妻と仲違いする様になった。ただ、それだけの事だった。
行政も[虐待の疑い]と言う設定を崩さず。強く出てはくれず。定型文のような言葉を言うだけ…、楓の母親である事を放棄し、外面だけを取り繕った女と会って面談するだけで、何の役にも立たない事を僕は知る事に成った。
こうして楓は、巧妙化した母親であった者から受ける痕跡の残りにくい虐待の末、あの女の操り人形の様に成り、入退院を繰り返す様になったのだ。僕は幼少期に出会った硬い表情で愛想笑いをする子の事を思い出す。
今の僕の楓は、あの子と同じ様な事を願い。絶対に叶えては貰えない。救いの無い世界の住人なのかもしれない。
確か、あの子は結局、生きる為の許しを請い願った親とい言う存在に殺されたと言う話を看護師達が噂していた筈だ。もしかしたら、僕の楓も同じ道を辿るかもしれない。
今まで楓に何もしてあげられなかった僕は、必死で楓を護る為に計画を練る。
自分が病院に行く日では無い。一番、授業が長く、家出が発覚し難い日を決行の日に決め…、僕は、女が前に連絡帳に書いた[病院に行くので…]と言うメモを見ながら、女の字を必死に練習した……。そして完成度を上げる為に、鉛筆で塗って作ったカーボン紙擬きを使って、文字をなぞり書きして写し清書して、真新しい連絡帳2冊に偽造を施した。「そんな事をしたらもっと、嫌われてしまう」と怯える楓を「僕が楓を護るから!」と説得して、楓にも決行日の前日に学校に偽造した連絡帳を提出させる。提出した日の家に帰る前に僕が、それを回収して、翌日の作戦決行日…、学校に行かなくても、両親と言う存在に連絡が入らない状況を作り上げた……。
その日、僕と楓は学校に行く振りをして家を出る。退院してまた、前より酷い扱いを受ける事になった楓の手を取り、僕は楓を連れて途中で引き返し、駅へと向かう。電車を乗り継ぎ、父方の祖父母の家に行き「このままでは、妹が殺されてしまう」と言って、僕は必死に祖父母に助けを求めたのだ。
・・・それにしても僕は、この賭けに勝てて本当に良かったと心から思う。・・・
当初、父方の祖父母は、僕の持病は知っていても、楓の病気や楓が虐待されている事を知らず。最初、僕の訴えを祖父母は、何にも信じてはくれはしなかった。この時、崩れ落ちる様に座り込み絶望に染まる楓を見て、僕は生まれてこの方、あれ程までに必死になった事は無かったのではないだろうか?と、思う。
家でメモして持って来た[児童相談所の電話番号を手渡すだけじゃ駄目なのだ…]と気付いた僕は、電話を借り、自分で電話して、僕が先に児童相談所の担当者の人と話して、僕の話が本当であると証明して貰い。同じ手順で病院にも電話して、病院の先生にも僕の願いが届き、楓の病状を父方の祖父母に伝えて貰う事が叶い。2つの奇跡が起きて、父方の祖父母に信じて貰う事に成功したのだ。
そこに至るまでに、所謂、両親…、特に母親と呼びたくも無い女の方に連絡されていたら…、今、やっと見付けた未来への道は閉ざされていた事だろう……。僕は産まれて初めて、神様って言うヤツに感謝し、奇跡に対する御礼の言葉を口にした。
こうやって手に入れた楓と過ごした時間は…大きな病院で治療を受けなければ命を落とす…活動にも制限のある[僕のタイムリミット]、僕が入院するまで続いた……。
この先の未来。僕にとって一生忘れる事の出来ない。この自主的な連休は、僕の心の支えと成り、僕にとっての唯一無二の宝物と成った。
ある日、楓の洗濯物だけ、洗濯機の中に残され、生乾きで放置されている事に僕が気が付く事に成る。母さんにそれを言うと「忘れていた」と言ったが…、その次からは、洗濯機から楓の着ていた物を出し、洗わずに楓の机の上に畳んで置くのを見る事に成った……。それを僕が父さんに言っても信じて貰えなかった。楓も、何度か父さんに助けを求めていたみたいだけど、何時の間にか楓は諦めた様な表情をする様に成って、口数も減っていた。
更に、出される食事も、楓のだけ見た目は兎も角、味が酷い物に替えられている事に気付いたのは偶然であり必然だった。初めて、楓がお腹を鳴らしながら「食べたくない」と言って食卓に着かなかった日、僕は妹用に取り分けられた皿の料理をワザと取り違えて食べ、確証を持ち。「証拠が無いと信じられない。」と言った父さんに、証拠として[それ]と[楓の洗濯を拒否された衣類]を提出する。やっと少しは信じて貰えたみたいだけど…、父さんは母さんにそれを注意する感じの言葉を言っただけ…、母さんからの楓への扱いが酷くなっただけだった……。
僕は自分が[母さん]と呼んでいた[存在のあり方]が怖くなって[次は僕に同じ事をしてくるかもしれない]と不安に成って、楓を助ける事が出来なく成って行った。
そうこうする内に、食事療法だけで助かる筈だった楓の病状が悪化する。
学校で意識を失い。救急車で運ばれ、楓が入院する事に成る。その時に勇気を出して言った僕の証言と楓の痩せた体、楓の母親でもあった筈の女が付けた黒く変色する痣の御陰で、[親が虐待をしているのではないか?]と疑われる事に成ってやっと、父さんは僕の言う事を漸くちゃんと信じてくれ、自分の妻と仲違いする様になった。ただ、それだけの事だった。
行政も[虐待の疑い]と言う設定を崩さず。強く出てはくれず。定型文のような言葉を言うだけ…、楓の母親である事を放棄し、外面だけを取り繕った女と会って面談するだけで、何の役にも立たない事を僕は知る事に成った。
こうして楓は、巧妙化した母親であった者から受ける痕跡の残りにくい虐待の末、あの女の操り人形の様に成り、入退院を繰り返す様になったのだ。僕は幼少期に出会った硬い表情で愛想笑いをする子の事を思い出す。
今の僕の楓は、あの子と同じ様な事を願い。絶対に叶えては貰えない。救いの無い世界の住人なのかもしれない。
確か、あの子は結局、生きる為の許しを請い願った親とい言う存在に殺されたと言う話を看護師達が噂していた筈だ。もしかしたら、僕の楓も同じ道を辿るかもしれない。
今まで楓に何もしてあげられなかった僕は、必死で楓を護る為に計画を練る。
自分が病院に行く日では無い。一番、授業が長く、家出が発覚し難い日を決行の日に決め…、僕は、女が前に連絡帳に書いた[病院に行くので…]と言うメモを見ながら、女の字を必死に練習した……。そして完成度を上げる為に、鉛筆で塗って作ったカーボン紙擬きを使って、文字をなぞり書きして写し清書して、真新しい連絡帳2冊に偽造を施した。「そんな事をしたらもっと、嫌われてしまう」と怯える楓を「僕が楓を護るから!」と説得して、楓にも決行日の前日に学校に偽造した連絡帳を提出させる。提出した日の家に帰る前に僕が、それを回収して、翌日の作戦決行日…、学校に行かなくても、両親と言う存在に連絡が入らない状況を作り上げた……。
その日、僕と楓は学校に行く振りをして家を出る。退院してまた、前より酷い扱いを受ける事になった楓の手を取り、僕は楓を連れて途中で引き返し、駅へと向かう。電車を乗り継ぎ、父方の祖父母の家に行き「このままでは、妹が殺されてしまう」と言って、僕は必死に祖父母に助けを求めたのだ。
・・・それにしても僕は、この賭けに勝てて本当に良かったと心から思う。・・・
当初、父方の祖父母は、僕の持病は知っていても、楓の病気や楓が虐待されている事を知らず。最初、僕の訴えを祖父母は、何にも信じてはくれはしなかった。この時、崩れ落ちる様に座り込み絶望に染まる楓を見て、僕は生まれてこの方、あれ程までに必死になった事は無かったのではないだろうか?と、思う。
家でメモして持って来た[児童相談所の電話番号を手渡すだけじゃ駄目なのだ…]と気付いた僕は、電話を借り、自分で電話して、僕が先に児童相談所の担当者の人と話して、僕の話が本当であると証明して貰い。同じ手順で病院にも電話して、病院の先生にも僕の願いが届き、楓の病状を父方の祖父母に伝えて貰う事が叶い。2つの奇跡が起きて、父方の祖父母に信じて貰う事に成功したのだ。
そこに至るまでに、所謂、両親…、特に母親と呼びたくも無い女の方に連絡されていたら…、今、やっと見付けた未来への道は閉ざされていた事だろう……。僕は産まれて初めて、神様って言うヤツに感謝し、奇跡に対する御礼の言葉を口にした。
こうやって手に入れた楓と過ごした時間は…大きな病院で治療を受けなければ命を落とす…活動にも制限のある[僕のタイムリミット]、僕が入院するまで続いた……。
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