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 気付けば、私に冤罪を掛けようと駄犬の如く吠えるヴォルカン王子に立ち向かう我が婚約者ファレーズの姿がありました。立証された私の無実を盾に王子と対立するファレーズの言葉は、私の部分を最寄りの男子生徒にでも差し替えれば美味しそうです。と同時に、王子の台詞も私の部分をその辺の男子生徒に差し替えれば、楽しく萌えれます。
「それは、・・・の所為ではありません!」
「っファレーズ!オマエも私を裏切って・・・・・に付くと言うのか⁉オマエも私より・・・・・の方が大切だと言うつもりなのか⁉」
に、してもやヴォルカン王子。なんや言い方とか言葉選びが女々しいて、意中の相手を先取りされたヤツぽっな言葉が聞こえて来る気がするんは、私の気の所為なんかな?私ってば王子から誰かを盗ったっけか?(←注意《・・》! そう思えるのはきっと、腐女子だからだと思われる)
「これは裏切る裏切らないではありません!現実を見て下さい!!」
「オマエ達こそ現実を見ろ!色恋にうつつを抜かして、敬うべきを間違えるな!」
「ん?何んなんそれ(私等に色恋なくない?)アホ臭、色恋にうつつ抜かしとんの王子さんやん」
「「あっ!」」「言いやがった」とチュテレール。ファレーズは「言うと思った」と苦笑いしてました。アカン、ついつい思わず、突っ込み入れてもた。そうすると、まぁ王子さん短気やし、怒ってまうわなぁ~。

「あぁ~…何や知らん、王子怒てもたなぁ~……」
「ディア!知らない事は無いだろう?オマエはヴォルカン王子相手に何て事を言ってるんだ?」
「あ、チューさん!」
「あ、チューさん!っじゃないだろ?(ずっとここに居ただろうが!)如何してオマエは何時も何時も他人様を怒らせてばかりで、何を考えてるんだ!何をしたくて何をやっている?絶対に態とやってるだろ?」
「え?侵害やなぁ~、(たぶん)ワザトジャナイヨ?」
「態とらしい!可愛い仕草で首傾げても誤魔化されないぞ!」
私は、ついついヴォルカン王子に突っ込み入れてしまった訳だが、何故かチュテレールが私に対して理不尽(?)に怒り出した。御蔭でヴォルカンの方は感慨深気に「チュテレールは、私の方の見方だったのだな」と勘違いして凄く喜んでいる。が、それは何や男色の発芽を期待できそう臭い台詞やしで、ネタとして言葉を保存し、後は暫く王子を放置する事とする。

「チュテ、ディアが[態とじゃない]って言ってるんだから、悪気無いんじゃないか?」
「そうそう、(きっと)ワザトジャナイよ?」
近年のファレーズは、出会った時とは打って変わり、私に凄く甘い。甘いが過ぎて、娘を溺愛する系の父親っぽく成っているが、私は取り敢えず困ってはいないので受け入れている方向だ。
「ファーさん…ディアを甘やかすなよ……」
チュテレールは大きな溜息を吐き「ファーさんがそんなんだから調子に乗って、ディアが何時でも何でも気軽にやらかすんじゃないのか?」と「ディアは見たままのオコサマじゃないぞ?甘やかしが過ぎるだろ!」とかも言ってくれているが、私も若干そう思う。その通りの部分も少なからずあるから否定はしない。

「可愛い婚約者を可愛がるのは当たり前だろ?」
(↑でも、何か、なんでやろうな?ファレーズの言い方て、微妙にニュアンスがちゃう気ぃ~する)
「よく考えて見ろ!ディアは、そんな可愛いのイキモノでは無いのではないか?」
(↑何度も可愛いて言いなや、照れるやん!それにしても、チュテレールも私の事、見た目だけは可愛いと思ってるやね)
「知っている!分かっているでも、意思疎通ができる小動物は正義だろう!」
(↑っあ…、やっぱそう言う事やったか!ファーさんの中の私の分類…小動物やねんな…、幾度となく私を餌付けしようしてたしで昔から知らん事はなかったわ……)
「…意思疎通ができる…小動物…、そうか…見目が可愛い魔物を飼いたいと言うのよりは…マシか?」
(↑チューさん?今、どないな納得の仕方しなさった?)
「ん?あぁ~、それはもう言わない、好みの小動物や小さい魔物は…何故か籠に入れて飼うとストレスで死んでしまうからな……」
(↑何や、話の風向きが変わってもたな)
ファレーズは凄く残念そうな表情と声色で話をしていた。が、私の方は、撫でまくり、構いまくりで殺してしまったんやろうなと理解。チュテレールの方は「もう既に…飼おうとしてたのか…(魔物の方は失敗してて良かった)…」と胸を撫で下ろしていた。(←注意《・・》! この世界の魔物の繁殖能力は小動物の比ではなく、1匹でも放置していれば、気付いた時には爆発的に増えている事も多々あると言う世界設定と成っています)

「一応言って置くが…ディア……観賞用のイキモノを手乗りにしようとして失敗して殺した訳では無いからな?」
「っえ?ファーさん…、今、私ん心ん読んだ?(テレパシスト的なスキルアレ持ってたっけ?)」
「長い付き合いなんだ、読まなくてもディアの考えそうな事は理解できるぞ」
「オマエ等…付き合いたての恋人同士かよ……」
「ん?チュテ?嫉妬か?オマエも婚約者コリーヌと仲良くすれば良いだろ?」
「ファーさん…無茶を言わないでくれ…、アレはディアとの仲を勘違いし過ぎてて会話も成り立たないんだ……」
「マジでか!」
「ディア…そう…マジなだんよ…本当に…、そうだ…オマエも一応は女なんだし…、コリーヌの思考回路がどうなってるか?とか分からないか?」
「え?アノノ事ハ、私にも理解できないよ」等と話をしていたら、ヴォルカン王子が「オマエ等!私を無視するな!」と、会話に入ろうとしてきた。

「チュテレール!オマエは私の見方では無かったのか⁉」
「「「……」」」
王子の言葉に私達は絶句した。オマエ、まだ居たのか…的な感じで……。
そう言えばアンジュの方は如何したのであろうか?怒り狂っててウザったいから、黙ってスライムシングに対処を任せて以降、反応が無く成っている気がする。振り返って確認したら、何処から簾っぽい材料を持って来たのか?アンジュは簀巻きされ、少し離れた高い所にぶら下げられていた。王子よ、恋人が酷い目に遭っているぞ?良いのか?と言いたい所ではあるが、目先の事しか見ていなさそうなヴォルカン王子は、味方だと思ったチュテレールが裏切った!と主張するばかりで気付いていなさそうだ。って、あれ?ヴォルカン王子て、これ程までに了見と視野が狭い駄目な人間やったっけ?と思っていたら、私達も少しばかり視野が狭く成っていたらしい。何時の間にか卒業式の準備が整い。学園長でもある国王陛下までもが何か言いた気にこちらを見ていた。

 そうだ。忘れていたけど、今日はファレーズが属する学年の卒業式の日。ここは、その会場。そして、気付けば、その卒業式の時間と成っていた訳である。
私は焦り、スライムシングにヴォルカン王子もアンジュと一緒に簀巻きにして吊るすように言った訳では無いが、取り敢えず「対処したって」と指示を出し、ファレーズを卒業生の列へ送り出し、チュテレールと一緒に在校生の列へと退散する。

 だが…、しかし……。私の行動は遅過ぎた御様子。私達は名指しされ、卒業式終了後に校長室へ来るように言われる事と成った。
オーブ王女がクスクス笑いながら私に付き添ってくれると言うので心強いが、シングが吊るしたヴォルカン王子とアンジュが先に国王と話せる立ち位置にありそうで、ちょっと心配である。アンちゃんが先に有る事無い事、王様に吹き込むんとちゃうかな?ヴォルカン王子は国王の御気に入りの王妃様の御子様やし、あっちの言い分が通ったら、美味しゅうないし。さて、どうしよ?私、今、断罪される確率って、めっさ高ない?卒業式中、私はそんな事ばかりを考えていた。
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