ある暗殺用に育てられた筈の花が畑違いな場所で…

mitokami

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 繰り返し繰り返す悪夢の一つ、白い筈のミルクに朱色が混ざる夢。
布にミルクを浸み込ませ、授乳させていた乳幼児が突然、短く一瞬だけ痙攣して、朱色味を帯びたミルクの噴水を吹き出して力無く死んでしまう夢。薄汚れた白い服擬きに暖かいサーモンピンクのシミが広がり冷たく成って良く夢は、私だけの悪夢では無く、同じ施設で育ち、小さい子にミルクを飲ませた事がある皆が見る様に成る夢だったのかもしれない。


 施設内で一番不人気の、傷み始めた野菜を使って作るメニューの一つ、悪く成った部分を削り取り、茹で、すり潰してミルクでのばしドロドロにして完成させるニンジンのポタージュスープを作り乍らソレを思い出し、私は一人で勝手に理解する。私と一緒に傷物に分類された年長のセブ兄さんも、ニンジンのポタージュスープを見る度に食欲が失せると、私に愚痴っていた。
それにニンジンのポタージュは離乳食メニューでもあったから、余計に嫌われていた可能性が無きにしも非ず。故意なのか偶然なのか?頻繁に調薬ミスして商品を死なせている職員が責任転嫁し、運悪く離乳食の食事補助をした不運な子へと罪を被せ、体罰を加え、体裁を守っているのが当たり前に成っていた結果だ。同様にトマトスープ系も色的に嫌われいる。

 踏み台に上って、少し離れた場所から竈の上の小鍋の中身を確認し「イィ~レねぇちゃん、それ、ダレにたべさせるつもりだい?」と、見目の宜しくまだ小っちゃいワンが可愛い御顔の眉間に皺を寄せた。
私が「保存庫(と言う名の地下牢)の奥に閉じ込められてる人に持ってく用」と言うと、今まで遠巻きに見ていた子等も集まって来て「ぼくが」「わたしが」「「もって行ってあげようか?」」と言って来る。12が来た時の荷馬車の護衛や施設の職員が「勇者に似ている」と言っていたから、余計に12の事が気に成るのかもしれない。

 けども、多分、地下に閉じ込められている12と言う番号を与えられた大人の人は、訳も分からず。何も知らない子供等にも態度悪く接し、子供等が知らなきゃ知らないで平穏に過ごせる時期に余計な事を言って、自分達が思うよりも不幸な身の上である事を気付かせてしまうかもしれない。
今いる子供等の大半は、本当に心の優しい子達ばかりである。自分達が暗殺用の道具として育てられている事を知らない方が良い筈だし、不幸な身の上で有る事も知らない方が良いだろう。と、私は思う。

 だから私は本当に、申し訳ない気持ちで皆の頭を撫で、対応する子に因っては軽く抱き締め「これは、私の仕事だから」「ごめんね」と一人一人に断った。


 冷えて行く温もりを知った子等は、小さく柔らかく温かいイキモノの温もりを求め乍ら、冷えて行く可能性に怯え、時に恐怖する。だから、施設に居た子等は小動物が飼われている小屋に通い。施設では小さい方が食事中に急死するリスクが高かったから、自分より小さい子への食事の補助を嫌がる子が多く、余計にそうなったのかもしれない。本当の話、体が大きい人の方が小さい人より毒で死ににくい現実が存在している。

 他にも理由は想像できて、職員さん達の噂通りに、12が勇者では無いだろう。と思うけど、子供等は自分達と同じ立場で、大人に成ってから施設に入って来た外の世界を知っているであろう12と言う番号を与えられた人に興味を持ち。怖いモノ見たさなのか?初日から出された全員分の食事を引っ繰り返して暴れ、独房に入れられた12の人へ、食事を持って行きたがっていた。と、推測できる。

 正直な話。この施設で育てている商品用の食事に毒が入ってたりせず、12の人が毒を感知できない人だったら、どの子にでも12への対応を任せられたのだろうけど、飲食物のはどれにでも毒が混入しているし、12には目視で毒を見分けられる能力がある御様子な為、駄目なものは駄目なのである。
と、言う事で、施設の職員が(私が毒殺した為に)減り、施設に戻って来ている時だけ12への給仕担当に成っていたセブ兄さんまでが死んでしまった為、今回、その役目が私に回って来ている状況だ。

 因みに、最近まで殆んどの職員達は、施設内で育てた野菜や肉は勿論、水や土壌に至るまで、毒に汚染されている事を知らなかったみたいで、訳も分からず。施設のルールに従っていたらしい。
その為、含まれている毒が結構強い毒である事を力説したら調べてくれて、納得して私達全員分の食事への毒の調薬量を減らし、子供等が無駄に死んでしまわない様にしてくれている様に成った。

 取り敢えず。商品の出荷は減らないけど、子供等の無駄な入れ替わりが減り、出荷されるまでは、前より平穏に過せる様に成っているのではなかろうか?と、私は思っている。
だから余計に、出荷された後の未来に幸せが無い事を子供等に知らせる事は勿論、気付かせたくも無かったから、今回、簡単な事情を説明した上で12を説得したくて1品追加で作って持って行く事にしたのである。

 地下牢の入り口は施設の東側。朝日は雑木林に遮られ正午以外の日中の殆どは建物の陰に成ってしまう場所にある。
私は食事の乗ったトレーを持って、南側面の東よりの角にある調理場の入り口から出て、東側にある外からしか入れない地下牢への階段の扉のある場所へと向かう。子供達は「とびら、あけてあげる」「ランタンもって、ついていってあげる」と言い乍ら付いて来た。
私は地下1階の本来は牢の管理者が寝泊まりできる様に成っていた現在、備品等をしまっている物置まで、子供等が付いて来るのを許し、鉄格子の扉を開けた先へは一人で行く事にした。

 この先、私は食事の載ったトレーとランタンを片手で持ち、独房の鍵1本を持って行く。

 ここで余談と成るが、本物の食材を入れて置く保管庫は、冷やす為に必要な魔石と言う名の動力源に使う予算削減の為、常温保存できる食材や常温で置いていても大丈夫な調味料と、置いて置いても支障の無い量の食材や調味料しか置けない仕様となっている。
その為、何故か施設の地下に設置されている6つの鉄格子の牢の内、扉の外された2つの牢は私達商品が口にする食材置き場、綺麗に掃除された扉も鍵も付いた2つは職員用の飲食物置き場。残りの2つは悪い事をした子等を入れる牢としてではあるが、正しい使い方をされている。その奥に3つの独房が設置されているが、こちらも2つは貴重な本やら薬品やらを入れているらしい。

 と言う事で、夏でも何時でも涼しい地下牢の奥、私は一番奥の独房へと向かい。独房の鍵を開け鍵を指したまま開け放って放置し、中へ入る。
広い独房の中には足を短めな鎖で繋がれた髪も髭も伸び切った男の人が麻袋を敷き、麻袋を着て仰向けで寝ている。最初に見掛けた時、目は虚ろだったけども、金髪碧眼のイケメンだった気がするのは気の所為であろうか?
後、その独房に他に置いてあるのは、前日に職員が持って来たのであろう食事入りのトレー、トイレ用として置かれた桶だけだった。ランタン等の光源が無い事から、彼はずっと暗闇の中で過ごしていたっぽい。精神は無事だろうか?正気を失っていたら近付く事すら危険でしかない。

 さて、どうしよう?私は少し離れた石の床にランタンを置き、少し近付いて12の手が届く程度の場所へと向かう。それから、食事を載せたトレーを置き、前日分を回収して確認する。が、殆ど口にしていないっぽい。汚物の入った桶の方は吐瀉物っぽいのも入っている御様子で酷く臭くて触りたくない。けど…世話はしなきゃかぁ~……。

 一時的に、私はランタンを置いて前日分の食事を載せたトレーを持って、そのままで撤退する事にした。汚い桶を回収する用のトングと、それを入れる用の桶と新しい桶を取りに行ったのだ。と言っても、子供等の居る備品置き場まで戻っただけである。
そして、備品が置いてある地下1階へと戻ると、子供等が寄って来て手付かずっぽいトレーを見て「ねぇねぇ…いきてた?」と12の事を質問された。この時、私は12の生死を確認していない事を思い出す。でも多分、敷いている麻袋が糞尿で汚れた形跡は無く、無事っぽかった気がするので「多分」とだけ答え、桶とトングを持って独房に行く、すると、今度は12がこちらを向いて睨みを利かせ座っていた。つまり確認するまでも無くちゃんと12は生きていたのだ。どうせなら…逃げようとして何かしらしてくれてたら…、新しく入った折檻女を呼び寄せて…罠に掛けて排除する事ができたかもしれないのに…残念……。
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