次期君主は山猫を飼い慣らしたいらしい

mitokami

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No03 次期君主は山猫を飼い慣らしたい

016 後悔の日 2

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 シャンマオは自分の心音を感じながら…(今の立場上、仕方なくだったら、どう償えば良いんだろう)と、自分の所為で双子の片割れである兄が宦官にされた経緯を思い出し(あの時、自分から一緒に捕まる事を選んでいれば…)と押し寄せる後悔を携えたまま…覚悟も受け止める器も無いのに…今、不用意に求めてしまった答えが出るのを待っていた……。

 シャンマオを過剰気味に評価するジエンの方は…、シャンマオが、それ相応の覚悟を決めたと勘違いし深く溜息を吐き…、モンファ達を部屋から下がらせ、他より厳重に閉ざされた窓の内開きの一つ目の窓を静かに開き…、続いて部屋の明かりを消して、外開きの窓も音を立てぬ様に開け放つ……。
開け放たれた窓からは、室温より冷たい夜風と女性のモノより少し低い[夜の声]が、時に、詰る様な、苦し気な大きな声も取り混ぜて入ってきた。月明かりの下で、ジエンが「やっぱり、まだ、やっていたか…」と呟き顔を顰める。
普段ならシャンマオにとって夜の声は、妓楼で耳馴染んだモノだったのだが、今日、この時だけは、身の毛もよだつ不快なモノになる。なのに、足は一歩一歩前に出てしまう。見なければ良いのに見えなければ良いのに、山育ちのシャンマオの目は、夜目が利き、遠くを見渡せてしまうのだった。

 体が金縛りに遭ったかの様に一瞬硬直し、シャンマオの胸の中に重く深く後悔が伸し掛かり広がって行く。
中庭を挟んだ今居る屋敷に近い様式の隣の建物…、大きく開け放たれた扉の中…、灯された明かりの下で、片方が抑えきれない歓喜の声を漏らして笑い…もう片方は泣きながら辛そうに堪えきれず喘ぎ声を発していた……。重なり合う2人と、その影は、夜の声が発せられるのと同じタイミングで揺れ動いている。
どちらに対するモノか不明な故意…、[こちら]を見せる様に成された行為に…、妓楼で慣れ、そう言うのを見せ付けられるのが初めてでは無いシャンマオも、眉間に皺を寄せて後退る……。

 ジエンが、そんなシャンマオの様子を見て、焦りを見せた。ジエンが慌てて窓を閉め様とすると…、その行為をその場で間近に眺めていた煙管を吹かす裸の婕妤が[こちら]に気付き…、扉とは別に存在する窓際へと移動して[こちら]に手を振り…、悪意を込め「ねぇ~知ってた?今夜もね、アナタシャンマオに会えた対価を支払っているのよw」と笑って「アナタシャンマオに会いたかったけど、会いたく無かった理由、アナタシャンマオは理解、出来ているのかしら?」と言って婕妤は、シャンマオが知りたくないであろう言葉を続けた……。

 ジエンは瞬時にシャンマオの前に立ちはだかり、紡ぎ出される言葉の毒が吐き出され終わるまで、シャンマオの耳を塞ぐ。
そして、思っていたより酷い事実を知って放心状態になったシャンマオを心配し、ジエンは耳を塞いだ手をずらし、後頭部と首に手を回して一度軽く胸に抱き、微かな震えに気付いて、背中を撫で腰に手を回し、抱き上げてベットへ移動させてから、改めて無体を強いる自分の父親と、強いられている者の姉を睨んで、婕妤が発する甲高い笑い声に嫌悪しながら窓を閉めた。

 窓の外に響く肉体関係による事情、笑い声。その騒音と一緒に月明かりさえも遮り、真っ暗になった静かな室内。慣れた足取りでベットへ向かい。ジエンは堅い上着を脱いで手探りでベットの上のシャンマオに手を伸ばす。
シャンマオは膝を抱えて蹲っていた。休ませる為に手を解こうとして触れた手が冷た過ぎて驚き、ジエンはシャンマオが着る寝間着の袖から手を入れ、腕や背中に直に直接触れて確かめ、少し強引に冷えた体を温める為にシャンマオを布団の中に押し込み、自分も一緒に入って、擦り付ける様に素肌を合わせて温める。

 ある程度、シャンマオの体温が戻ると、ジエンは片手で抱き締めたまま、シャンマオの頭を撫で「ここまで傷付けたり、追い込んだりするつもりは無かった。只、危機感を持って守られて欲しかっただけなのに…」と言い。シャンマオは消え入りそうな声で「あの2人より安全で幸せな場所で生きてきた私が守られてて良いのかが分からない」と言った。
ジエンは溜息を吐き、一変して憤りを隠さず行動し、シャンマオの寝間着の帯を布団の中で解き、そのまま着ている物を脱がす様に柔らかい肌に触れ、硬く残る無数の傷跡を一つ一つを見付ける度に、形を確かめる様にジックリなぞり始める。
古傷に触れられる事を嫌がり、シャンマオが逃げようとすると…ジエンは逃げない様に肩を掴み、布団に押し付け…、時に腕を掴み、撫で…、隙を突いて、この場を離れようとするシャンマオの腰を掴み、引き戻し…、足を掴み…体が反応する傷に対し「痛みが残っているのか?」と言って…、(これから何をするつもりなんだろう)とシャンマオを困惑させた……。
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