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2 掴まらない…
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草高き平原にて、槍を器用に操り優雅に舞い踊る様にも見えた光景。現実では、宝石のエメラルドの様に綺麗なグリーンの瞳をした青年の足下に、命を狩り取られた無数の敵兵の亡骸の山があった気がする。
望まず参加したとある戦場にて、翠玉だった頃のアイツが返り血で髪も衣服も深紅に染め、一際明るい声で「ねぇ、蒼玉兄さんw獲物を狙うなら…[手首・足首・内股・脇・首]の部位だったよねww」と虚ろな瞳で、今にも泣き出しそうな顔をしながらも俺に微笑み掛けて来ていた。
これが、どのくらい古いモノなのか?幾つ前の前世の記憶なのか?判断できないくらい前の記憶だが…、それは…生き急ぐかの如く…、戦場にて先陣を切り敵勢へと突っ込むようになって行った…アイツの生き様……。
「益虫だから」と、蜘蛛をも殺さぬ程に優しかったアイツが、大切にしていた恋人の命を目の前で奪われ変わって行ってしまった様を、目に見える惨状で示した現実。そんな記憶を俺は思い出す。
数日後の事。転生を繰り返す中、俺の恋人と成る人生を歩んだ時のアイツとの記憶も、少しだけ思い出した。棍棒で獲物の首の後ろを殴りつけ木に吊るしてから大きい血管を切り裂いて「下半身不随がベスト、血抜きは心臓が動いてる方が上手くいくんだよねw」とアイツは笑っていた。
多分…あの時は、俺が大怪我をして貧血気味だった時の事だった様な気がする……。確か、血と肉の腸詰めを俺の為に造ってくれていたんだよな、多分。あの転生時のアイツも、食材は勿論、素材も無駄にする事を嫌っていた気がする。
夢現で思い出す前世での色々なアイツとの、多種多様で様々な記憶。今回、今世、思い出した記憶が度々、何とも言えない程に血生臭いのって、今世のアイツが[そう言う環境に居る]と言う事なのでは無かろうか?
俺は何となく、そう思い当たり。海沿いの隣国[コースト]の末の姫[オパル・コースト・コート]の護衛を頻繁に請け負っていると言う[冒険者のエド]がアイツである可能性を日に日に強く、確信を持って思うように成って行った。
但し…、コースト国を活動の拠点とするエドと言う冒険者は…、[コースト]の末姫[オパル姫]以外に…親しい友人が存在する様子も無く…、行き付けの場所も無く…、単独行動が基本の単独成果主義者で…コースト国内の複数のギルドと自由契約をしており…、基本、単発で短いめの期間で終了する仕事しか受けず…、次の行き先を親しく成った者に言って残す旅の冒険者よりも、何処に居るか分らない…見付けられない…足取りすら全くもって掴めない…、普通には連絡が取れない類いの自由な冒険者だと言う事が判明していた……。コースト国のオパル姫は、どうやって、そんなエドと言う自由気儘な冒険者に護衛の仕事を依頼しているのだろうか?微妙に謎が深まる。
そんでもって、ミーヌ国の王族である俺にとって、コースト国は他国。
自国の国家権力も他国では無力で、大っぴらにエドを捜す事も出来なくて、とっても、もどかしい思いをさせられている。
親しい交友関係も無い他国の姫であるオパル姫に、その方法を尋ねる訳にも行かず。父で王でもあるアンブル国王が俺の出国を許可しない事から、日々、俺は憤りを禁じ得ない状況に陥っているのだ。どうせなら、いっその事、我が国で魔物の集団暴走が起こってくれないモノかな?と願ってしまう程に、だ。
勿論、そうそう都合良く…、魔物の集団暴走が発生したりはしないのだけど……鬱……。
母親が自国の貴族で侯爵の位の長男アガット兄さんは次期国王として、三男のジャッド兄さんは国内外へ婿入り先募集の為、顔を売り、武勲を立てる公務として他国へと行く事が許されている。
他国から嫁に来た母親を持つ次男のカルセドニー兄さんは、国内貴族[侯爵家か伯爵家]への婿入り予定ではあるが、母君が商人気質で外交を担っている為、外交系の公務で他国へと行く事を許されている。
俺だけだ。俺だけ、血筋に難有り。母親が他国の元平民で、仮初め貴族。国王の四男と言えど後ろ盾も無い。従う家臣も存在しなければ、地位らしい地位も権限も無い。功績も実績も手絡も、立てる場すら無ければ何も無い。学園と言うモノに在籍させられていた時ですら、血筋社会の弊害と言うモノなのだろう…何かに付けて名を上げる事…上を目指す事は総て…、平民と同様、貴族に邪魔され…阻止されて来た……。結果、俺は今も国を出られず燻る事に成っている。…鬱鬱……。
然も、制約魔術と言うモノの所為で、御忍びで城を抜け出す事は出来ても、俺が城下を囲む城壁の外に出る事は結界とやらが邪魔して出来ないのだ。これは何度か試して実証済み。見えない壁に阻まれ、俺が触れている物ですら弾かれる始末。俺は密かに、とっても広い範囲ではあるが、幽閉されているらしい。…鬱鬱鬱……。
望まず参加したとある戦場にて、翠玉だった頃のアイツが返り血で髪も衣服も深紅に染め、一際明るい声で「ねぇ、蒼玉兄さんw獲物を狙うなら…[手首・足首・内股・脇・首]の部位だったよねww」と虚ろな瞳で、今にも泣き出しそうな顔をしながらも俺に微笑み掛けて来ていた。
これが、どのくらい古いモノなのか?幾つ前の前世の記憶なのか?判断できないくらい前の記憶だが…、それは…生き急ぐかの如く…、戦場にて先陣を切り敵勢へと突っ込むようになって行った…アイツの生き様……。
「益虫だから」と、蜘蛛をも殺さぬ程に優しかったアイツが、大切にしていた恋人の命を目の前で奪われ変わって行ってしまった様を、目に見える惨状で示した現実。そんな記憶を俺は思い出す。
数日後の事。転生を繰り返す中、俺の恋人と成る人生を歩んだ時のアイツとの記憶も、少しだけ思い出した。棍棒で獲物の首の後ろを殴りつけ木に吊るしてから大きい血管を切り裂いて「下半身不随がベスト、血抜きは心臓が動いてる方が上手くいくんだよねw」とアイツは笑っていた。
多分…あの時は、俺が大怪我をして貧血気味だった時の事だった様な気がする……。確か、血と肉の腸詰めを俺の為に造ってくれていたんだよな、多分。あの転生時のアイツも、食材は勿論、素材も無駄にする事を嫌っていた気がする。
夢現で思い出す前世での色々なアイツとの、多種多様で様々な記憶。今回、今世、思い出した記憶が度々、何とも言えない程に血生臭いのって、今世のアイツが[そう言う環境に居る]と言う事なのでは無かろうか?
俺は何となく、そう思い当たり。海沿いの隣国[コースト]の末の姫[オパル・コースト・コート]の護衛を頻繁に請け負っていると言う[冒険者のエド]がアイツである可能性を日に日に強く、確信を持って思うように成って行った。
但し…、コースト国を活動の拠点とするエドと言う冒険者は…、[コースト]の末姫[オパル姫]以外に…親しい友人が存在する様子も無く…、行き付けの場所も無く…、単独行動が基本の単独成果主義者で…コースト国内の複数のギルドと自由契約をしており…、基本、単発で短いめの期間で終了する仕事しか受けず…、次の行き先を親しく成った者に言って残す旅の冒険者よりも、何処に居るか分らない…見付けられない…足取りすら全くもって掴めない…、普通には連絡が取れない類いの自由な冒険者だと言う事が判明していた……。コースト国のオパル姫は、どうやって、そんなエドと言う自由気儘な冒険者に護衛の仕事を依頼しているのだろうか?微妙に謎が深まる。
そんでもって、ミーヌ国の王族である俺にとって、コースト国は他国。
自国の国家権力も他国では無力で、大っぴらにエドを捜す事も出来なくて、とっても、もどかしい思いをさせられている。
親しい交友関係も無い他国の姫であるオパル姫に、その方法を尋ねる訳にも行かず。父で王でもあるアンブル国王が俺の出国を許可しない事から、日々、俺は憤りを禁じ得ない状況に陥っているのだ。どうせなら、いっその事、我が国で魔物の集団暴走が起こってくれないモノかな?と願ってしまう程に、だ。
勿論、そうそう都合良く…、魔物の集団暴走が発生したりはしないのだけど……鬱……。
母親が自国の貴族で侯爵の位の長男アガット兄さんは次期国王として、三男のジャッド兄さんは国内外へ婿入り先募集の為、顔を売り、武勲を立てる公務として他国へと行く事が許されている。
他国から嫁に来た母親を持つ次男のカルセドニー兄さんは、国内貴族[侯爵家か伯爵家]への婿入り予定ではあるが、母君が商人気質で外交を担っている為、外交系の公務で他国へと行く事を許されている。
俺だけだ。俺だけ、血筋に難有り。母親が他国の元平民で、仮初め貴族。国王の四男と言えど後ろ盾も無い。従う家臣も存在しなければ、地位らしい地位も権限も無い。功績も実績も手絡も、立てる場すら無ければ何も無い。学園と言うモノに在籍させられていた時ですら、血筋社会の弊害と言うモノなのだろう…何かに付けて名を上げる事…上を目指す事は総て…、平民と同様、貴族に邪魔され…阻止されて来た……。結果、俺は今も国を出られず燻る事に成っている。…鬱鬱……。
然も、制約魔術と言うモノの所為で、御忍びで城を抜け出す事は出来ても、俺が城下を囲む城壁の外に出る事は結界とやらが邪魔して出来ないのだ。これは何度か試して実証済み。見えない壁に阻まれ、俺が触れている物ですら弾かれる始末。俺は密かに、とっても広い範囲ではあるが、幽閉されているらしい。…鬱鬱鬱……。
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