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 意図せず。異世界にて、可愛らしい系のコスプレ生活を送る事と成っていたが、鏡は高級品の為、身近に多く存在してはいないし、姿を映り込まらせられる様な質の良い硝子は勿論、綺麗に磨かれた床や壁も、磨く技術が未熟で鏡の代わりに成るレベルではない。鏡の様に使えるような平らな金属だって、そこら辺に普通に存在するモノではないし、金属製の食器も、金属の質が悪く、ピカピカに磨いても鏡の代わりにはならない。つまり、自分の姿を見なきゃダメージはそれ程に大きくないから、何とか平気。気にしなければ問題無い。
…と、言う……。現実逃避の末、時間は勝手に進み、私が創作活動に支障のない生活を勤しんでいる間に、何時の間にか本来の物語のエンディングの時間枠と成っていた。

 取り敢えず。学園に入ってから最初にゲットした後ろ盾はオーブ王女、今も変わらずオーブは私の後ろ盾でいてくれている。続いて私はエリュプシオン王子と言う名の質の悪い後ろ盾と、王弟スプランドゥール様と言う名の良き(?)後ろ盾を手に入れ、もとより、従弟や婚約者との関係は悪く無い為、この事から、断罪される可能性は低いであろう。と思われる。

 ファレーズの従妹でチュテレールの婚約者。悪役令嬢要員のコリーヌ譲も、オーブ王女の手引きでオタクと化し、同担拒否の恋愛脳ガチ勢として、ファレーズのファンクラブとチュテレールのファンクラブ双方に入って推し活をしているけど、断罪される程にファレーズやチュテレールに嫌われてないから大丈夫そうなのではないだろうか?但し、私がファレーズの婚約者で、私の従弟のチュテレールがファレーズと一緒に成って私と一緒に行動を共にする為、私との人間関係はすこぶる宜しくない。その為に一応、念の為、彼女コリーヌに裏切られた場合の対策を私は用意している。転ばぬ先の杖ってヤツやよ。

 残りの悪役令嬢要員。ヴォルカン王子の婚約者ブリュレ・シュドゥ譲、グラースの婚約者のスウルス・ウェスト譲とは、オーブ王女を通して何時しか完全な腐女子仲間と成っていて、ブリュレ譲とスウルス譲が断罪されそうに成ったら発動する地雷、私の新たな後ろ盾で使える様になった罠を幾つか発動させる準備をしている。
オーブ王女はもっと積極的で、ヴォルカンの王位継承権と(権力ですら持たせていたくないらしく)王籍&貴族籍の剝奪、平民に成って貰う方向で動き、幾つもの罠を仕掛け、色んな下準備していると言っていた。だから、対策は多分やけど完璧であろう。

 ってな訳で、準備万端と言えば、準備万端の筈だ。と、私が思っていた時期もありました。が、私は自分と同じ転生者のアンジュを侮っていたみたいです。盲点を突かれました。

 ファレーズの学年の卒業式であるのにも関わらず。1学年下のヴォルカン王子が主役かの如く正面入り口から登場。男爵令嬢のアンジュを引き連れ舞台の上に昇ったのです。周囲が呆気に取られていました。
周囲の反応が見えないのか?ヴォルカン王子は明らか嘘泣きをしている後輩のアンジュの肩を抱いて慰める様な素振りをみせながら「ファレーズ先輩!そして、チュテレール!アンジュ譲が自分達の方へ靡かない事に業を煮やし、意地悪をしたそうだな!その上、それに便乗して、身分を笠にきてアンジュ譲をイジメた者達が存在すると聞いている!」と何だか訳の分からない事を口走り出しました。つか、自分に靡かないからって、ヴォルカン王子を使って攻略対象をも断罪するのかよwアンジュの行動力に本気ビックリしたわww

 これを皮切りにヴォルカン王子とアンジュに寄る[単独ライブ]が始まりました。
アンジュはヴォルカンから離れ1歩前に出て…、替えの靴や服・置いておいた制服や筆記具にノートや教科書を駄目にされただの、(←どこに私物を放置してたし?魔法で完全管理されたロッカーや、寮でも魔法で管理された個室に荷物を置いていれば、悪戯とか普通に無理でしょ?それ以外の場所に置いてたとかでも言うのかな?校則違反ですよ?)食事にも悪戯され、(←調理も配膳も学園の生徒ではなく、給金の高い王城で働く権利の取得の為に、薄給で頑張ってる貴族出身の使用人さん達ですよ?毎日が試験で、魔法による監視が成されているのに、んな事したら、王城での仕事は勿論、貴族宅での働き口まで無くし、実家にも帰れず路頭に迷う事に成るからしないと思うよ?)噴水に落とされ・階段からも突き落とされた(←もしもそんな事実があったら、未然に防止する事が出来なかった警備担当の人が罰を受け、大事に成っている筈だよ?)とか言い…、その時の状況を事細かに説明してから、祈るようなポーズで「私、とても辛かったんです!罪を認めて下さい!」と言って1歩下がり、ヴォルカンへしなだれ掛かる……。(←私等は何を見せられているんやろか?地味に下手糞な演劇かな?)

 ヴォルカンはしなだれ掛かって来たアンジュを軽く支え、自分の婚約に指をさし「ブリュレ!私の婚約者でありながら私の友人であるアンジュ譲に嫉妬心を抱き、私の友人の愚行に便乗し、他の生徒を先導してアンジュ譲をイジメたのであろう!」と勝手に決め付け、とっても偉そうです。(←腹立たしいな→)アンジュがヴォルカンの腕の中でほくそ笑むのも見えます。多分、私以外にも見てて気付きはった人いてはるんと違うかな?と思っていたら、成績順に並ぶ私の真後ろから重苦しい溜息と「あの馬鹿、気付けよ!」と言う独り言が聞こえてきました。多分、グラースの溜息と声です。グラースて、アンジュに攻略されてへんかってんね。

 ヴォルカンはグラースの反応に気付く事無く「これを機に、ファレーズとチュテレールに与えられた生徒会役員の地位と権力をその任を解く事で剝奪!私とブリュレの婚約と、ブリュレに付き従ったスウルスと私の側近であるグラースの婚約も破棄するモノとする!その他、アンジュ譲をイジメた者達には、追って罪による罰が下される事を覚悟して置くように!」と言うのだが、その殆どの罪とやらは(王弟の配下調べ&オーブ王女の隠密部隊調べ認定の)冤罪です。
物理的な証拠の残るイジメが発生せぬよう。そもそも、イジメが起きぬよう。オーブ王女が、色々と率先して取り計らうと同時に、アンジュの周辺には隠密が得意な女性の監視者が交代制で派遣され、漏れの無い様に記録を取っていたので、アンジュが言う様なイジメは発生できないし発生していないのが確認されています。

 この結果を基に、こんな冤罪をオーブは許さないし、私だって許してやらへんよ?それ以前に「スウルスとの婚約が破棄と成るなら、私はアナタの側近を辞退する事としましょう」ってグラースがヴォルカン王子とアンジュに寄る[単独ライブ]にゲスト参戦しましたね。グラースの言動に慌て焦るヴォルカンへ「御愁傷様」と言ってやりたい胸中です。

 ブリュレとスウルスは、オーブ王女が「2人のアリバイは、私とガルディアが保証します」と、アンジュが打ち出した冤罪の幾つかを否定した為、周囲から無罪判定を貰いました。眉間に皺を寄せ舌打ちするアンジュへ「残念でしたね」とでも言ってあげましょうかね。
ドヨメキ、アンジュに疑惑の目を向ける一般の生徒さん達に声を掛けるとしたら「形勢逆転が出来ました!ありがとうございます」ですよね。

 そこに便乗してか?ファレーズとか堂々と「あの令嬢に誤解をさせる言動を取った覚えは無いが、私に靡かせたいのはガルディア・エストゥ、私の婚約者であるディアだけだよ」と、イケメンオーラ全開で私に言いに来よるし、チュテレールも私の所に来て「自分の意志でいつも一緒に居たのは、このガルディアだ!ピンクの髪の子に誤解される言動や行動を取った覚えはない!」と言いやがった。ファレーズは婚約者だから仕方が無いとして…、チュテレールよ!コリーヌに誤解されて、私がコリーヌに嫉妬心向けられてやべぇ~から…私の所に来るんじゃない……。寧ろ、婚約者であるコリーヌの所へ誤解を解きに行ってくれ!って思う出来事が発生した。

 私が断罪された訳では無いが、これはこれで目立ってしゃぁない。視線が痛いよ…誰か助けたってぇ~な……。
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