4 / 7
④生まれ変わってもずっと
しおりを挟む「……ユキさんってもしかして俺のこと好きなの?」
夢中でケイを抱いて、気がつけば一日が終わっていた。ソファ、風呂、キッチン、玄関。あちこちで愛し合ったせいで掃除するのが大変だったが、ユキは満足していた。この先、家の中のあらゆる場所でケイが行為を思い出せばいい。
今はシーツを替えたばかりのベッドに、パジャマ姿のケイを寝かせ、添い寝している。さすがに体力が尽きたようでぐったりしていた。
「それは今更すぎる質問ですね」
そもそも婚約だってユキが手を回したからだったのに、ケイは気づいていなかったのだろう。小さい頃からずっと、ケイに好かれるためだけに優しく優しく甘やかしていたのに。
「僕はケイ君のことをこんなに愛してるのに。まだ伝わらない? もっと体に教えた方がいいのかな」
「じゅ、十分伝わりました……」
慌てるケイが可愛くて、もっとからかってやりたくなる。
「……俺も、ユキさんが好きだよ」
「本当に?」
ケイの知るユキなんてケイにしか見えない偽物のような存在なのに。ケイにだけ優しくて、それ以外は何もいらない。自分の家族も、ケイの家族も、何も。
ただ穏便に手に入れるために婚約という手段を選んだだけで、それが上手くいかなければケイを誘拐していたかもしれない。あの時のように、ケイを追い詰めていたかもしれない。
「……優しいユキさんが好きだったけど、俺にだけ意地悪なユキさんも好き…………俺だけが知ってるユキさんって感じがするから」
「いじめられるのが好きなんですね、ケイ君は」
「そうじゃなくて!」
怒り出すケイを抱き締めて宥める。いじめられて悦んでいるのは事実のように思えるのだが。
「……どんなユキさんでも好きってことだよ」
「じゃあ、」
「何」
「生まれ変わっても、好きでいてくれる?」
「うん」
幸福だ。
もう、嫌な夢は見ないような気がした。
※※※
啓を目の前で失って、それからの雪は死んだように生きていた。初めて心から愛した人。なのに、拒まれ、目の前で死んだ。
けれど、また啓に会えるような気がしていた。もしもまた会えたら、絶対にこの手を掴んだまま、逃がさない。
「ケイくん、また怖い夢を見たんですね。怖いことは全部忘れましょう」
悪夢に魘されるケイを抱きしめて、そう囁いた。
158
あなたにおすすめの小説
側近候補を外されて覚醒したら旦那ができた話をしよう。
とうや
BL
【6/10最終話です】
「お前を側近候補から外す。良くない噂がたっているし、正直鬱陶しいんだ」
王太子殿下のために10年捧げてきた生活だった。側近候補から外され、公爵家を除籍された。死のうと思った時に思い出したのは、ふわっとした前世の記憶。
あれ?俺ってあいつに尽くして尽くして、自分のための努力ってした事あったっけ?!
自分のために努力して、自分のために生きていく。そう決めたら友達がいっぱいできた。親友もできた。すぐ旦那になったけど。
***********************
ATTENTION
***********************
※オリジンシリーズ、魔王シリーズとは世界線が違います。単発の短い話です。『新居に旦那の幼馴染〜』と多分同じ世界線です。
※朝6時くらいに更新です。
僕の策略は婚約者に通じるか
藍
BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。
フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン
※他サイト投稿済です
※攻視点があります
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
月・木更新
第13回BL大賞エントリーしています。
政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話
藍
BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。
ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。
パン屋の僕の勘違い【完】
おはぎ
BL
パン屋を営むミランは、毎朝、騎士団のためのパンを取りに来る副団長に恋心を抱いていた。だが、自分が空いてにされるはずないと、その気持ちに蓋をする日々。仲良くなった騎士のキトラと祭りに行くことになり、楽しみに出掛けた先で……。
失恋したと思ってたのになぜか失恋相手にプロポーズされた
胡桃めめこ
BL
俺が片思いしていた幼なじみ、セオドアが結婚するらしい。
失恋には新しい恋で解決!有休をとってハッテン場に行ったエレンは、隣に座ったランスロットに酒を飲みながら事情を全て話していた。すると、エレンの片思い相手であり、失恋相手でもあるセオドアがやってきて……?
「俺たち付き合ってたないだろ」
「……本気で言ってるのか?」
不器用すぎてアプローチしても気づかれなかった攻め×叶わない恋を諦めようと他の男抱かれようとした受け
※受けが酔っ払ってるシーンではひらがな表記や子供のような発言をします
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる