嘘ではなく秘め事

mitokami

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005[夜の学校、校舎での会話]

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「こんな所で、テニス部の知識が役立つとは思わなかったわ」
ユリちゃんの言葉に対し、その彼氏のサンちゃんと元彼のゴロちゃんが物凄く驚いていた。
「あら知らなかった?シロちゃんと私、テニス部の幽霊部員なのよ!ねぇ~」と言われ、私はユリちゃんが首を傾げ、可愛らしく同意を求めてきたので、同じポーズで「ねぇ~」と、応えてみる。

 東条とアキは・・・
そもそも、この学校にテニス部が有った事すら知らなかったらしく、テニスコートが有る事や、学校の水路と道を挟んだ隣の敷地も、この学校の敷地である事にとっても驚いていた。

 シン君のみ・・・
新入生のクラブ紹介の時に、見聞きした事を上げ…「男子テニス部員が2人だけしかいなくて困っている」と…、その2人が訴えていた事から「部活に出てあげて下さいよ!」と言って来た。

 私は自分が[女子テニス部員]だから関係無いのと、今、[自分が女である事]を伝えて、彼是説明するのが面倒だったから、笑って誤魔化す事しかできなかった。
私を助けるかの様に…、アキが「そんな事より、そろそろ肝試ししに行こうぜw」と提案してくれた事に対して、感謝してしまう程に……。

 私達は校舎に入るのでさえも簡単で、セキュリティの弱い。市販されてるキーホルダー、鍵を模したチャームを削った鍵で開いてしまう扉を開け…、同じく鍵チャームで開けられる各階・各学年・私が所属する学科のクラスの教室を巡り…、階段の1番上、マンションのベランダに設置する様な、鍵付のアルミサッシの扉を解錠して開けて…、4つある棟の2つの屋上を制覇し、学校から見える夜景を堪能するのだった……。と、言っても、学校関係者に発見される危険を畏れ、職員室や事務室、校長室等のある本校舎の方には、電気が付いている部屋が有る為に近付けない。私以外のメンバーが所属する学科の教室には行けそうには無かった。

 更に一番奥の校舎は新しく、高価な実験機材が置かれている為に人気は無いが、セキュリティが充実しているので、自由に遊べるのは真ん中の2つの棟だけだったりするのだ。
私達が今、居る場所は…、2つの校舎に挟まれ、見える夜景の方向は2方向しかなく…、2つ目の屋上では、見える景色も変わらず早々に飽きてしまった……。

 そんな時に何故か偶然、話のネタは落ちていた。
アキが、1つ目の教室だけしかない棟の屋上から偶然発見して、此処へ来る途中の一番上の屋根の無い渡り廊下にて、録画設定でスマホを立て掛け放置していたのを何時の間にか取りに行って戻って来たのだ。
御陰で、専門学科の教室の集められた棟…、今いる棟の2階で繰り広げられていた、痴情の縺れの様子について盛り上がる……。

 アキは「恋人とは、上手に別れなきゃ駄目だよなw」とリカに未練を残している癖に堂々と語ってくれている。
「もう[新しい恋人がいる]って言ってましたけど、こう言う場合もヨリって戻っちゃうモノなんですかね?っつぅ~かそもそも…別れ話が出てから次に行った時期が気になりますねw」と、以外とスキモノなシン君。
釣られてユリちゃんが「あの人、ローテーション早いのよぉ~w私も1ヶ月程度は、付き合ってた事あるんだけどww」と自爆ネタを口にし、「それって何時?俺との付き合いの[前]か[後]かでユリへの見方が変わってくるんだけど」と暗い笑顔のゴロちゃんが、ユリちゃんの肩をポンポンッと叩いた。

 何せユリちゃんが、ゴロちゃんと別れてからサンちゃんと付き合うまでの間に、間が無かったのである。つまり2ヶ月程丸被りで[二股期間が2ヶ月程度]存在していたのだ。
ちょっとした怖い感じの沈黙が訪れ…、ユリちゃんに視線で助けを求められた私が、一歩引き、何もしないので…、サンちゃんが「兄ちゃん…今は俺の彼女なんだから、そんな細かい事は気にするなよ」と…、ゴロちゃんとユリちゃんの間に割って入って…、自分も気になるであろうに、悪くなった雰囲気を戻す役目を買って出てくれる……。

 因みにユリちゃんが、ゴロちゃんと付き合っていたのは…、ゴロちゃんの弟なサンちゃん曰く…、高校に入学して直ぐから…、どの道、ゴロちゃんと付き合っている間にユリちゃんが普通に浮気していた事はサンちゃんで発覚済み……。ソコに相手が増えても、余り驚けない。
もしも、2人が付き合う前だったりとかすると[中3の時]なぁ~んて言う、接点が学校見学の時ですか?ってな事になる訳で、[相手を知る前に告白して付き合うのは、リスキーゲーム過ぎて支持できない]私は、ユリちゃんに同情する事も出来ず、そっと見守る事しかできなかった。

「それにしても、相手は誰だったんだろう?」
動画を再生し直しながら、東条がサンちゃんに対して、助け船を出してくれた。私はサンちゃんを不憫に思っていたので、それに便乗して話題を変える御手伝いをする。
「それ…確かに気になる所だね!ゴロちゃん!ユリちゃんも…あの声に聞き覚えなかった?」
窓際に居た[某先生]の少し剥げ掛けた後頭部は、しっかり誰か判別できるレベルで見えていたのだけれども…、相手の女性の姿は、暗くて録画画像を拡大しても見る事はできなかったのである。
ゴロちゃんとユリちゃんは顔を見合わせ「まさか…きっと、違うよね?」と、何かを2人で確認して[仲直りでもしたか?]の様に見詰め合っている。
私も(去年中退した、3年の先輩の声に似てたけど…)と心当たりは有ったモノの…、彼女が[妊娠していた]と言う噂から話題に出しにくく…、ゴロちゃんとユリちゃんも同じ事を思っている様子に…、(現場を見に行きたいかもw)なぁ~んて事を考えていたりするのだった。

 そうこうする内に、サンちゃんが思案する私の腕を引っ張った。
「心当たりが有るのか?」と言う囁く声に、私は静かに頷く。私が思う声の主は、私と同じ学科の生徒で[テニス部の先輩]だったりするのだ。
「凄い長くて綺麗な、ストレートヘアの先輩を覚えているか?私が[姫]って呼んでて、時々、イベント会場でコスプレしてエスコートしてた…」と私が言うと、今度はサンちゃんが頷いた。
「珠姫先輩ね…学区が微妙に違ったから中学の事は知らないけど…、幼稚園から小学校、高校入ってから中退するまでの間の事は知ってるよ…、御近所さんだったから…、高校中退してから後は、あの人の家…引っ越したから知らないけど……。」と私の知らなかった事を教えてくれる。

 珠姫先輩が中退した当時の私は、噂を気にし『姫w 何があってもアイシテルよ♪byシロ』とだけメールを送り付け、何時も集まっていた同人誌のイベント会場で姿を探しながらも、相手から連絡が来るのを待って、あの後、自分からちゃんと連絡を取らなかった事を少しだけ後悔している。

 私とサンちゃんが2人で、真面目な顔で会話していると東条が「ギンちゃん!俺が暇だよ!会話に混ぜてw」と、話しに首を突っ込んでくる。
「姫って誰だよ…俺の知ってる人?」と東条に訊かれて、私は(コイツと姫に接点あるのか?そもそも、コイツとの付き合いは今年入ってからだよな?)と考え込み「姫は、昔の恋人って言ったら…東条信じる?」と逆に質問してみた。

 そこで意図していない方向から、誤解が生まれた。
「昔の恋人?って…もしかして、お前が先輩孕ましたのかよ!」とアキ。
「「「えぇっ?!」」」
(私、生物学的に女なんで、孕ませられませんけど?)
私は想定外な発言に驚き、周囲は発言者のアキを凝視する。
「いや、無理だろ!」「無理でしょ」「無理だわ、ソレ…」と、ゴロちゃんとサンちゃん、ユリちゃんの言葉の一部がハモル。
東条と、先輩の事を知らないシン君は面喰って呆然としていた。

 でも、私の性別をちゃんと認識していないアキは、大きな声で断罪する言葉を繰り返す。
「男と女が付き合ってたら、ヤルだろ!ヤラナイ訳が無いよな?やってたら、100%違うとは言い切れないだろ!」と、アキが力説してくれたのだが…、しかし……。
(私は生まれてこの方、男だった事がないので、本当に無理なんだよw)
さて、先生とかに気付かれる前にアキを黙らせねばならないけどどうしよう?と思っていたら…、ゴロちゃんが「絶対に無い、コイツが孕ました何て事100%アリエナイって言い切れるぞ!だってコイツ…女だもん」と言った……。

 一瞬、沈黙し、ゴロちゃんの所為で、「「「嘘だ!」」」等と、アキだけでなく東条とシン君も煩くなってしまった。
その為に仕方無しと思ったのだろうか?ゴロちゃんとサンちゃんが左右に分かれ、私の両腕を捕まえ、私が「うわ!ちょっ!!言うだけで見せなくても良いんじゃね?」と言うのも無視して、ゴロちゃん先導の元、私の来ているシャツをたくし上げ、胸の膨らみを隠す為の便利商品、一部のコスプレーヤー御用達のコルセットのファスナーを全開して、私の胸を皆に向かって公開してくれた。

 アキと東条が私の胸を凝視し、言葉を完全に失っている。
シン君の方は、1歩引いて…でも、しっかりと胸を見てなさる……。
ユリちゃんは「何で今、バラしちゃうかなぁ~…もっと、面白いタイミングでバラシタカッタノニ!」なぁ~んて事を言っている。
そしてアキは、眉間に皺を寄せ凝視した後、手を伸ばし、私の胸を掴んで揉みやがりました。
「あ…本物だ…シリコン胸でも無い……。」
そして、私はゴロちゃんとサンちゃんに腕を離して貰い。下から斜め上へ向かって体重を掛け勢い良く、アキの頬を思いっきり平手で叩くのであった。
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