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⑯今までのあれはきっと気の迷いみたいなもので
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木曜日。結局あれからずっと焔を避けていたのに、焔の方からは何もアクションがない。それどころか朝は迎えにも来ない。
今までのあれはきっと気の迷いみたいなもので。それを世界は修正してしまったのかもしれない。
だとしたら自分は犯され損ではないか。
「お前ら喧嘩でもしたの?」
会話しないどころか近寄りもしなくなってしまったものだから、鈴木に心配される。
おかしいな、こんな風に鈴木に心配される展開はもっともっと後で。ブラックナイトの正体を知ってしまった焔が甲斐を避けることで起きる話なのに。
シナリオ通りになって喜ばしいことだったはずなのに、どうしてシナリオから外れた行動をしてしまうのだろう。
「――黒川くん、ちょっといい?」
そんな時、星野光が声をかけてきた。
二人で話がしたい、と言われて、放課後に体育館裏に呼び出される。これって告白のシチュエーションでは?
星野光は焔と付き合っているか、そう遠くない未来に付き合うはずなのだから、それはあり得ないのだが。
「黒川くんに聞きたいことがあるの」
「……何を?」
流石、ヒロイン。めちゃくちゃ可愛いな。目も大きいし睫毛長いし。色は透き通るように白い。
「あのね、黒川くんと正岡くんって……付き合ってるの?」
「――はぁ?」
星野は真剣な目でこちらを見ている。からかっているわけではなさそうだ。
「私、そういうのに偏見ないから大丈夫。正岡くんに告白したときに、黒川くんと付き合ってるから駄目って言われて……ホントなのかなって思って。あ、私別に正岡くんのこと好きなわけじゃないの。ちょっと話の都合上告白しなきゃいけなかっただけで」
「ちょっと待って」
甲斐と付き合ってるからって断った? たしかにあの日断ったとは言っていたが、そんな風に言われてるとは思わなかった。
え、好きじゃない?
「月曜日に正岡くんから黒川くんの好きなところはたくさん聞き出したけど、やっぱり黒川くんの視点の話も取材し……聞きたいなって。だって現実にフレブラが見れるなんて思わなくて、しかも同級生なんてそんな……フレイム履修してて良かったわ」
「星野?」
「ヒロインなんて二人を引き裂く最低なポジション呪ったけどこれならバッチコイよ。だって私当て馬でしょ。私のおかげで二人の仲が更に進展するんでしょ。でもやっぱり何が起きたかちょっとくらいは知りたいかなって」
「星野、落ち着け」
「あ、ごめん、ちょっと興奮しちゃって……それで、黒川くんはズバリ正岡くんのどこが好きなの?」
星野の言っていることは理解できないことが多かったが、端々に引っ掛かる単語が出てきた。
フレイム、ヒロイン……
「――星野ももしかして、『炎の戦士フレイム』を知ってるのか?」
「え、黒川くんも知ってるの? あれ、これってどういうこと?」
まさか星野光も転生者だったなんて、この世界はどうなっているんだ。
「――それで、やっぱり47話でブラックナイトの正体を知ってしまうフレイムのあの絶望が切なくて、でも48話で正岡焔が黒川甲斐を避けながらも二人で過ごした日々を思い出してやっぱり戦えないってなるんだけど、49話でブラックナイトが……」
「わかる! あの三話は神回ね! 49話の解釈なんだけど、私としてはやっぱり甲斐も甲斐で焔のことを親友として思っていたと思うの。だからこそフレイムにあんな風に言ったんだと思う。それでフレイムを奮い立たせて自分を倒させたの……フレブラ尊い」
「フレブラって何だ?」
「秘密」
「まあ俺の解釈も星野と同じだな。だから俺も49話になったらああするつもりだし」
「……それはないでしょ。正岡くんがそんなことさせないって」
「そうかな」
お互い転生者なだけでなくフレイムファンと知って意気投合。今まで自分一人で溜め込んでいたフレイムへの思いを吐き出せてとても楽しい。
「星野」
「ん?」
「この世界はフレイムとは違うのかな」
「フレイムに似てるけど、フレイムと同じにならなくてもいいと思う。私もフレイム通りにしないといけないと思って告白なんてしたけど、展開変わっちゃったし。だったら好きにしようと思って黒川くんに声をかけたの」
「そうか」
同じフレイムファンがそう言うのなら。
シナリオから外れてもいいのかもしれない。そう思えた。
今までのあれはきっと気の迷いみたいなもので。それを世界は修正してしまったのかもしれない。
だとしたら自分は犯され損ではないか。
「お前ら喧嘩でもしたの?」
会話しないどころか近寄りもしなくなってしまったものだから、鈴木に心配される。
おかしいな、こんな風に鈴木に心配される展開はもっともっと後で。ブラックナイトの正体を知ってしまった焔が甲斐を避けることで起きる話なのに。
シナリオ通りになって喜ばしいことだったはずなのに、どうしてシナリオから外れた行動をしてしまうのだろう。
「――黒川くん、ちょっといい?」
そんな時、星野光が声をかけてきた。
二人で話がしたい、と言われて、放課後に体育館裏に呼び出される。これって告白のシチュエーションでは?
星野光は焔と付き合っているか、そう遠くない未来に付き合うはずなのだから、それはあり得ないのだが。
「黒川くんに聞きたいことがあるの」
「……何を?」
流石、ヒロイン。めちゃくちゃ可愛いな。目も大きいし睫毛長いし。色は透き通るように白い。
「あのね、黒川くんと正岡くんって……付き合ってるの?」
「――はぁ?」
星野は真剣な目でこちらを見ている。からかっているわけではなさそうだ。
「私、そういうのに偏見ないから大丈夫。正岡くんに告白したときに、黒川くんと付き合ってるから駄目って言われて……ホントなのかなって思って。あ、私別に正岡くんのこと好きなわけじゃないの。ちょっと話の都合上告白しなきゃいけなかっただけで」
「ちょっと待って」
甲斐と付き合ってるからって断った? たしかにあの日断ったとは言っていたが、そんな風に言われてるとは思わなかった。
え、好きじゃない?
「月曜日に正岡くんから黒川くんの好きなところはたくさん聞き出したけど、やっぱり黒川くんの視点の話も取材し……聞きたいなって。だって現実にフレブラが見れるなんて思わなくて、しかも同級生なんてそんな……フレイム履修してて良かったわ」
「星野?」
「ヒロインなんて二人を引き裂く最低なポジション呪ったけどこれならバッチコイよ。だって私当て馬でしょ。私のおかげで二人の仲が更に進展するんでしょ。でもやっぱり何が起きたかちょっとくらいは知りたいかなって」
「星野、落ち着け」
「あ、ごめん、ちょっと興奮しちゃって……それで、黒川くんはズバリ正岡くんのどこが好きなの?」
星野の言っていることは理解できないことが多かったが、端々に引っ掛かる単語が出てきた。
フレイム、ヒロイン……
「――星野ももしかして、『炎の戦士フレイム』を知ってるのか?」
「え、黒川くんも知ってるの? あれ、これってどういうこと?」
まさか星野光も転生者だったなんて、この世界はどうなっているんだ。
「――それで、やっぱり47話でブラックナイトの正体を知ってしまうフレイムのあの絶望が切なくて、でも48話で正岡焔が黒川甲斐を避けながらも二人で過ごした日々を思い出してやっぱり戦えないってなるんだけど、49話でブラックナイトが……」
「わかる! あの三話は神回ね! 49話の解釈なんだけど、私としてはやっぱり甲斐も甲斐で焔のことを親友として思っていたと思うの。だからこそフレイムにあんな風に言ったんだと思う。それでフレイムを奮い立たせて自分を倒させたの……フレブラ尊い」
「フレブラって何だ?」
「秘密」
「まあ俺の解釈も星野と同じだな。だから俺も49話になったらああするつもりだし」
「……それはないでしょ。正岡くんがそんなことさせないって」
「そうかな」
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「星野」
「ん?」
「この世界はフレイムとは違うのかな」
「フレイムに似てるけど、フレイムと同じにならなくてもいいと思う。私もフレイム通りにしないといけないと思って告白なんてしたけど、展開変わっちゃったし。だったら好きにしようと思って黒川くんに声をかけたの」
「そうか」
同じフレイムファンがそう言うのなら。
シナリオから外れてもいいのかもしれない。そう思えた。
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