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005 夢と幻
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僕の身の回り総てが新しくなった。そして、母親と言う名の生き物が選んだ都会の病院にて…、ある日、聞こえて来る筈が無い…夏の海の音が、遠くから聞こえて来た気がした……。僕は、表情を変える事無く、窓の外に目を向ける。
あの日から、どのくらいの月日が過ぎ去った事だろうか?今の僕にはもう、分からない。辛くて気にする事を止めてしまったからだ。
・・・僕の砂の城の姫君は、今、少しでも幸せにしているだろうか?・・・
父さんに託した僕の願い。ある程度でも、叶えられているのだろうか?僕はそれを確かめる術を持たなかった。
・・・元気にしているだろうか?・・・
僕は桜貝を見付けた砂浜より白い、新たな掛り付けと成った病院の個室な病室の壁に視線を一度戻し、今日も虚ろな目で「良い勉強に成る」と女が力説する教材、与えられた本の文字を追い続ける。毎日そうする内に、僕は何時の間にか、幼少の頃に出会った天使の絵本を抱え「イツかハネをモラえる」と口にした夢見がちな少女側の世界の住人の仲間入りを果たす事に成っていた。
あの頃は、自分が[生まれ変わったなら…]と、存在するかも分からない未来を求める様に成るとは思いもしなかった。
それにしても僕は、どれ程までに、楓の笑顔が大好きだったのだろう?
・・・心から、本気で笑う事が出来ているだろうか?・・・・
僕は、この場に存在する筈が無い…、中身が入ったペットボトルの曲面に映るモノの影、ピカピカに磨かれた金属の表面に映る景色の中に楓の幻影や幻を見掛け…、楓の夢を見ては、静かに苦笑いして…、大きく溜息を吐く……。
・・・僕も、証拠が欲しいよ…父さん……。・・・
嘗て、所見で自分の言葉を信じてくれなかった父やその系列の祖父母の事を思い出し、その願いを告げる事すら出来ない今を憂い。そして、正気で過ごせない今の僕の生きる世界で、僕は楓の幸せを祈り、願い続ける。
・・・会えなくても良い。遠くからでも、幸せになった楓の笑顔が見てみたい。・・・
僕は、母の所有物になってから、逃避したい現実から目を背け続けていた。出来るモノなら、幽体離脱してでも構わないから、楓の幸せを確かめに行きたかった。叶う事の無いであろう願いが積もり積もって押し潰されそうだ。
今は、もう二度と大切に思えない女が…、嘗て楓が居てくれた場所に、我が物顔で陣取り…、今日も、母親面して[私って良い母親でしょ?]と言わんばかりに、医師や看護師に向かって微笑んでいる…ただ、それだけであっても、耐えがたい苦痛を感じる……。[この女さえ、存在しなければ…]と言う思いも、僕の中で積み上がって行く。
そんな歳月が過ぎた先に…、面倒見の良い顔と教育熱心な仮面を被った女は、新たな伴侶を得て…、僕の存在が邪魔に成ったのだろう……。僕の存在を金で解決した。
僕は[もっと早くに、そうしてくれていれば良かったのに…]と思いながら、心の中で大喜びした。女から、その解決を提示された時に居た場所が公共の場所でなかったら、嬉し過ぎて、その場で叫び小躍りしていたかもしれない。
そんな感じで僕は大人になってからやっと、自由過ぎる自由を手に入れたのだ。
嬉し過ぎて、楽し過ぎて、1週間で一人暮らしの新生活が整ってしまった。そして僕は、女の言い付けや病院に通う以外の理由で、初めて連続休暇を取得する。
初日、連絡の取れない父方の祖父母の家を訪ねたら、もう、その場所に祖父母の家は無くなっていた。近所の人も、入った介護施設の詳しい詳細を覚えておらず。楓へ繋がると信じていた手掛かりを見失った僕は、想い出の海に向かう。
その海も経過した歳月を物語るかの如くに様変わりし、僕と楓が砂の城を作って遊んだ砂浜は海に飲まれ、その場所は、嘗て砂浜に行く為の朽ちかけた石造りの階段を残すだけと成っていた。記憶を辿り、秘密基地の場所を見に行ったが…、道路拡張の為に開拓され…切り取られ無くなってしまった様子。昔、来た時に泊まった民宿の方も、廃業して長く、その地域で宿泊できる施設が無かった事から、僕はその日、隣の地区まで足を伸ばす事にした。
波打ち際に作った砂の城の様に、綺麗さっぱり、想い出の場所は消え去り、その痕跡すら見付ける事は叶わなかった。
後は…、自分の戸籍謄本の取り寄せから初め…辿るしか無いだろう……。初めから[そうすれば良かった]と思いながら、翌日に謄本を手にして僕は、現実を受け止めきれず。まだ、在籍しているかも分からないのに、子供の頃に見た[幻や夢]を思い出しながら、父親が務めていた会社に向かう。
そして運良く、父はまだ、その会社に在籍していた。でも、後数年、自由に成れる時期や僕の行動が遅ければ、父との再会は叶わなかったであろう。僕は静かに廊下に佇み、呼んで貰った父を待つ。
その時、再会した僕の父親は走り、息を切らし、僕の顔を見ると涙を流し、一呼吸置いて「すまなかった」「申し訳ない」「俺が悪かった」と聞き取れる言葉を僕に向かって発した。
その後、周囲が気を利かせ、通された応接室。父子二人だけが向かい合って座る。僕は父が財布から取り出した古びた写真を受け取る。その写真に映し出されていたのは、貰った駄菓子を自慢する様に掲げる子供の頃の僕と楓と砂の城。続いて、父が手帳の方から取り出し、僕に渡した写真には、砂浜で大きなお城を作る僕と楓と海辺の町の子供達、民宿でゲームをしている写真もあった。そして、小児科の大部屋で撮られたモノであろうか?楓と僕が知らない女の子、2人だけが写る写真が、僕の手の中で異彩を放つ。
僕が、その写真を見ている間に父が語る。その[女の子]と[奇跡]が含まれる言葉は、唯々、僕の聴覚を通り、何の感情も残さず通り過ぎて行った。
あの日から、どのくらいの月日が過ぎ去った事だろうか?今の僕にはもう、分からない。辛くて気にする事を止めてしまったからだ。
・・・僕の砂の城の姫君は、今、少しでも幸せにしているだろうか?・・・
父さんに託した僕の願い。ある程度でも、叶えられているのだろうか?僕はそれを確かめる術を持たなかった。
・・・元気にしているだろうか?・・・
僕は桜貝を見付けた砂浜より白い、新たな掛り付けと成った病院の個室な病室の壁に視線を一度戻し、今日も虚ろな目で「良い勉強に成る」と女が力説する教材、与えられた本の文字を追い続ける。毎日そうする内に、僕は何時の間にか、幼少の頃に出会った天使の絵本を抱え「イツかハネをモラえる」と口にした夢見がちな少女側の世界の住人の仲間入りを果たす事に成っていた。
あの頃は、自分が[生まれ変わったなら…]と、存在するかも分からない未来を求める様に成るとは思いもしなかった。
それにしても僕は、どれ程までに、楓の笑顔が大好きだったのだろう?
・・・心から、本気で笑う事が出来ているだろうか?・・・・
僕は、この場に存在する筈が無い…、中身が入ったペットボトルの曲面に映るモノの影、ピカピカに磨かれた金属の表面に映る景色の中に楓の幻影や幻を見掛け…、楓の夢を見ては、静かに苦笑いして…、大きく溜息を吐く……。
・・・僕も、証拠が欲しいよ…父さん……。・・・
嘗て、所見で自分の言葉を信じてくれなかった父やその系列の祖父母の事を思い出し、その願いを告げる事すら出来ない今を憂い。そして、正気で過ごせない今の僕の生きる世界で、僕は楓の幸せを祈り、願い続ける。
・・・会えなくても良い。遠くからでも、幸せになった楓の笑顔が見てみたい。・・・
僕は、母の所有物になってから、逃避したい現実から目を背け続けていた。出来るモノなら、幽体離脱してでも構わないから、楓の幸せを確かめに行きたかった。叶う事の無いであろう願いが積もり積もって押し潰されそうだ。
今は、もう二度と大切に思えない女が…、嘗て楓が居てくれた場所に、我が物顔で陣取り…、今日も、母親面して[私って良い母親でしょ?]と言わんばかりに、医師や看護師に向かって微笑んでいる…ただ、それだけであっても、耐えがたい苦痛を感じる……。[この女さえ、存在しなければ…]と言う思いも、僕の中で積み上がって行く。
そんな歳月が過ぎた先に…、面倒見の良い顔と教育熱心な仮面を被った女は、新たな伴侶を得て…、僕の存在が邪魔に成ったのだろう……。僕の存在を金で解決した。
僕は[もっと早くに、そうしてくれていれば良かったのに…]と思いながら、心の中で大喜びした。女から、その解決を提示された時に居た場所が公共の場所でなかったら、嬉し過ぎて、その場で叫び小躍りしていたかもしれない。
そんな感じで僕は大人になってからやっと、自由過ぎる自由を手に入れたのだ。
嬉し過ぎて、楽し過ぎて、1週間で一人暮らしの新生活が整ってしまった。そして僕は、女の言い付けや病院に通う以外の理由で、初めて連続休暇を取得する。
初日、連絡の取れない父方の祖父母の家を訪ねたら、もう、その場所に祖父母の家は無くなっていた。近所の人も、入った介護施設の詳しい詳細を覚えておらず。楓へ繋がると信じていた手掛かりを見失った僕は、想い出の海に向かう。
その海も経過した歳月を物語るかの如くに様変わりし、僕と楓が砂の城を作って遊んだ砂浜は海に飲まれ、その場所は、嘗て砂浜に行く為の朽ちかけた石造りの階段を残すだけと成っていた。記憶を辿り、秘密基地の場所を見に行ったが…、道路拡張の為に開拓され…切り取られ無くなってしまった様子。昔、来た時に泊まった民宿の方も、廃業して長く、その地域で宿泊できる施設が無かった事から、僕はその日、隣の地区まで足を伸ばす事にした。
波打ち際に作った砂の城の様に、綺麗さっぱり、想い出の場所は消え去り、その痕跡すら見付ける事は叶わなかった。
後は…、自分の戸籍謄本の取り寄せから初め…辿るしか無いだろう……。初めから[そうすれば良かった]と思いながら、翌日に謄本を手にして僕は、現実を受け止めきれず。まだ、在籍しているかも分からないのに、子供の頃に見た[幻や夢]を思い出しながら、父親が務めていた会社に向かう。
そして運良く、父はまだ、その会社に在籍していた。でも、後数年、自由に成れる時期や僕の行動が遅ければ、父との再会は叶わなかったであろう。僕は静かに廊下に佇み、呼んで貰った父を待つ。
その時、再会した僕の父親は走り、息を切らし、僕の顔を見ると涙を流し、一呼吸置いて「すまなかった」「申し訳ない」「俺が悪かった」と聞き取れる言葉を僕に向かって発した。
その後、周囲が気を利かせ、通された応接室。父子二人だけが向かい合って座る。僕は父が財布から取り出した古びた写真を受け取る。その写真に映し出されていたのは、貰った駄菓子を自慢する様に掲げる子供の頃の僕と楓と砂の城。続いて、父が手帳の方から取り出し、僕に渡した写真には、砂浜で大きなお城を作る僕と楓と海辺の町の子供達、民宿でゲームをしている写真もあった。そして、小児科の大部屋で撮られたモノであろうか?楓と僕が知らない女の子、2人だけが写る写真が、僕の手の中で異彩を放つ。
僕が、その写真を見ている間に父が語る。その[女の子]と[奇跡]が含まれる言葉は、唯々、僕の聴覚を通り、何の感情も残さず通り過ぎて行った。
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