やめて、俺を勇者と呼ばないで～元中二病勇者の憂鬱～

⑤弱いので雑魚にも襲われます※

　踏み出した足にぐるりと何かが巻きついて、バランスを崩す。そのまま転ぶかと思ったら両腕に別方向から何かが巻きついた。
　木の枝のような見た目だが、弾力があり、肌を引っ掻くようなトゲがない。それは幸いではあったが、あっという間に体が地面から浮き、持ち上げられる。

「は、はなせっ」

　意思があるのかさえよくわからない植物は、ユウキの体を捕らえているのとは別の枝で、首筋だとか脇だとかを撫で回してくる。くすぐったくて笑いそうになるが、暴れてそこから落とされると痛そうで動けない。
　ユウキと力の差がほとんど無いか、植物の方が上か。どちらにしても触手を振りほどく力のないユウキに勝ち目はなかった。
　だとしたら、スイに助けを求めるしかない。でも、こんな、スイにとっては雑魚でしかない相手に捕まって倒せない勇者ってどうなんだ？　流石に呆れて見捨てられるんじゃないか？
　恐る恐るスイの方を見ると、やはりじっとユウキを見ているだけで、何もしようとしない。
　もしかしたらユウキがやられるのを待っているのか。

「こら、やめろ……そ、そこは」

　細い触手はするすると服の隙間から入り込んでユウキの肌を直接撫でる。くすぐったさが増して笑い出しそうになるのを、せめて声だけでも堂々としていようと頑張ってみるが、難しい。

「あっ……」

　ズボンの中に入り込んだ触手が、下着の上から尻を撫で回す。

「ちょ、ちょっと……やめ」

　さわさわと尻たぶを撫で回したかと思うと、今度は尻穴を優しくつつかれる。これ、囚われてるのが女の子だったらまだ絵になるけど、男がされても誰が喜ぶんだろうか。

「た、助け……」
「勇者様は雑魚にもお優しい」

　スイはじっとそんなユウキの姿を見つめている。もしかしたらユウキが植物を倒すのを待っていたのかもしれないけれど、もちろんユウキにそんな力は無い。
　スイはそれを優しさと考えたのか。
　別の触手がシャツを捲りあげ、腹部が外気に晒される。