転生したら悪の組織の幹部だったけど、大好きなヒーローに会えて大満足だった俺の話

多崎リクト

文字の大きさ
19 / 60

焔③甲斐が嫉妬してくれた※

しおりを挟む
 甲斐が嫉妬してくれた。
 焔が星野光といるところを見て、嫉妬してくれたらしい。それが嬉しくて、甲斐が自分を避けるのも好きにさせていた。もちろん逃がすつもりなんてなかったけれど、少しだけなら好きにさせてやってもいいかと思えたから。

 ――でも、これはダメだ。

 甲斐が、自分以外に笑いかける。
 楽しそうに話す。
 そんなこと、耐えられない。

 最近俺には笑いかけてくれないのに。困った顔ばかりしてるのに。

 そんなのズルいと思うだろ?




 金曜日。甲斐は学校を休んだ。風邪だとか。電話で苦しそうな声だったからと心配した担任に、様子を見に行ってやって欲しいと頼まれた。頼まれなくても様子は見るつもりだったけど。

「正岡、黒川と仲直りした?」

 お節介な鈴木が声をかけてくるので、そもそも喧嘩なんてしてないと答えた。

 甲斐のことを気にかけている人間が他にいるというだけでもやもやしてくるが、何とか堪える。
 大丈夫、甲斐は今は俺のことで頭が一杯だから。
 授業は一日上の空で、こんなことなら自分も休むべきだったかもしれないと考える。でも、こうしないと甲斐のお仕置きにならないし。

「ただいま」

 自宅に帰ると真っ直ぐ寝室に向かう。
 室内は焔が出かけた時のまま。ベッドで毛布にくるまっている甲斐がこちらを睨んでいた。

「これ、外せよ」

 甲斐の右足には枷がつけられていて、それがベッドに繋がれている。鎖はそれなりに長く、寝室の隣にあるトイレには入れるように考慮してつけたものだった。

「甲斐、抜いちゃったの?」

 部屋の片隅に捨てられたアナルプラグを拾い上げると、甲斐の肩が震える。

「……抜くに決まってるだろ」
「せっかくこれも博士に作ってもらったのに」

 足がベッドに繋がれている以外、甲斐は比較的自由だった。服は焔に奪われてしまっているが、毛布を巻き付けて裸を隠している。
 せっかくだから甲斐が自分で抜くところも見たかったものだ。恐る恐る触れて、抜くだけなのに気持ちよくなって可愛い声をあげたのかもしれない。

「いいかげん、ここから出せ」

 昨日の夜ここに連れてきてからずっとこれだ。甲斐は帰りたい帰りたいとうるさい。
 焔だって別に甲斐を監禁したいわけじゃない。まあそれなりに監禁はしたいけど、甲斐のためを思って我慢してきた。

「甲斐はいつもやだやだ言うよね。俺には最近笑いかけてもくれない。なのに、星野には笑ってた」

 ベッドに上がり、甲斐の腕を掴む。怯えて逃げようとする体を押さえ付ける。

「プラグが嫌なら俺のを入れるしかないね」

 やだ、と、開きかけた口が閉じられる。甲斐のそこに触れると、閉ざされてはいたが、いくらか柔らかい。手のひらにぶちまけたローションを冷たいままそこに塗りつける。
 冷たい、と文句を言う甲斐の口をキスで塞ぐ。
 甲斐の唇はいつまでも触れていたいほど柔らかい。絡め取った舌が甘い。

「ん、ふぅ……」

 キスの合間に漏れ聞こえる声が色っぽくてたまらない。

「甲斐、好き、甲斐……」

 ほんの少しでもいいから、たとえば暗示にかかるように、甲斐が自分のことを好きになればいいのに。そう焔は思った。
しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

処理中です...