ある暗殺用に育てられた筈の花が畑違いな場所で…

mitokami

文字の大きさ
4 / 7

004

しおりを挟む
 私とは別種の暗殺業を生業とする人達は、私達の様な存在に嫌悪し乍らも、私達に対して同情してくれ、気遣ってくれたり心配してくれたりもする。暗殺者だからって、全員が全員、悪いだけの奴ばかりでは無いらしい。

 仕事に出掛ける前、私が呪術アイテムでもある特性の毒薬をそのまま飲んでいたら、同じ任務の為に私を迎えに来た殺しのプロの人が、何か言い辛そうな雰囲気で「ストレートは体に悪いから割って飲んだ方が良いのではなかろうか」と手持ちの飲み物を譲ってくれる事が多いよ~な気がする。毎回、言い方が酒に対するアレっぽくてちょっと笑えるのだけど、感情を表情に出さないプロの人達が皆、困惑しているみたいな表情をして言って来る事から、掛ける言葉に困っての事だったのかもしれない。と、思わないでもない。

 そんな事を思い出さずにはいられない12との初めての会話は「コレが毒入りと分かって持って来ているのか?」だった。
12が正気を保っている御様子だったので、私は軽く笑って「あ、悪いねぇ~施設の方針には逆らえないのと、食材からして毒で汚染されてるから毒の無い物は無いんだよぉ~」と答え「追い毒してない私特性のニンジンポタージュだけでも良かったらど~ぞ~」と言い乍ら、トイレ代わりの桶を大きめな桶に入れ、新しい桶に交換し、汚物を肥溜めに捨て桶を洗って干す為に、また、ランタン置きっぱなし、扉も開けっ放しで地上へと向かった。

 この時、12に逃げ出すチャンスを再び与えた積りだったんだけど、用事を済まして戻っても12はそのままそこに居た。勿論、ニンジンポタージュも食べちゃいない。

 そこに来て「毒で弱らせて殺す為に毒を混入させているのではないのか?」と言う12からの質問。私は少し考えて、12へ提供されている毒が追加された方の食事を味見して確認し「ん~、弱らせて殺す毒か如何かは微妙っぽいかも?解毒可能な逃げない様に弱らせる為の毒が正解かな?」と答えたのだが、それが12にとっては有り得ない事だったらしい。
何か「食べて確かめるとか、正気か?オマエは!」とか「死んだらどうするんだ!馬鹿!」とか言って凄く怒られた。彼は、最近一緒に仕事をする暗殺業の人と同じタイプっぽい。でも、12は心配して言ってくれてるんだろうけども、私が何時も食べてる食事には、これより強い殺す為の毒が普通に入っているし、仕事の前には原液を1本飲んでから出掛けているしで、私の方には問題が無い。

「じょぶじょぶ、この程度の毒で死ぬなら、もっと若い頃に死んでる筈だから」
「若い頃って…、今も子供だろ?オマエの基準では幾つで若い頃なんだ?」
「5つか6つ?」
「…今、幾つだ?」
「ん~、多分、(今世だけで)10かな?(前世合わせると軽く四半世紀超えちゃってるんだけどね)」
「まだまだ子供じゃねぇ~か!」
「後、(この世界では)5~6年で成人よ?それくらい誤差誤差」
「誤差の範囲がデケェ……」

 12は大きな溜息を吐き「今直ぐは無理だけど、毒を消して、呪いも解呪してやろうか?」と言って来た。この世界の高位の神官や勇者と言うヤツ等の魔法で、普通一般的な状態異常が治せる。と言うのが、この世界の常識ではあるのだが、知的生命体が本気で作り出した毒や呪いは簡単に解毒できたり解呪出来たりはしないモノである。特に私達に掛けられた呪いは特別製で解けても救いは無い。ので、私は苦笑いを浮かべ「遠慮しとく」と答える。すると12は心底不思議そうに「何故?」と言って来た。

 説明は難しいが理由は簡単だ。
「作用副作用を加味して毒や薬に呪いも摂取し続けて来た私達の体内に保有されたモノは、ちょっとやそっとじゃ解毒できないし解呪もできない、下手に一部の毒や呪いを消されたら、毒か薬か呪いの作用で死ぬ事に成り兼ねないのだよ♪」

 12は私の一般論を交えた適当な説明で納得してくれたらしい。感慨深そうに「そんな理由があって、前に来てた少年にも断られたのか……」と言葉を溜息交じりに吐いていた。
前任者であるセブ兄さんが何を何処まで知って断ったか?は判断し兼ねるけど、12はセブ兄さんにも同じ申し出をして断られたっぽい。

 この事から、12が闇雲に行動するタイプでは無く、情報を集め計画を立てて行動するタイプの人間なのではないか?と私は推測した。ので、ココが肉食の魚や鰐を養殖する堀に囲まれた陸の孤島である事を教えて「逃げるなら体力勝負なんじゃないかな?」&「通常の毒を魔法で消せるなら消して飲むか、飲んでから消せば良くない?」と再びニンジンポタージュを食べるよう勧めた。
12は不思議そうな顔をして「何故、教えてくれたんだ?」と言う。私は満面の笑みで「昔、セブ兄さんとね、こう言う助けられるチャンスがあったら、手遅れじゃない子等と一緒に逃げさせて貰おうかって話をしてた事があったんだよね」と過去の言葉を紡ぐ。何も知らなければ、脱走した12を囮に皆で小さい子等を連れて逃げたい所なのだ。けど、今は、全員が手遅れである事を知ってしまっているから逃げられない。

「オマエ等って、何なんだ?手遅れじゃない子等って何?」
12は疑問ばかり口にする。如何やら12は、私達の様な生きている暗殺道具の事を知らない人種らしい。知らないなら知らないままでいて貰おう。と、私は思った。
ので「大凡、実験動物モルモットみたいな存在モノじゃないかな?」と答える。

 御蔭で12は黙った。黙らせたのだけど、12の人って、今まで普通に生きて来たなら名前があるよね?
「そう言えば…オニイさん…、御名前は?」と、今度は私から質問する事に成る。すると何故だか「…後藤雄太…、この世界風に言うと…ユ~タ・ゴトー……」と不安そうに答えてくれた。って、え?異世界転生的なアレで、中の人が日本人?又は、異世界転移系で日経外国人的な人?と言う風に私が戸惑う事に成った。その所為で12の人、基い、後藤さんが深く俯いてしまった。私の反応が遅れた事で、名乗った事を後悔しているっぽい。

 気不味いなぁ~もう!見た目は大人なんだから見た目が子供な私に気を遣わせないで欲しい。でも、まぁ、仕方が無いから、私の方から気ぃ使ったろっかw
「後藤さんにも今まで色々あったんでしょうが、今は一先ず、毒入りですが御食事をどうぞ」と言ってみたら、何か驚かれ「今、後藤って言った?」と聞き返された。
あれ?名前を聴き間違えてたかな?
「【ご】じゃなくて【こ】で【ことう】さんとかだったりします?」
「いやいや、後藤です」
何だ、後藤で合ってんじゃん。って、何故に聞き返したし?と思っていたら、更に意味不明な事に、その後藤さんが「ユウタって呼んで貰っても良いですか?」って涙ながらに言う。ホント訳が分からん。でも、取り敢えず「ユウタさん」って呼んでみた。

 その後「言葉が通じたぁ~」って更に泣かれ、私は困惑しつつ後藤さんに事情を聴いたら【ユウタ】って名前は、生粋のコノ世界の人には御変換され【勇者ゆうしゃ】に成り、【ゴトウ】は【ゴトゥ~】に御変換されてしまうらしい。若しかしたら伊藤ならイトゥ~、江藤ならエトゥ~、加藤ならカトゥ~に成るのだろうか?と、言う事は置いて置いて、取り敢えず彼は、本物の【勇者 ゴトゥ】さん其の人らしい。と、言っても…、正直、私は…この世界の勇者の事なんて知らないぞ…と…言う事で…。

 本人曰くに成るが後藤さんは本物の勇者で、去年まで勇者として旅をし、魔王を倒して凱旋後、約束通り御姫様と結婚式したけれど、初夜の手前で拉致られて、今に至るらしい。然も、その御姫様に会ったのは、勇者として旅立つ事が決定事項で装備を整え国王様に謁見した時の1回だけ、「頑張って下さい」と言われただけの関係らしい。

 うん、まぁ、御姫様側の気持ちを何となく理解。
魔王を倒したからって見ず知らずの赤の他人と結婚するのは嫌だろう。更に、後藤さんは異世界転生系の孤児だと言った。王侯貴族が幅を利かせる世界で平民でも無く孤児て。オマケに、名前も前世の本名を名乗っていたのだろうけど【勇者 ゴトゥ】を自称する怪しいヤツ。無いわぁ~、ホント、無いわぁ~。気の毒ではあるけど、御姫様にしてみれば、ホント無しよりの無しで、有り得ないですよ!後藤さん!!
権力のある御姫様が、イケメンであろうが無かろうが、本物かどうかわからない勇者を亡き者にしようとするのは、当たり前だと思うよ。とは言えないけど、取り敢えず後藤さんの話を笑って聞いといた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

わたし、不正なんて一切しておりませんけど!!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
書類偽装の罪でヒーローに断罪されるはずの侍女に転生したことに就職初日に気がついた!断罪なんてされてたまるか!!!

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

処理中です...