スイートティアーズ

おかか🍙

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ハロー・マイラブァー

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いつまでもそうやって私を見てね。
恋してるよっていう目で見てね。


花枝 鞠音
最大のピンチです。

「マリ、まだ俺の事好きになれない?」
5年間告白を遠ざけ続けた幼なじみから、尋問を受けています。

「初めて告白した日から、5年たってる気がするんだけど」

「……」
「何十回も告白したけど、返事を1回も貰えてないような気がするんだけど、」

「きっ、気のせいとかっ?!」

「んなわけあるかい!ボケ」
「あー!もううるさいな!悠!」
「おい!まり!まて」
べーっだ!

だってしょうがないじゃん。
怖いんだもん。

高校生になって、周りが皆付き合い初めて、
幸せそうだなって思ってたら、皆すぐに別れてそれで終わり。そんなの悠となんて怖すぎる。

「悠ー!帰ろっ」
だけどやっぱり居心地がいいから、困る。

「まり、最近遅くまで帰ってないんだって?おばさん心配してたぞ。」

「…まぁね。」

「まり、なんかあったら言えよ。」
あぁもうほんと、心が透けて見えてるみたい。

「大丈夫だよ。それより自分のこと考えなよ。悠はこんな小さい島似合わないよ、もっともっとたくさんのもの見て、どこいっても悠の絵が見れるくらい大きくなって。悠、絵いっぱい見せてね」

「やだよ。」
そんなこと言う悠が、1回だけ自慢げに見せてくれた絵があったね。笑顔が可愛い女の子の絵。
私あの子が羨ましかった。
「じゃあな、まり、大好きだからな。」
励ますみたいに、そんな大好き聞きたくないよ。

「ただーま。」

「鞠音、最近帰りが遅いんじゃないか?」
「…ごめんなさーい。」
うるせーよ
「パパ、心配してるのよ。」
パパなんて言うな。そんなやつ
「パパは1人しかいない!こんなやつじゃなかった!パパはママに捨てられていいような人じゃなかった。浮気されていいようなみっともない人じゃなかった!ママがパパも、私のことも裏切ったくせに!」

「私そんなつもりじゃ。」
「ママになんてこと言うんだ!」
パシっ!
「こんなやつが母親だって言うんなら!他人の方がよっぽどあたしに優しいよ!」

ごめん。ママ、わかってる。わかってるけど、やっぱりさぁ、パパに申し訳なくて。

「鞠音。さっきはすまなかったね。痛むだろう」
「別に」
「鞠音、体が大きくなって服も小さいだろう。新しい服買ってやるからな。」
こっち見んな。触んな。
気持ち悪い。

ピンポーン
「おばさんーまり迎えに来た」

「鞠音、いつまでも悠くんに迎えに来て貰うんじゃない。年頃なんだから付き合ってるとか言われたらどうするんだ。」

なんだそれ、悠が良くない人みたいに。
「悠ー!いこー」

「今日お前ん家行くわ。おじさんに絵見てもらう。」

「うん。」
だけどね。我慢できるよ。私、悠の幸せのためなら、

「まり、好き、付き合って。」
「ごめん」

「まぁいーわ。いつまでも待てるし。行くべ学校」
私、悠に手を引かれるのが好き。
どこまでだって連れて行ってよ。
いつまでもね。

小さい子供の大きな約束
「いつまでも一緒にいよう」
なんて、もう忘れてしまったかな。

「まり、帰ろう。」
「嫌だよ、悠」
「ママね、新しいパパを連れて来たんだけどね。喜べなくてさぁ、ママが幸せだってわかってるんだけど。なんだか違う家にいるみたいで落ち着かなくてさ」
「まり、大丈夫。俺がいるから。いつまでも一緒にいよう。」
「約束」
変な気分だった。嫌な家に帰るのに、引かれる手が嬉しくて。
幸せだった。

うわ。図書館とか柄じゃない。
「鞠音?」
「ママ。」

(まり?)


「鞠音、どうしてパパと仲良く出来ないの?大きくなった鞠音には、馴染みずらいかもだけど、パパだって頑張ってくれてるじゃない。」
そんな顔させたかったんじゃない。
「ごめんね。ママ、ママが幸せだってわかってるし、悠のためにもあの人がいるのはいいことだってわかってるんだけど。初めて来た日に下着を洗われたり、いちいち悠と会うことに怒ってきたり、成長したねってあの人が選んだ服を着させられるだけで気持ち悪くて家にいたくなくてさ。私にとってはいいパパでもママにとっては幸せじゃなかったって知ってる。仕事で忙しかったママがやっと落ち着いて大好きな本といられる場所に出会えたことも知ってる。でもママの幸せを知る度に、私は?私の幸せはないの?って思って、あの人と笑うママが知らない人に思えて素直に喜んであげれないのが申し訳なくて。ずっと嫌な態度取っちゃってたの。」
ただ、悲しかったの、たまにでいいから昔みたいに本当の家族になりたかったの。

「鞠音、ごめんね。ママ自分のことしか見えてなかったね。」
子供みたいに泣いた。いっぱい。

「よぉ。まり」

「いたの?悠」

「頑張ったな。」
嫌だ。こんな時こんなみっともない姿を見せるのが貴方だなんて
あぁでも、少しくらい甘えたっていいでしょう?

ドンー!
「まり」

「悠、悠」
「まり、言いたいことなんでも言えよ。」

「悠のこと困らせちゃうかもしれないのに。」
「いいよ、別に。なんでも今日あったことでも、未来の話でも、他愛ないことでも」

聞くだけでいいよ。私の我儘叶えなくっていいよ。
「悠、私を置いていかないで、夢に進んでいく大人になってく。私そんなに前ばかり向けない。」
「私、幸せになりたかった。でも、ママの幸せが私辛かった。私の幸せで辛くなる人なんていないかもしれないけど、でももしそれで誰かを傷つけたらって怖くなるの。誰かが傷つく幸せならそんな幸せいらない。」

傷つく誰かが悠だったらっていつも怖くなるの。

「自分の幸せをいらないなんて言うな。自分にそんな悲しいことお前だけは言っちゃダメだ。まり、幸せになれ。」
「他の誰かなんて考えんな。俺のこと好きになれないならそれでもいい。俺の隣じゃなくたっていい。お前が毎日楽しくて、俺の大好きな太陽みたいなその笑顔で笑いながら生きてれば、たまにその笑顔が見れればそれでいいさ。」

違うよ、悠、いつも私を好きって言ってくれる悠に、いつもいつも恥ずかしくってとてもじゃないけど言えなかった。
私本当は、苦手な料理を頑張って卵焼きを焦がしちゃうような、可愛いって言ってもらいたくて、デートの度に新しい服を買っちゃうようなそんな幸せな女の子に、本当はずっと悠の隣でなりたかった。
「私、悠が好き。」
悠がいつか見せてくれたあの笑顔の可愛い女の子になりたかったの。

「まり、本当に、?」
「本当、悠は?」
「遅せぇよバカ。10年だぞ。俺はずっと好きだった、告白だって5年かかってやっと言えたんだ。」
「そんなの好き以外になんもねぇよ。」

どんなに歳を取ったって、おばあちゃんになっても忘れない。今日のこと。生まれて初めて、好きな人と思いが通じあった日。

「おばさん、俺、まりが好きです。10年前からずっと。好きで、この前やっと、付き合えることになりました。僕らの交際を許してください。」

「もちろんいいわよ!ねえ?啓司さん」
「何言ってるんだ!美和子!ダメに決まってるだろう!娘をそんなふうに預けていいのか?!5年も見てきた娘なんだぞ!」

「おじさん。絵のこと感謝してます。でもこれだけは言わせてください。娘が好きになった人を連れてきてそんなことしか言えないやつが、こいつの前で父親なんて名乗んじゃねぇ!5年がなんだ。こっちは10年、毎日欠かさず会いに行って、こいつの親父が出てった日も、あんたがいきなり来た日も、泣いてるまりの隣にいたのは俺だ。どんな日だって笑顔にしてみせる。それがあんたらにできるかよ!」

「悠!いいの。啓司さん、ごめんなさい。私どうしてもあなたをお父さんとかパパって呼べなかった。大切にしてくれてるってわかるけど素直に喜べない。でも感謝もしてます。いつも忙しいママを休ませてくれてありがとう。私はまだパパが恋しい。ママがいつもいなくて寂しかった私を抱きしめてくれたあの暖かい腕の中がやっぱり忘れるなんてできない。それでも数年、十数年先、私が少し大人になって、パパを思い出に出来たら、その時は拙いお父さんって精一杯の言葉を聞いてくれますか?。」

「まりっ」
「もちろんだ。」


「良かったな、おじさんとおばさんに許して貰えて」
「うん。」
「なんだよあんま嬉しくなさそうだな。」

「悠、ごめんね。初めての悠の告白、本当は舞い上がるくらい嬉しかった。私が臆病だっただけ。悠は何度も何度も好きって言ってくれたけど、私が言えたのはこの前のたった1回。怖かったんだ。もし付き合って別れてそしたら、悠の目は私なんて見なくなっちゃうんじゃないかって。もう、その私に恋してるって言う目は他の人に向いちゃうんじゃないかって。思えば思うほど、怖くなって、怖くなればなるほど、悠を好きって気づいた。だから沢山言うよ。」
「悠好き。」

「好き」

「大好き」

「もう、やめろっバカ。」

あなたが1人で夢に進むのも大人になるのも寂しい。だけどそんなに前ばかり見てられないの。
時々でいいからまた後ろを向いて私を待ってくれないかな。そしてその恋してるよっていう目で私を見て。
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