5 / 15
1 零情報でアイツ捜し
005
しおりを挟む
俺は唐突に声を上げて笑い出す。「あぁ~アレも、この世界に転生して来てるのか…」自分が思うよりもずっと冷たい声が自分から発せられていた。
それより何より…、今までずっと、アイツは転生する度に俺より年下だったけど…、今回は若しかしたら、年上なのかも知れない可能性が出て来た…、捜す人間の年齢の範囲を変更して、一度探した場所をも、もう一度、年上も視野に入れて捜してみようと思う……。
決意を新たにした今日、今も出会う前に失ってしまうかも知れないと言う不安はあるが、まだ、失ってしまったと言う喪失感は無い気がする。鏡の前で俺は、きっとまだアイツは(この世界で)生きていると言う期待を胸に、この世界特有なのだろう妙に整った顔立ちと矢鱈と綺麗な出で立ちを鏡に映し見ながら、国王でもある父親譲りの緩くウエーブが掛かっている金髪と俺の名前の語源でもあるサファイアの様な碧眼、周囲から母親譲りだと言われている容姿を生かした変装に取り掛かる。この時ばかりは、亡くなった今世の母寄りの女顔と、王命で伸ばさせられている長い髪に感謝だ。それらはとても吟遊詩人を語れる変装に今日も役立っている。
「…サフィール、君はリュートを抱えて何処へ行くつもりですか?」
「…カ…カルセドニー兄さん?!何時から…」
それは、ローブのフードを目深に被った時の事だった。
第二王子カルセドニーは父親譲りの青い目を細め怪訝そうな顔で周囲を見渡し、他国から嫁いで来た母親譲りのサラッサラのプラチナブロンドで俺より長いストレートヘアな毛先を靡かせ「その下の派手な服装で化粧をし始めたくらいの時からですよ」と俺の所まで歩いて来る。
どうやら、薄暗い酒場や街灯の下で歌う為の目鼻立ちを強調するメイク作業に気を取られ、周囲への警戒を疎かにしてしまっていたらしい。
「それにしても、不用心な離宮ですね…、警備兵は何所で何をしているんですか?」
無論、後ろ盾無しで嫁入りした元後宮勤めの女騎士な元平民が生んだ子に媚びへつらう人間は少なく…、王の現役な妃達の不興を買うのが怖くて、成り手も無く…、ここ数年は担当者不在な状況が続いているのが現実なのだが…、どうやら、この兄上様は知らなかった御様子……。
そう言えば、カルセドニー兄さんと会話をしたのとか、俺から声を掛ける用事も無かったしで数年振りに成るかも知れない。カルセドニー兄さんの方から俺に声を掛けてきたのも久し振りだな…、きっと兄さんは、今まで俺に興味が無かったのだろう……。
俺は取り敢えず、前世で得たのであろう[営業スマイル]と言うスキルを発動させ、それと連動するスキル[錯乱戦法]と[陽動作戦]の効果を利用して「俺が、これから行く場所に興味はありませんか?」と、カルセドニー兄さんを城下まで連れ出す事に成功した。
連れ出した理由は単純明快。俺が住む後宮に、警備兵だけで無く使用人すら存在しない事を気付かれたくなかったからだ。
何せ、俺の一つ前の前世は小市民…、服の脱ぎ着や風呂にトイレを御世話されるとか無理…、家の中で他人がウロウロしてるとか有り得ない……。オマケに、自分が住んでいる後宮に警備兵や使用人を置くと、成人済みの俺は自分で管理する義務が発生してしまうから面倒。
そもそも、営業スマイルで錯乱・陽動したスライムが、後宮の美化と、悪意を持って侵入する者から俺や家財を守ってくれているので、自分が住む後宮に人間を置く必要性を感じていない。例え、後宮内に話し相手と成る者が存在しなくても、孤独を感じる事が無いし、俺が住む後宮が[オバケ屋敷]と呼ばれていようとも気に成らない。
風呂に入って寝る事と着替える事、汚れた物を生活魔法で綺麗にする事くらいしかしない場所に、人間を置くつもりは無いんだよね。ボッチ大好き!ボッチ生活こそ嗜好!側に誰かを…と言うなら…、アイツ以外は欲しくない……。
それはそうと、カルセドニー兄さんは、何用で俺が住む後宮に入って来て、俺に話し掛けたのだろうか?
混乱と言う状態異常のスライムが、食料と思い込んで捕獲行動に出なかった事から、兄さんに悪意が無かったのは明白だ。嫌味を言いに…とか、嫌がらせをしに来た…とか言う訳では無いのだろう……。
俺は「着てみたけど、思ったのと違ったから」と言う言訳をし、少し上等な物に着替え、軽く化粧をし直し、今後の事も考えた上で、営業先の中で治安が一番の良い地域の比較的高級な酒場へとカルセドニー兄さんを案内する事にしたのだった。
それより何より…、今までずっと、アイツは転生する度に俺より年下だったけど…、今回は若しかしたら、年上なのかも知れない可能性が出て来た…、捜す人間の年齢の範囲を変更して、一度探した場所をも、もう一度、年上も視野に入れて捜してみようと思う……。
決意を新たにした今日、今も出会う前に失ってしまうかも知れないと言う不安はあるが、まだ、失ってしまったと言う喪失感は無い気がする。鏡の前で俺は、きっとまだアイツは(この世界で)生きていると言う期待を胸に、この世界特有なのだろう妙に整った顔立ちと矢鱈と綺麗な出で立ちを鏡に映し見ながら、国王でもある父親譲りの緩くウエーブが掛かっている金髪と俺の名前の語源でもあるサファイアの様な碧眼、周囲から母親譲りだと言われている容姿を生かした変装に取り掛かる。この時ばかりは、亡くなった今世の母寄りの女顔と、王命で伸ばさせられている長い髪に感謝だ。それらはとても吟遊詩人を語れる変装に今日も役立っている。
「…サフィール、君はリュートを抱えて何処へ行くつもりですか?」
「…カ…カルセドニー兄さん?!何時から…」
それは、ローブのフードを目深に被った時の事だった。
第二王子カルセドニーは父親譲りの青い目を細め怪訝そうな顔で周囲を見渡し、他国から嫁いで来た母親譲りのサラッサラのプラチナブロンドで俺より長いストレートヘアな毛先を靡かせ「その下の派手な服装で化粧をし始めたくらいの時からですよ」と俺の所まで歩いて来る。
どうやら、薄暗い酒場や街灯の下で歌う為の目鼻立ちを強調するメイク作業に気を取られ、周囲への警戒を疎かにしてしまっていたらしい。
「それにしても、不用心な離宮ですね…、警備兵は何所で何をしているんですか?」
無論、後ろ盾無しで嫁入りした元後宮勤めの女騎士な元平民が生んだ子に媚びへつらう人間は少なく…、王の現役な妃達の不興を買うのが怖くて、成り手も無く…、ここ数年は担当者不在な状況が続いているのが現実なのだが…、どうやら、この兄上様は知らなかった御様子……。
そう言えば、カルセドニー兄さんと会話をしたのとか、俺から声を掛ける用事も無かったしで数年振りに成るかも知れない。カルセドニー兄さんの方から俺に声を掛けてきたのも久し振りだな…、きっと兄さんは、今まで俺に興味が無かったのだろう……。
俺は取り敢えず、前世で得たのであろう[営業スマイル]と言うスキルを発動させ、それと連動するスキル[錯乱戦法]と[陽動作戦]の効果を利用して「俺が、これから行く場所に興味はありませんか?」と、カルセドニー兄さんを城下まで連れ出す事に成功した。
連れ出した理由は単純明快。俺が住む後宮に、警備兵だけで無く使用人すら存在しない事を気付かれたくなかったからだ。
何せ、俺の一つ前の前世は小市民…、服の脱ぎ着や風呂にトイレを御世話されるとか無理…、家の中で他人がウロウロしてるとか有り得ない……。オマケに、自分が住んでいる後宮に警備兵や使用人を置くと、成人済みの俺は自分で管理する義務が発生してしまうから面倒。
そもそも、営業スマイルで錯乱・陽動したスライムが、後宮の美化と、悪意を持って侵入する者から俺や家財を守ってくれているので、自分が住む後宮に人間を置く必要性を感じていない。例え、後宮内に話し相手と成る者が存在しなくても、孤独を感じる事が無いし、俺が住む後宮が[オバケ屋敷]と呼ばれていようとも気に成らない。
風呂に入って寝る事と着替える事、汚れた物を生活魔法で綺麗にする事くらいしかしない場所に、人間を置くつもりは無いんだよね。ボッチ大好き!ボッチ生活こそ嗜好!側に誰かを…と言うなら…、アイツ以外は欲しくない……。
それはそうと、カルセドニー兄さんは、何用で俺が住む後宮に入って来て、俺に話し掛けたのだろうか?
混乱と言う状態異常のスライムが、食料と思い込んで捕獲行動に出なかった事から、兄さんに悪意が無かったのは明白だ。嫌味を言いに…とか、嫌がらせをしに来た…とか言う訳では無いのだろう……。
俺は「着てみたけど、思ったのと違ったから」と言う言訳をし、少し上等な物に着替え、軽く化粧をし直し、今後の事も考えた上で、営業先の中で治安が一番の良い地域の比較的高級な酒場へとカルセドニー兄さんを案内する事にしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる