嘘から出た実?って、いや、それ寧ろ本当の事が嘘に成ってて…

mitokami

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 世の中には【ウソから出たまこと】と言う言葉が存在している。
は、冤罪発生装置と呼ぶに値する人間を増長させる1つの要因だ。当初は勝手な推測を口から出任せに言っていて、それが偶然、図らずも真実に近い事柄に成ってしまう。又は、誤魔化せる程度の誤差で言い当てられた事等が切っ掛けで、ヤツ等は自らの推測が正しいモノなのだと勘違いして、新たな法螺話を何時でも幾らでも何度でも発信し続けてしまうのだろう。だが、今回の事はとは違い、事情もとは違う。
誤魔化しが必要以上に成功してしまって、最終的に嘘が本当の事の様に成ってしまう。と、言うモノである。

 商人ギルドの見目の良い受付のオネエさんと同じ商人ギルドの背の高いオニイさんが我が家を訪問し、我が家から帰った後の事。何故だか【嘘から出(来)た(偽りの)実】、通称【嘘から出た実】に私は困惑させられるのだった。

 昔、母親が「嘘に足を引っ張られて馬鹿を見るのは馬鹿々々しい」と言っていた事を思い出す。
今回のは、自ら口にし吐いた嘘では無いが、自分の身の回りの嘘偽りに足を引っ張られている状態だ。母親に「だから、誤魔化しも後先考えて使えって言ってたのに」って笑われてしまいそうだと苦笑いするしかない。そんな残念な事柄なのではなかろうか?

 運悪く、ツキが回って来ない。運がてしまったのかもしれない週1回のツキの日の出来事。

 ドワーフな奥様を中心に集まった商店主の妻の集いの人達に、幼少期より私が母親から教わってきた植物知識・前住んでいた人が家に置いて行った御呪おまじないの本から私が得た情報を提供した事で発足した【オマジナイ料理の店】は、今日も顔馴染みが集まり繁盛していた。
竈の熱源が鍛冶屋の窯から絶えず流れ出る高温の煙を再利用したモノの為、薪や炎の魔石の節約と言う恩恵の代わりに竈で湯を沸かす等の事をし続けなきゃイケナイ仕様だから年中無休と言う店だ。

 看板メニューは、疲労が回復するかもしれないワイルドボア又は魔豚オーク肉の料理。
腰痛や関節痛が軽く成るかもしれない軟骨をとろける程に煮込んだ軟骨煮込み、骨折しづらく成るかもしれない骨骨チップ付き葉物野菜の肝油炒め、風邪を予防する可能性が高い揚げニンニクトッピングのレバニラ炒め等、他にも体に良さそうな香草を詰めた丸鳥丸ごとや丸兎丸ごとの焼き物やシチュー、解毒効果があるかも野菜スープや新鮮な野草ジュースが販売されている。
最近では、オマジナイ料理の効能目当てで、地元の兵士や傭兵、冒険者も出入りする様に成っていた。

 私はドワーフの奥さんを追い掛けてに入り、深く深くとっても後悔する。
まず、西門担当の衛兵さんが昼飯(?)を食べに来て、そのまま晩酌モードに突入してるっぽい状態だったのである。

「よお!奇遇だなぁ!!晩飯でも食いに来たのか?」って、昼飯にしてはかなり遅いが、晩飯と言うにはまだ日が高いのではなかろうか?と私は思う。
「おっ!レヨンも一緒か、久し振りだなぁ、まぁ、奢ってやるから飯食ってけ」…え?今何と?と思って振り返ったら…、レヨンの姿のブランが採取したモノを入れた籠を持って無邪気な笑顔で立っていた……。ブランに家で待っててとも言わずに来たから、追い掛けて来たのかもしれないけど、間が悪い。

 然も「レヨン君って無自覚な隠れ獣人だったんだって?」「最近に成って先祖返りして、今、絶賛幼児退行中なんだって?」と周囲から声を掛けられ、私が肯定も否定もしない内に誤解がそのまま確定事項に成ってしまう。ブランが話掛けられ困惑して、レヨンの姿で耳と尻尾を出してしまったからだ。

 正直、その場でブランが本来のブランの姿に戻らなかったのが唯一の救いだったかもしれない。って、その時は思ったけれど、獣人の人って、完全な獣の姿に成れる人もいるらしく、ワンコな姿に成ってしまっても何の問題も無かったかもしれない。って現実に後々涙する。ブランには是非とも、私へ与えた心労を多少は反省し、言時には私を労って欲しい。

 …と、まぁ、今日は色々あったけど…、悔やんだり悩んだりするのは後にしようと思う……。後悔は先にするもんじゃない。先にした上で後にまでするなんて、労力と時間が二重に掛かって無駄である。
ここは、ポジティブで行こう。レヨンとサンティエが同一人物である事が、公共の場で発覚しなかった事を喜ぼう。そして、西門担当の衛兵さんにゴハンを食べさせて貰って、レヨンブランが持って来てくれた今日の収穫物を売って稼いで帰ろう。と、気持ちを切り替える。

 こうして私はレヨンであった私を捨て、ブランが本物のレヨンと成り替わったのだけど、他にどうしようもない事柄なので葛藤は無かった。

 但し、この時この場で売る予定じゃなかった内緒で自分用に作ってる魔法薬の材料までもをレヨンブランが籠から出してしまわなければ完璧だったのに!と、悔やまれる案件発生。
母直伝のレシピで必要と成る一部の魔法薬の材料を見て、顔見知りのごついオッサン冒険者が過剰反応して、人混み掻き分け寄って来たのである。

「ぅおい!!そっそれ!何処に生えてた!?」
「…?…、その辺、何処にでも幾らでも生えてんじゃね?」
「いや、違うだろ?魔導士である俺には分かる!」
「「「?!」」」
ごついオッサン冒険者の台詞に周囲が騒めいた。正直、私も驚いている。スキンヘッドで皮の鎧着た筋肉質のオッサンが魔導士だなんて見抜ける人は少ないのではなかろうか?
因みに、よぉ~く見たら、ごついオッサンの腰には剣とかではなく、俗に言う木製の魔法の杖が下げられていた。血が付着した形跡が見て取れるので鈍器としても使用しているのだろう。だから余計に魔導士であると言う予備知識無しでは、魔法の杖が棍棒にしか見えない。つまり、やっぱりどうしても魔導士には見えない。

「…(オッサンが魔導士ってのはおいといて)…何が違うのさ?」
「その草、魔力を帯びて上質な素材に変化してるだろ!」
「……」
魔力を帯びているかは兎も角、その判断ができない私には柔らかくて香りの良いヨモギ以外の何物でもない。

「取り敢えず、売ってくれ!相場より高く買い取るから!」
「え?嫌だけど?(使うから採って来たんだし)そもそもコレ、買い取り金額も無い雑草扱いの草じゃね?」
「全部買い取る!新芽の束を10本1束に付き銅貨5枚で如何だ!」
「いやいや、売らないし!(魔法薬と)草餅やヨモギ茶にしたいので御断りさせて頂きます」
「じゃあ、10枚!」
「だから、嫌だってば!自分で森まで取りに行ってきなよ」と話していたら、何時の間にかオッサン冒険者のパーティーメンバーに話を聴きに行っていた西門担当の衛兵さんが「奥さんが原因不明の体調不良だそうだ」と会話に参加し「可哀想だから2~3束譲ってやれ」と言って来た。
それだと半分に成ってしまって生理痛緩和の為の薬か、更年期の体調不良の改善に効くかもしれないマジナイ屋で売る御茶のどちらかを断念せざる得なく成るのだけど、調と言うキーワードに釣られたオマジナイ料理の店で働く奥様達がオッサン冒険者を擁護して、結局、1束銅貨5枚で全部譲り渡す事に成ってしまった。

「そろそろ必要に成るから自分用に採取して来たのに…」と本音を零したら、レヨンブランが後ろから私を抱き締め頭を擦り付けて来た。慰めに来たのだろうが、中身は犬。無駄に力が強くて痛い。
その様な感じのホント、今日はやっぱり何だかとっても運が悪いなぁ、な、この日の夕方。
オマジナイ料理の店で御飯を食べて帰った後、何故だか早まってしまった生理の御蔭で、私はこの後、家にある材料で薬を作ろうとしたけど下腹部の鈍痛で思うように動けなくて薬作りに失敗し挫折、そのまま服用もできる生薬を採取に出掛けたくても頭痛が重すぎて出られなくて、1週間近く生理痛の薬も痛み止めの薬も無くて寝込む事と成るのであった。冗談抜きで、踏んだり蹴ったりである。

 余談として…翌日の昼過ぎ頃の御話……。
何時もの様に採取物の買い取りに来たドワーフなドワーフの奥さんに、室内で行き倒れている所を発見され、私は生理痛が酷過ぎて保護される事と成る。

 事情を話したら「ホント、びっくりしたよぉ~、それならそうと言ってくれればいいのに…」と苦笑いされた。ホントか?それ、ホントか?生理痛が軽い奴は大概、信じてくれなくて大袈裟に言ってるって思ってて、最終的に笑い飛ばすのが関の山なんだよなぁ~。って思った通り、その後もその度に理解されず。似たよぉ~な事案に、私は苦しまされるのであった。

 因みに、私が寝込んでいる間にブランは完全にレヨンに成り切り、流調に会話できるように成っていた。どうやら、毎食オマジナイ料理の店で御世話に成り、言葉選びをそこで習って覚え、店を手伝って稼ぐ事まで覚えたらしい。
その過程で、更なる誤解を発生させ、私を家ではワンコと兄が大好きな甘えん坊に仕立て上げてくれていた。他にも私の知らない隠し設定が勝手に作られているのではなかろうか?と不安に成る。

 取り敢えず。ブランは、ブランからレヨンに進化(?)したと思い込んで、ブランはもういない的な事を言い、ブランが死んだと周囲に勘違いさせたのかな?
レヨンブランが時々、私の前でブランの振りしている事が私に内緒ってのは、私がブランに教えた事を曲解した結果なのかな?その為に飼い犬の死を受け入れられず兄設定のレヨンブランを困らせているって私の設定は、私が微妙に受け入れがたいけど、嫌だけど、仕方が無いので受け入れよう。
確かに、ブランと一緒のベットで寝るけど、兄設定のレヨンブラン相手に添い寝した覚えはない。が、そう思われても我が家には寝床が一つしかないから…仕方が無いのか……。それで私がブラコンって言われるのは納得いかないけど!これも仕方が無い事として受け入れよう。

 それにしても、誰だよ、レヨンブランにいらん演技力を付けさせたヤツ!
目立って欲しくないのに、その所作や無駄な会話術で客を魅了し、私が元気に成った頃には、レヨンブランはオマジナイ料理の店の看板店員に成り上がってやがりました。何故に如何してこうなった?
最近では、オマジナイ料理の店の若い年頃の女性の御客さんに「近親相姦は良くない」「早くお兄ちゃん離れしなきゃだよ」とかって言われ、困惑しつつも多少の憤りを感じ、私は何とも言えない気持ちに成るのであった。
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