二人で転生を繰り返して辿り着いた先が…

mitokami

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1 零情報でアイツ捜し

006

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 所謂いわゆる、公然の秘密。王家の者と王族の側近の者しか知らない設定の緊急脱出用の隠し通路。実は、一部分を城で働くメイド達と共有していて各所で使う消耗品や日常頻繁ひんぱんに使う掃除道具を置いておく場所とかもあるぞwな、御客様や城で普通に働く貴族とかは知らないかもねwと言う隠し通路を利用し、俺とカルセドニー兄さんは城下へと出掛けた。

 ちなみに、出掛けるにさいし…、兄にはローブ着せてフードを目深まぶかに被っててもらうだけで良いだろう(本音:俺よりも更に綺麗きれいな顔は変装させようがねぇ~な…城下でからまれるのも面倒めんどうだ、かくしちまえ)と思って俺のフード付きのローブの予備を貸し出したのだが…、兄さんは俺が変装しているのを指摘してきし、如何どうしても自分もしたいと言い出し…、更に俺にその変装を手伝えと言うので…、空気読めよ!的な腹立たしさと、少しばかりの好奇心こうきしん出来心できごころでカルセドニー兄さんを女装風味に仕上げた訳だが…、俺ってばヤッテハイケナイ事をしてしまったかもしれない……。一応男物の服装なのに美女にしか見えない。

 そう言えば、この世界にも傾城傾国けいせいけいこく的な意味を持つ言葉があった気がする。
とある世界では、キリスト系の宗教しゅうきょうが男色を毛嫌いするから、絶世の美女を指す言葉として途中とちゅうで伝え変えられたみたいだけど、俺が何処どこかしらかの前世で見た事ある傾城傾国は宦官かんがん、つまり男だったと記憶している。今の格好(女装系)のカルセドニー兄さんなら、傾城傾国、その美貌びぼうで国を傾けられんじゃね?でも、まぁ~いっかwってな感じで…、カルセドニー兄さんを連れて行った…高級な酒場……。

 うん、今は従業員から店主まで魅了されてて雰囲気的にはOKなんだろうけど、きっと密かに、すっげ~店に迷惑めいわく掛けてるね!一部の従業員が、今後も使い物にならなく成ったっぽい。悪い事をしてしまった。と、少し反省しなければいけない案件だ。

 店に入るなり、色々な場所から何でか感嘆かんたんの声が上がり、案内役のウエイターがほほを染めて動かなくなった。声を上げた客やウエイターの視線の先を追うと店に入ったからか?フードを脱いだカルセドニー兄さんの綺麗な顔があった。(兄よ?何故なぜにフードを脱いだし!)近くを通り掛かったウエイトレスも、頬を染めて動かなくなった。(問答無用で、どっちも魅了みりょうしちまうのかよ…)俺よりも顔面偏差値の御高いカルセドニー兄さんは、存在自体が別格らしく、魅了スキルを所持していないのにもかかわらず、明らかに見た者を魅了してしまっている。(素面しらふで魅了された者は、しばらく仕事が手に付かなく成ったやも知れないなぁ~…)

 店内の不穏な空気を感じ、店の奥から出て来た用心棒ようじんぼうらしき男達も、色々な魔法やスキル対策をしているであろう店主にまで、手を合わせおがまれる俺の兄っていったい何者?この場に居合わせた者達全員から酒やツマミをみつがられるて、どう言う事だ?(しかして、女装顔のカルセドニー兄さんに寄る魅惑みわく的な仕草や表情は、魔法やスキルでは無いから、魅了系対策アイテムが効果を発揮できないって事か?)

 俺は天をあおぎ、きっと俺の所為せいじゃ無いはず!多分だけどwと今を逃避とうひし、静かに、こう言う日もあるさと受け入れ…、「ありがとう」と何の抵抗もなく貢がれ、幼少期に初めて出会った頃の様に俺を「サフィー」と呼びながら微笑びしょうを浮かべて、貰った物をうれしそうに選別し…俺に下げ渡すカルセドニー兄さんから受け取ったさかずきを…俺は苦笑いしてからあおる……。(って…、え?これって城でも口にする事の少ない希少きしょうな種類の上級ワインでは?)

 そして俺は思い出す。カルセドニー兄さんの母君の母国は、初代国王がワイン通で、ワインの為にエルフの姫君をめとってさかえたワイン大国。エルフ感のある耳を持っていなくても、その血には見目麗みめうるわしく酒好きなエルフの血が流れていて、目視もくし嗅覚きゅうかくでワインのしを判断し、その御眼鏡にかなわなかった酒は「ありがとうございます、そうだ、アナタも一緒に飲んで下さい」と貢いできた相手を籠絡ろうらくしながら飲ませ「このワインも良いですが、私はC共和国やM共和国産、カベルネ・ソーヴィニヨン種の赤や白も飲んでみたいですねぇ~」と金の無さそうな者には安いが旨いワインをリクエスト、有り余る程に持っていそうなのには希少種の御高いワインをリクエストしていた。(これはか?か?それとも、本気で腹黒いのだろうか?)

 何は兎も角、俺ってば、御忍びを教えてはイケナイ人種に御忍びの楽しさを教えてしまったのかもしれない。(この所為で我が国が滅びたらどうしよう…)と思い悩むくらい。化粧したカルセドニー兄さんの人心掌握技術じんしんしょうあくぎじゅつはヤバかったのである。
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