吉原柄の法被と銀狐

mitokami

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03 吉原柄の法被と銀狐

014 整った舞台の上…

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・・・時代は・・・
 月代さかやきを剃らずに前髪を後ろに撫で付けて髪を後頭部で引き結ぶ総髪そうはつ…、髪を後頭部の高い位置で結ぶ慈姑くわい頭…、女性の場合はどっちも総髪そうがみと呼ばれる髪型……。つまり、所謂いわゆるポニーテールが室町時代以来、一般や武士にも再流行していた江戸時代。

・・・地域は・・・
 御上の取締で召捕られた身売り女の流刑の地。
吉原送りに成った女は競りに掛けられ奴女郎やっこじょろう。夫の罪で家族にも刑罰が連座し、やっこの刑に処され、身元引受人が見付からず引き取られて来た女…、その他、前借金渡し年季奉公名目で売られて来た女の牢獄……。
牢屋敷等に設けられた揚屋あがりや。直接、娼家に行く事がはばかられる貴人や上流の客の為に生まれた揚屋あげや。新吉原遊郭に置かれた商業と住宅だけの区画、揚屋が一件も無い揚屋あげや町。この同じ字面じづらのネーミングは、この時代の洒落しゃれっ気が成せる技か?将又はたまた皮肉ひにくを込めた風刺ふうしなのか?な、吉原遊郭。

・・・物語の主人公は・・・
 色を総て墨染めの黒に統一した腹掛けと股引、地下足袋が標準装備。時に羽織る、我が主から支給される背中に見世の紋が入った吉原柄の法被。頬、首、上半身へと広がる紅い肌。真っ白な髪を後頭部の高い位置で結んだ、狐の尻尾の様な総髪そうがみ姿の私は、そんな吉原にて何時の間にか[銀狐ギンコ]と呼ばれる様に成っていた。
他にも、見世の一番の上客[ソウセイ様]からは[銀狐ギンギツネ]、我が主と私の寄親である[秋之丞あきのじょう]や同じ見世の者達からは[ニシキ]と呼ばれる事もある。


 そして、私を[ニシキちゃん]と呼ぶ、娼家の内儀、妓楼のオーナーの妻である若々しく美しい我が主[アカネ様]は、陰で夜叉やしゃやら何やら本当に色々な意味を込め[荼枳尼ダキニ天]と呼ばれていた。

 その茜様がプロデュースする花魁道中には…、[白狐]と呼ばれる肌も髪も真っ白で、赤い目をした白地の着物を纏う美少女[赤目アカメ]と、白目以外が真っ黒な[玄狐]と呼ばれる黒地の着物を着た美少年[黒兵衞クロベエ]と言う2人の御囃子おはやし…、私の他にも白い者、黒い者、見目珍しい者、見目の良い者達が集められた金棒引きと手古舞てこまい…、信仰すれば崇める人を祝福するが、崇めない者に災いや不幸を齎す金毛九尾狐と称され、[金狐きんこ様]と呼ばれる金髪碧眼の花魁……。昼見世の[物の怪もののけ道中]、夜見世の[百鬼夜行]、夏限定[狐の嫁入り行列]等々、花魁道中自体にも、他の見世の道中とは違って色々な呼び名を持ち。色々な感情を込めて見られ、嬉々として話され噂され、時に忌避されながらも存在を博して愛されて、見る人に寄っては「気味が悪い」と嫌われ、一部の信者から羨望せんぼうの眼差しを向けられている。

 御陰で、花魁道中の間に観客達の喧嘩が起きやすく…、露払い先導をするのがメインの筈の手古舞である私も…、寄親の秋之アキノにいさんに杖術を習わずに居れず……。毎日、早朝に訓練に参加させられ、今では立派な花魁の警護要員。
茜様と金狐様の気紛れに付き合わされるのが通常業務。見世の内風呂に飽きれば吉原遊郭内にある銭湯へ。近所の店だけでは飽き足らず、他の遊郭内の通りや揚屋町の店にも遊びに出掛ける事多々。
4歳から実の父親から仕込まれた職人としての仕事を利用し、12歳から始めた情報収集の仕事に有益な、血縁の兄[春男]や、その友人[孝造]との職人業の繋がりを保つ為の仕事中にも、呼び出しを食らうレベルだ。

 そんな感じで…見世の外に出て一番多く吉原遊郭内を歩き回っている私は…、必然的に色々な話を耳にして…、昔よりもっと上手になった不自然の無い作り笑顔で感情を隠し、情報を集めて茜様に届け…、他の[狐]と呼ばれる者達と共に茜様の命を受けて噂を歪曲させ、何食わぬ顔で都合の良い噂を流し…、茜様の指示で、知り合った人材を駒の様に動かして、間接的に他の見世や店の売り上げを左右し…、偶発的に見せ掛けた必然的に発生する事案を武力を持って解決……。
私は茜様の正義に従い暗躍していた。
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