スイートティアーズ

おかか🍙

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ハロー・ディア・リリー

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僕は昔から将来の夢なんて書けたことがない。
でもただ一つ強いて望むのなら、誰かの温もりに包まれて見たい。


白雲 庵
僕は最近困っていることがある。
「何見てんの?庵」
「別に?」
「おー。霞ヶ丘の高嶺の花、鈴原 ゆりの通称高嶺ちゃん。そしてなんと言ってもあの!超有名モデル鈴原 雪子の娘!まさか女遊びの王者庵が、あんな真面目ちゃんに興味があるとはね。」

「ちげーよ。」
そう、違うのだ。
僕は昔から女の子にモテモテのモテ男くん。
わざわざ高嶺ちゃんなんて、狙わなくても女の子には困らないのさ。
だけどある日を境に高嶺ちゃんが夢に出てくるようになった。

「ねえ、白雲くん、何に悩んでるの?」
たっ高嶺ちゃん?
なんで抱きしめられてるの?
「なんでも話して見て?少しは軽くなるかもよ。」
てゆか、なんで君そんなに男慰めるの慣れてるの?
あれ、でもちょっといいかも、
「って良くないやい!」

(全くなんなんだ。君は)
「うわ、また見てるよ高嶺ちゃんのこと、お前なんか接点あったんだ。」
「小中高って同じなんだよね。地味に、昔から高嶺ちゃんだったよな、高谷」
「あー、まあ。」
たったったった。
「おい、高嶺ちゃんこっち来るぞお前まさか手ぇ」
「出してねぇよ!」

「白雲くん」
「なっなに?」
「白雲くんだけよ。」
「え」
(もしかして告は)
「将来の夢の作文出てないの」
(あー。そういう事ね)
「いいんだー僕夢なんてないからさ」
「じゃあ一緒に書きましょう。今日放課後待ってるわ。あ!高谷くん、陽子さんが卵買ってきてって。」
「わかった。」
「高谷?!おまっどういう」
「家が隣で幼なじみ。」
「へー」

「ねぇなんのつもり?鈴原、夢なんてないって、」
「ほんとに?何かしたい事とか、ないの?」
「夢なんて見るだけ無駄、どうせ叶わないし」
「そうやって諦めたことは、他の誰かが叶えて行ってしまうのよ。私は白雲くんが夢を叶えるところを見たい。」
簡単に言ってくれるよ高嶺ちゃん。
そんな君が僕は苦手なんだ。


「ただいまぁ。」

「あなた!庵のこと考えてあげて」
「あんな遊び歩いてるような奴、生きる価値なんてない。」
僕は不幸なんだぞ、子供の命すらなんとも思わない親の元肩身のせまーい思いをしてるんだ。
「庵どうしてちゃんとしてくれないのよ。」

あぁお願い、高嶺ちゃん。今夜も会いに来て苦しむ僕を抱きしめて。

「ねぇー!庵ー今日も放課後遊べないの?」
「そーそー、まだ作文できてないんだぁー」
「エミはーネイリストって書いたよ」
「エーミ!雅也が呼んでるー」
「じゃね!庵」

「おい、庵、なんかあったかよ。」
「高谷、俺ぇ、昔、高嶺ちゃんと話したことあるんだよ。」

両親は自分のことで喧嘩ばかり、嫌になって逃げ出した。
(あー。寒)
「どうしたの?同じクラスの白雲くん」
「あ、高嶺じゃん」
「そう呼ばれてるのね私、どうして?」
「君が僕らとは次元の違う可愛さを持っていて、頭がいいからだよ。」
だから構うな僕のことなんか、
「ねぇ白雲くん、私の夢はファッションモデルになることよ。笑っちゃうでしょ?こんなに地味なのに、私お母さんみたいになりたいの。」
やめろ、夢なんてそんなもの僕にはないんだから。
「白雲くんの夢は何?白雲くんオシャレだからデザイナーなんて素敵ね、絵も上手だから画家さんもいいわ。」
やめろ。 やめろ
「?白雲くん?」
パシっ!
「やめろって!」

「あ。」

「ごめんね。余計なことばっか喋って、白雲くん気をつけて帰ってね。」



「不思議な気持ちだった。僕が叩いて頬から血を出しちゃったのに、謝られるなんてそれからなんでか苦しい時とか高嶺ちゃんが夢に出てくるんだよなー」

「あいつ。優しーのな。」
うん?優しい?ただ嫌われただけだろ

「人を傷つけた記憶ってのは否が応でも残るってもんだ。それでお前が苦しくなっちまう人間だって、あいつは知ってたんだな。」

高嶺ちゃん。僕は君に謝らなければいけない。

「ただいまぁ」
「庵!こんな遅くまで1人で出歩かないでって言ってるでしょ?!あなたに何かあったら私っ。」
「……ごめん」

「ちょっと!庵!お願いだから、お母さんを困らせないで、」

辞めてよ、母さん。

「白雲くん、辛いですね。大丈夫。私がいますから。」
鈴原、君に会いたかった。夢の中の優しい君に慰めらてもらいたい。

「白雲くん、今日は買い物に行きましょうか、」

「買い物?」

「付き合って貰えませんか?買い物」

「…いいけど」

「なんで今日買い物誘ったの?」
「私、辛いことがあると、こうやって買い物したくなるんです。白雲くん、何かありました?」

それだよ。高嶺ちゃん。僕は君のその優しさに胸焼けする。
「あったよ、すごい辛い。だからさ、鈴原抱きしめて。」
気の迷いなんかじゃないよ。僕はね辛いことや悲しいことがあると意地でも君に抱きしめて欲しくて、あの夢を見たくなる。
ギュッ
「何があったんですか?」
いつも苦手だって嘘ついて、その度に感じたことがある。
僕は君が好きだ。
「僕は、心臓の病気なんだ。1年以内にアメリカに行って手術を受けて、心臓を移植しないと死ぬんだって。でも僕こんなだからさ。父親に見放されてて生きる価値なんてないって言われちゃった。」

「ねぇ鈴原、僕の夢はね、デザイナーになることなんだ。小学生の頃、病気で生きられないって知って諦めてしまった夢を鈴原に当てられて、叩いてごめんね。あともうひとつ驚かせてしまうかもなんだけど、僕は君が好きだ。小学生のあの時から、目が離せなくて、好きになった。ごめんね。」

未来なんてない様な男に告白なんてされて君は可哀想な子だよ。

「白雲くんのことそんなふうに言わないで。私はなんとも思ってない人のために傘を置いていったり、課題の居残りを手伝ったりするようなそんな優しい子じゃない。友達と笑いあった後にその光景を焼き付けるような目がずっと気になってた。どうしてそんな目をするのかって。自分のことこんななんて言わないで?そんな白雲くんだから私は好きになったのに。」
僕を好きだなんて言うな。君はしあわせになれないのに。

できるなら、もっと君と居たかった、放課後の教室から下校する生徒を眺めながらたわいない会話をしたかった。君の喜ぶ顔が見たかった。1度でもいい話がしたい、手を繋いで、一緒に街を歩きたかった。君の瞳を通してこの憎らしく輝く街を少しでも愛しく思えるように、僕のこと忘れたっていいよ。ただ僕は君のこの温度だけは忘れたりなんて絶対しないよ。

「白雲くん私これから用事があるから帰るね。」

僕には本当は夢があった。デザイナーじゃなくて、あの頃できた夢、初恋のあの子と一緒にいたいっていう夢。 それが少しだけかなった気がするよ。

「…」
「庵、遅かったな」
「父さん…」
「私はお前を誤解していた。済まない」
「なんだよいきなり。死ねばいいって思ってんだろ。」

「いままでお前にとっていた態度をさっきある女の子に叱られてしまった。恥ずかしいよ全く。自分の子に死んで欲しいなんて思うはずがなかったんだ。済まない」

「女の子?。」
「ああ。長い髪でとても容姿の整った子だったよ。名前をなんと言ったか」
「鈴原  ゆりの……?」

「ああ。そうだ。そんな名前だった。」
「父さん…その子なんて言ってた?」

馬鹿だよ、高嶺ちゃん。こんなやつのどこがいいんだ。
「「私は小学生の頃からずっと白雲くんのことが好きでした。彼はいつも楽しい光景を焼き付けるような名残惜しいような目でこの街を見ていました。私は彼が書いたたった1枚の作文が忘れられません。裏庭の煉瓦に一つだけ白色が混ざっていること、街の時計台のライトが日に日につかなくなっていること、坂の上のフェンスのバラの種類が違うこと。彼はこんなにも目を凝らして街を見ていました。誰も気づかないことも覚えておきたいからじゃないですか。そんな彼に生きる価値がないなんて私はとても思えません。誰よりもこの場所を大切にしてるのに。」」

あんな小学生のたった1枚の作文、忘れてくれたっていいのに。

「たかねっ……鈴原!」
「白雲くん?」

僕に我儘を言わせて、多分今だけ十分すぎる我儘を。

「鈴原、俺アメリカ行くことになった。手術受ける。ものすごく勝手なんだけど、俺やっぱり君が好きだから待っててくれないかな。」
「もちろん。」
こんな我儘も君は受け入れてしまうんだ。




「もっと目線こっちで、」

 「はい!」

「鈴原ゆりのめっちゃ可愛い!俺アタックしよっかな~」
「あーダメダメ!」

「?」
「あの子結婚してるからさ」
「え?」
「鈴原は前の苗字、今は白雲」
「白雲って!」

「そう。デザイナー白雲 庵、このブランドの社長よ。夫婦でやってんの、なんでも小学生の頃からの幼なじみだって、ほら」

「ゆりの、めっちゃ似合ってる!」
「庵くんが似合うように作ってくれるから」

ゆりの、今でも信じられないよ。高嶺ちゃんだった君が今俺のそばにいるなんて。
でもこれだけは君には秘密、
今も辛い時、悲しい時意地でもあの時の夢を見たくなる。
「あのころ不思議だったのよね、庵くんがなんでか夢に出てきて、大丈夫って慰めてくれるの。」
「まじ?」
「まじ。」
2人で笑い合おうね。
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