二人で転生を繰り返して辿り着いた先が…

mitokami

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1 零情報でアイツ捜し

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 それにしても、物心ついてから何年間、俺はアイツを捜し続けてきた事だろうか?ホント、マジで最長記録だと思う。今までの前世でアイツを発見した範囲はすでに捜し尽くしていた。なのに、今世でのアイツが、見付からないのは、どう言う事だろう?

 手掛かりは何時いつも通り、ランダムに残された俺の前世の記憶の中に在るはずだ。現時点で一番、色濃く残っている記憶のアイツは、あおいと言う名の俺の従妹じゅうまい従兄妹いとこであったみどりと言う名前の女子高生。

 特に印象いんしょうに強く残っているアイツ、みどりの発言は・・・「マジで仕事で上司のオッサンに対して姫プレしてやんなきゃとか、誰得だれとくだよ!」
これはたしか、営業職でも無いのに『情報収集に行ってくる』と言い残して、毎回、数時間は確実に行方不明に成っている上司とやらが赴任ふにんして来たと、みどりから聞いてからずっとみどりが言い続けていた言葉だったと思う。

 その人生に置いて、アイツは人間に対して好き嫌いが激しかった。

 因みに上司をそんな目で見るみどりいわく、その上司は…「シフトとか外部の人に教えちゃ駄目だめって事も知らねぇ~のか、仕事で使うID関連の情報ふくめて、テナントやテナントが利用する業者全員が使う通路にり出しやがるし…、マジで個人情報保護法が迷子な御話なんやけど、個人の収入に関する情報を去年の出勤実働実績までえて、誰でも閲覧えつらん出来る様に、出勤すると必ず新しく更新して印刷してさらしやがるんよ!おかしない?」の上…、店舗に勤める正社員の中で一番年上で「自分には上の人間と繋がりがあるんだ」と「年功序列を知らないんですか?!」と、やる事、なす事、横暴おうぼうきわめ、自分より上司である店長・管理職の言う事も無視して、やらかしている事を会社からとがめられる事すら無いらしい…、そんな事をやっている中間の役職の者が本当に存在していたら…、会社的に駄目だめだろう…と、俺も思うが…、そこはみどり大袈裟おおげさに言っているだけだと思いたい……。

 そう言えば、その駄目上司とのエピソードは他にもあって、購買層こうばいそうを考えない時間割のパンの見切りの御話ってのもあった。
そもそも主婦は、梯子酒はしござけの様に、店を梯子して食料品の買い物をする事はあっても、日に何度も同じ店へと買い物に出掛けるなんて事は無いと言うのが基本設定だ。定価のパンが売れなくなるからと見切りをしぶるのは間違っている。賞味期限を気にして定価商品を買って下さる御客様と、見切りパンを進んで買ってくださる御客様は必ず同じ御客様と言うわけでは無いからだ。見切りに寄る損失そんしつと、廃棄はいきに寄る損失を考えれば一目瞭然いちもくりょうぜんだと思うのだが、何故なぜに理解できないのだろう?と、俺すら思った事を思い出す。

 正直、その日の賞味期限の食事パンは、開店からの午前中内に来店して下さる総ての御客様を対象に、昼食として購入貰い売り切ってしまわないと高確率で、もう売れない。例えば、食パン等が分りやすい代表であろうと思われる。日本人…、夕食に食パンを食べる人ってのはレアな存在だ……。つまり、昼食を食べる前の御客様の気持ちを捕まえなければ買ってもらえないだろう。
その日の賞味期限の菓子パンの方だったら…、昼までに半額見切りを入れれば…、3時のオヤツ等の間食としての出番が期待でき、御購入頂ける可能性が高いから、見切り時間に余裕を持って大丈夫なのだろうけど……。と、そのちょっとした戦略ですら理解できない人間には、難しいのだろう。
そうそう、見切りパンの出番を増やすとしたら…、賞味期限の前日の夕方までに見切り、明日の朝食にして貰う以外、他に方法は無いのだが…、そんな提案をした食べ物を粗末そまつにする事を嫌うみどりの言葉は上司に届かず…、大喧嘩したって聞いた事があったな……。

 他にも「上司にる若い女性限定の新人研修の御陰おかげで、若くて可愛かわい後輩こうはいとか直ぐに退職しちゃうしで、やしもやしもあったモノじゃねぇ~よ」とも言っていた。
みどりの話に寄ると『痴漢かも知れない』って御客様に言われて様子を見に行ったら、直ぐ辞めちゃった若くて小柄な学生さんにおおかぶさる様な格好かっこうで、上司とやらが商品をたなへと入れる品出しのやり方を指示していたって事があったらしい。
ちなみに、その指示は間違っており…、古い商品を前の方にならべるのでは無く…、左端ひだりはしに一列に並べると言う…、食品業界では期限切れを誘発ゆうはつするに最適な、期限が無い物でもアウトな悪手あくしゅだったりする……。
正直な話。再度、思う。当時、同じ会社の他店舗で勤ていた俺としては、みどりの話に、大きな誇張こちょうふくまれている事を信じたい。が、ここまででみどりは、とっても真面目で正義感の強い娘だと言う判断が出来た。今世も、そうなのであろう。

 そして、俺はあおいとしての自分の記憶を探りながら次第に眉をひそめる。

「その割にはオマエ、御気に入りのネカマ多くないか?ネットゲームで美少女キャラ使ってるオッサン相手に御姫様プレイして遊んでるだろ?」
「は?そりゃ別モノだろ?そもそもネトゲで姫プレしてたら、姫がネカマだったって落ちは、有り寄りの有りじゃね?、ネカマは理想の姫を演じてくれるから中の人がオッサンでも、知らなきゃ姫は需要じゅよう高きやし要員やろ?後、私的には姫がオッサンでも、それはそれで萌えれる」
「マジでか…(コイツ、本当に心底腐ってやがる)…」
むしろ、ネット上の会話だけで、そこら辺のオッサンや見ず知らずの兄さんが、出会った事の無い相手に純愛で、結果的にオッサン相手で恋に落ちてるとか…たぎるわ…、純粋に精神的プラトニックに男が男に恋しちゃうとか、素敵すてきが過ぎるくない?」
「付き合いに嘘偽うそいつわりがある時点で、ハッピーエンドが見えないけどな…(腐の末期患者かな?)…」
「そこは、私の創作活動のかてにして、物語の中だけでも幸せにしてあげるべきでしょ?」
「それこそ、誰得だよ!ん?あっ…もしかして、その為に、オマエは何時いつもも男キャラ使ってるのか?」
「見守り隊は、(萌えを求めて)時にネカマのそばで、ネカマにも気付かれない様にモブを演じているモノなのさw」
「見守るのかよ…(騙されてるぞって教えてやれよ…)…」
「当たり前だろ?御陰で気付かずネカマに恋しちゃってるヤローをログで見掛けるたびに『私達に対する御褒美ごほうびですか?』って幾度いくども画面の前でつぶやき、書き込しそうに成った事だろうかw」
「…さよか…」

 俺は頭を抱え、今世のアイツが100%腐女子、又は腐男子と言った種属だと言う事と…、今までの前世と違い、今回の前の前世に置いて…、死ぬ順番が違っていたかもしれないと言う事を突然、急に思い出した……。

 屈託くったくの無い笑顔から急に切り替わるみどりの表情、朱より赤みの強い真朱色に染まるみどりが着ている制服、みどりの背後から姿を現したニヤケ顔のオッサン、手には血を滴らせた包丁、漂い広がり始める濃い血の臭い、床にも広がり続ける赤が俺の前世の記憶を支配し始める。

 そうだ、前世のあおいとしての俺は「年功序列も知らないのか?告げ口して邪魔するな!上司は私だ!!役職は関係ない!アナタ達は上司の言葉だけに黙って従っていれば良いんだ!」と言ってみどりを襲い、包丁で刺し続ける人物、みどりが「仕えない上司」と呼んでいた駄目上司であるオッサンからみどりを取り返そうとして、先に刺し殺されたのだ。

 狂った様に「あおい」と繰り返すみどりの声…、一瞬いっしゅん沈黙ちんもく…、どよめきと歓声かんせい…、おもしが退けられつかの間、軽くなる体……。最期に見たのは「駄目だ!!私を置いて行くな!」とさけみどりの顔だった様な気がする……。
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