吉原柄の法被と銀狐

mitokami

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03 吉原柄の法被と銀狐

015 芽吹いたのは…

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 茜様の正義は、茜様に取っての正義であり、総ての者に取っての正義では無い。
私の唯一無二、私の名を呼び、子供だった私を子供扱いしてくれていたユメ姐さんは…、私が実の親との縁を兄に手伝って貰って父親に内緒で密かに切り、寄親と縁を結んだ時…、警告し、正義を見誤らない様に忠告してくれていた……。私は、特に「嘘は、あきまへんえ」と言うユメ姐さんの言葉に従い。嘘では無く、真実の総てを語らない私を私の中で育て…、嘘を吐かないから、嘘を取り繕う嘘の必要が無い…、嘘では無い理由を述べるに尽き…、言葉遊びでたばかり、罠に掛ける事に特化した茜様のと成った……。

 そんなとある日、茜様のスポンサー[ソウセイ様]が何時も揚屋での酒の席で、天保8年1837に起きた合戦の話を話題にし「名も無き誰かが上知令に反発する者を焚付けたら面白いと思わないか?」と、同意を求める。
現実問題、今まで管理していない代わりの土地を与える代わりに、大名や旗本達が歴代引き継いできた領地を返却させ、幕府直轄領として管理する法令を素直に受け入れられる大名や旗本は存在しない。今、大名や旗本を焚付ければ、最悪、戦乱への突入。少なくとも何人かは物理的に死に、何人かは社会的に殺され処分される者も出る事が避けられない現実があったが、茜様は笑顔で「ソウセイ様の望むまんまにしたげるわ」と答え、参勤交代で江戸に来て[記念に…]又は[観光で…]と吉原へ足を踏み入れた者に対して、気持ちや感情に火付けをする指示を出した。

 今回、ソウセイ様は[偶発的・・・に、誰かが先導する事も無く・・・・・・・・・・・、幕府に対する反発を大きくする事]が御望みの御様子だ。そして、茜様は[主導権を親や家臣に奪われ続ける将軍様贔屓びいき]だから、時の将軍様に飛び火が行かぬ様にする事を望むだろう。はてさて、もしもの時、誰を火付けのにえにするのが良いだろうか?
私は結果的に、奴の刑で吉原遊郭に贄にした家の者が流れてくる事を考えもせず。茜様の正義に従い仕事をした。他の茜様直下の部下達も、殆どの者がそうだったであろう。

 繋いできた血筋や一族の誇りに語りかけたら、燻る怒りが燃え上がり…、最初の内、上知令に対する反発をして目立った家系が処分され…、夫が上知令に対する反発した罪で妻が…その娘が刑罰を受け…、ほぼ全員が吉原に流れ着き、私達の駒に成って、幕府に対する反発を煽る役割を買って出てくれた……。
続いて、主導権を古株の家臣に奪われている将軍様が[上知令を良く思っていない]と言う噂を流し、将軍様に味方を作る作戦を実行して、将軍様が上知令に対する猛烈な反発を受けて撤回させる道筋を付ける。それが叶った時は、撤回に反発した家系が処分された。
結果的に天保の改革が失敗した事に寄る処分の為にも、幾つかの家系が処分され…、家系が処分される度に、吉原には、武家出の娘達が質流れ品と同じく流れて来て…、女の一夜を買いに来る男達を喜ばせ、売り上げ順位を乱高下させたのは言うまでも無い……。

 武家の妻だった女達や、若くない娘達は、楼主の味見が先か?年季明けの元遊女[遣手]達の教育で性根を叩き潰されるのが先か?で、仕付けられて最高でも小見世スタート。
年若い娘達は見目や器量、「買いたい」と言う申し出に寄って見世か?小見世か?切見世か?にランク分けされる。花魁を一度でも経験出来る者も居れば…、見世や小見世の廻し部屋に振り分けられる者も存在した。そして、買い手が付かない者達は、吉原送りされた身売り女と同じ奴女郎やっこじょろうとして切見世送りにされる。
 武家出の女達は、心が擦切れるまで、吉原に染まるまで流行はやり。それ以降は、器量や売りがある者のみしか生き残れず。人気を得られず売れなかった者達や…客が途切れ、日々の生活費が出せなく成った女達は…、段々と降格し、売値が下げられ…、最後に切見世で使い潰されて…、血族婚に寄る体の弱さ、大事に育てられ過ぎたツケを払うかの如く、短期間で心も体も壊し、自害するか?折檻で死ぬか?病を患い死んで逝った……。

 この結果の筋目を立て、発端と成る種を蒔いた私達は、責任を持って静かに見守り続ける。私達は彼女等と似て非なる境遇に寄り、自らを売ったか?誰かに売り飛ばされたか?で、茜様に運良く飼われる事に至った。彼女等の境遇に何かを思う所があっても、その責任を取らないなら、何もしないのがルール。
私は、そのルールを破った者の末路を横目に、御歯黒ドブ沿いの道を黙って通り過ぎた。
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