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グッドバイ・マイ・リリー
しおりを挟む宝物なんてどれだけ大切にしてたって、失う時は失っちまう。
俺は、高谷 冬弥
「ふーんそれで、ユリは待つことにしたんだ。白雲のこと。」
「うん。」
こいつは、鈴原 ゆりの 幼なじみ
「あいつ1年以上帰ってこないんだろ?ユリは辛くないのかよ。」
「辛いけど、いいの。」
「お前、幸せじゃねーじゃんね。」
よくねーよ。お前には幸せでいてもらわなきゃ困る。
「ユリ、送る。」
「いいよ隣だし。」
「ばぁか。マンションのエレベーターなんて何あるかわかんないだろ。」
「あんた、本当ユリちゃんに過保護ねェ。一体何があんたをそうしたのかしら。」
何が?そんなのきまってる。
「おい!高谷!お前の母ちゃん、父ちゃんに捨てられたんだろ?ダッセー!」
「お前愛されてないな~」
黙れよ。お前らに何がわかる。
黙っていよう。問題を起こしたら、母さんに迷惑がかかる。
「冬弥くんは愛されてるわよ。」
「あ?なんだよお前!」
ユリ…余計なことすんな。
「冬弥くんのお母さんは毎日早く家を出るのに、冬弥くんのお弁当がなかった日はないわ。お洋服もいつもあなたたちが汚すのに、次着てきた時には綺麗になってる。授業参観も欠かさず来て、それのどこが愛されていないのよ。」
「うるせぇ!女のくせに口答えすんじゃねぇ!」
ドコッ!
「おい!お前!ユリに何…」
「やめて。冬弥くん。お母さんのために頑張ったんでしょ?今怒ったら台無しよ。」
「女のくせにとか、くだらないったらないわね。その女から生まれたのは貴方よ。もう少し節度のある発言をして。」
「クソっ」
「すげーな!ユリ!……ユリ?」
ユリは泣いていた。
「いたぁいよぉ。」
俺のために我慢して、結局泣いてしまう女の子がとても愛おしくて俺は誓った。
(もう二度と泣かせたりなんてしないよ。)
君が二度と泣かなくていいように。
君を助けていこう。
僕の助けに気づかなくたっていいよ。
でも、笑顔だけは絶やさないでよね。
いつの頃だっただろう。
君の瞳に俺が映らなくなったのは。
「冬弥くん、白雲くんってなんでいっつもあんなに悲しそうな目をしてるんだろう。」
あぁ嫌だ。
君を好きだと思う度、君を見つめてしまうから
俺は恋する君を知ってしまう。
「しらね。」
おい、ユリ、こっち向け。
なんでそっちばっか見て、早くこっち見ろ。
何度も何度もそうやって。
その度ユリは向かなかった。
中学生になってユリはさらにモテるようになった。モデルになりたいからだろうか、努力はさらに彼女を可愛くして、「高嶺ちゃん」その名を定着させた。
高嶺ちゃんなんて、他の人が聞けば羨ましがる褒め言葉だ。でも俺は知ってる。
「高嶺ちゃんってみんなが呼ぶけど、もうみんな私の名前なんて忘れちゃったかな。」
名前を呼ばれないその子が悲しんでるって。
「ユリ。帰ろ」
俺だけはいつだって君の名前を好きなだけ呼ぶから。悲しくなったら言ってよ。
「ユリ、白雲のことそんなに好きかよ。」
「うん。大好き。」
「幸せになれないかもしれないのに?」
「それでもいい。白雲くんと過ごした日々がとっても幸せだったからそれだけで十分。」
十分なんて、そんな顔して言うな。
おまえがいつ帰ってくるかも分からないやつを待つ間、そんな可愛いまま、誰にも愛されないなんて、納得行かねぇよ。
「冬弥くん、もう別れよう。」
彼女に振られた。そりゃあそうだ。
ユリに未練タラタラのまま付き合って、続く方がおかしい。
「なんで」
「冬弥くん、私の事好きじゃないじゃん。冬弥くんがこっちむく度にどれだけ嬉しくて仕方なかったか分からないでしょう?!」
……まぁいいや。こういう日もある。
「それは冬弥くんが悪いわよ。」
「知ってる。」
「冬弥くんにだってあるでしょ?そういう経験。」
どういう経験?
それがこっちを向いてくれる瞬間のことを指すなら、俺はわかんない。君はこっちを向かなくなったから。
でもわかることあるよ。
「もぉー馬鹿なんだから何考えてたんだか、知恵熱なんて出して!ユリちゃん来てるわよ!」
たとえばこうやって、辛くて仕方なくて、誰かにそばにいて欲しい時、それが君だったらって考えたりするんだ。それで伸ばした手を掴まれたりしたらさ、きっと一生好きでいちゃうと思うんだ。
「冬弥くん!大丈夫?!」
手、掴むなバカ。
「冬弥くん、私ね幸せよ。いつもそばにいてくれて辛い時には励ましてくれて、私の名前を読んでくれて、そんな幼馴染がずっといるから。きっとまだ、私が気づかない助けを沢山してくれたんでしょう?でももう大丈夫。私はもう泣かないわ。弱音も吐かない。今度はあなたが幸せになるの。」
大丈夫なんて、そんな悲しいこというなよ。
俺の大切な宝物だぞ。
君なしで、幸せになんて無茶、言ってくれる。
「ユリ!あんまはしゃぐなよ!」
「無理よ!白雲くんが帰ってくるのよ!」
「全く」
ユリ、君が好きだ。
丁寧な言葉使いも、長い髪も、俺の名前を呼ぶ声も、全部。
白雲、俺の宝物はお前にくれてやる。
生涯大切にしろよ。壊したり傷つけたら許さないからな。涙なんて流したら、そん時は飛んでいく。
「白雲!ユリ!良かったな!」
そういった言葉の裏、本当は悲しかった。
ユリ、幸せな君は知らなくていい。
俺の恋情も、俺の諦められなかった恋の話も何もかも、俺は墓場まで持ってくよ。
「高谷。お前、鈴原のこと好きなんだろ。」
「好きじゃないよ。そんなんじゃない。」
そんな軽い気持ちじゃないから。
「お前な。まぁいーわ。」
だれのとなりだっていいよ。
だけと絶対、泣かないで。笑っていて、俺の隣じゃなくてもずっと。
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