吉原柄の法被と銀狐

mitokami

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01 吉原と、とある出来事

005 飼い主に会って…

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 若い衆には、色々な種類が存在する。妓楼の入り口の台に座る[見張り]、呼び込みをする[牛太郎]、見世を仕切る[番頭]、客の履き物を預かり下駄箱に入れ下足札を管理する[下足番]、2階を采配する[廻し方]と言う者達。引手茶屋や常連客を揚屋まで迎えに行く、花魁道中で先頭を歩く[金棒引き]、花魁に傘を差す[傘差し]、花魁に肩を貸す[肩貸し]等の見目の良い男衆。その他、下働きの者もいるが、アキノさんが属するのは、その綺麗な見た目にも拘わらず。護衛、用心棒的な役割に…、支払金不足で遊興費を取り立てる為、客と一緒に客の家まで付いて行く[付け馬]をする部門……。捕らえる為の捕手術、逃がさぬ為に雛形を用い捕縄術ほじょうじゅつまで習い、日々の鍛錬も欠かせない、実用的な筋肉を御持ちの部署だ。
その為に、私を追いかけ回した男は面白いくらい簡単に縛り上げられ、証拠品と目撃者と共に連れて行かれてしまった。めでたし…めでたし……。
但し、私が投げた三度笠は、取りに戻ったけど行方不明。何時の間にか、何処かの誰かの元へ嫁に行ってしまったらしい。残念無念。

 私は日光に当たり、ヒリヒリする頬や首筋の紅い皮膚に触れ、溜息を吐く。走り回った為に背中全体に広がる紅い肌の方にも痛みを感じる。収穫した柳の枝の束も何処かに落としてしまっているし(今日は、丹塗りするにも乾かす場所が空いてないから、大人しく帰って、畳んだままの布団の上ででも寝ようかな?)と思ったのだけど…、数人の若い衆を引き連れた[我が主]楼主の嫁[アカネ様]と出会でくわしてしまった……。簡単に挨拶して「さようなら」とは、成らないだろう。日本髪が良く似合う綺麗な御顔の茜様は優雅に微笑み「ニシキちゃん♪こっちおいでぇ~さw」と、私に御声掛けしてくれた。

 茜様は私が刃物を持った男から走って逃げているのを見掛けて、アキノさんを派遣してくれたらしく。「走り回って疲れたやろ?秋之丞が後の事は始末するさかい。御茶屋さん行って、団子でも食べようやw」と言う。勿論、そこに拒否権は無い。決定事項だ。アキノさんの同僚が無言で私の逃げ道を地味に塞いでくれる。私は作り笑いを浮かべ「御供させて頂きます。」と言うしか無かった。

 路地から出て、お歯黒ドブの河岸の道から離れ、楼閣立ち並ぶ道と木戸門を通り抜けると、大門から一本道の大通りに出る。木戸門を出たその場所は、引手茶屋が立ち並ぶ[仲之町]…、茜様が私を連れて行ったのは…、茶屋は茶屋でも裏路地にある地元の茶葉売る茶屋でも無ければ、甘味処でも無い…、吉原遊びの相談案内所である引手茶屋だった……。(ホント、勘弁して欲しい…、ここって、茶を飲む所じゃねぇ~だろ……。私に何をさせる積もりだ?)

 私が不安半分で茜様に連れられ引手茶屋に入ると、雇い人達は一瞬、私を凝視したモノの、店主の躾がシッカリしているらしくササッと動いて道を開け、奥から茶屋の主人が顔を出した。この訪問は、事前に予定されていたのかもしれない。と言う事は、私が連れて来られるのは織込み済みで、私を河岸まで捜しに来た可能性が一番高い。今回、丁度、刃物を持った奴に追い掛けられていたから[運が良かった]ってヤツかもしれないが…、それすらも、何かの布石の可能性が無きにしも非ず……。茜様は物事を先読みし、起こる事を知っていて放置。発生して、危なくなってから助ける種類の[恩着せ]な罠を張る一癖も二癖もある人種なのだ。

 そんな茜様は、茶屋に入り茶屋の店主と目が合うと「この子は、ウチがこぉ~とる錦鯉や、ニシキちゃんって呼んだってなw」と私の事を紹介し「傾奇者かぶきものが好みそうな、[めでたい]色合いやろ?」と言った。(御茶に誘っといて、速攻で私を売り飛ばす気かよ…)
因みに、この[傾奇者]とは、[歌舞伎役者]の事では無いし、型破りな偉い人の事でも無い。勿論、大門で追い返される…徒党を組んで飲み代を踏み倒し、因縁を吹っ掛け金を巻き上げるヤツでもない……。金持ちのボンボン、又はドラ息子と呼ばれる。金蔓な御客様の事である。

 引手茶屋の店主は、御茶と甘いタレの付いた団子を茜様に対してだけ配膳させ、勿論、私や茜様に付き従う若い衆には、何も出す事無く、私を物色するかのごとくに見ていた。
茜様は、そんな様子を見てクスクス笑い「ニシキちゃんはやまい持ちでは無いけど、その内、破傷風には成るかもしれんやww花としては売るんはアカンけど、衣装を整えて、傷に塗る軟膏と食べるモンも与えるんなら、通い猫させたげるよ。ニシキちゃんは御ユメちゃん仕込みの芸達者さんやしねw」と言った。
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