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⑰今日は約束の土曜日
「もうあいつのこと避けるのはやめよう……」
立っているだけで足がガクガクしそうになるのを堪えながら甲斐は呟いた。
木曜日に星野光と楽しくフレイム談義に花を咲かせていた甲斐だったが、突然現れた焔に連れ去られた。そのまま焔の家に監禁され、思い出したくもないようなことが沢山あった。本当に、酷い目に遭ったものだ。
だが今日は約束の土曜日。やっと焔から解放され(そのために払った犠牲については語りたくない)、今はブラックナイトとして仕事ができている。そのまま座り込んでしまいたくなるのを堪えて、頑張って働くことにしている自分を誉めてやりたい。俺はよく頑張っている。甲斐の時に起こったことはブラックナイトには関係ない。だから、頑張るしかない。
焔にされたことを思い出してしまい、フレイムに全力で攻撃を当てにいってしまったりもしたが、まあ、甲斐は悪くないだろう。
「ブラックナイト」
「――ブリザード様」
そうやって一生懸命働いていると現場に何故か上司が現れた。
あれ、今日ってまだブリザード様の登場回じゃなかったよな。上司までもシナリオから外れるのか。
「こんなやつに手こずっているなどお前らしくない……体調でも悪いんじゃないか」
いや、あんたがまだ泳がせろとか鶴見博士をおびきだしたいから倒すなとか色々注文してきたんだろ、と思わなくはなかったが。こう見えてこの上司はなかなか心配性だと知っていたので、本当にブラックナイトの体調を気遣っているということがわかる。
最近あんまり連絡できてなかったからなあ。主に焔のせいで。
心配してくれるのはありがたいのだが、どうもフレイムの視線が怖い。表情が見えないはずなのに、わかる。笑顔で怒ってるに違いない。
「ブラックナイト」
フレイムが、呼ぶ。
手をこちらに伸ばして、
「行くぞ」
え、どこへ?
「――甲斐、行くぞ」
駄目だ。なんで上司の前でそんなに甘い声で呼ぶんだ。怪しいから。おかしいから。
それなのに、名前を呼ばれるともう駄目だった。フレイムの、焔の、甘い声が脳内に響く。駄目だ。この声には逆らえない。思考能力を奪っていく。
気がつけばブラックナイトの右手には固い感触があって。フレイムの手を掴んでいた。
「ブラックナイト、どこへ――」
「ダメダメ、あの二人を邪魔したら、馬に蹴られて死んじゃうよ?」
後には上司と、いつの間に現れたのか、鶴見博士だけが残された。
※※※
ブリザードは自分の前で何が起きたのか理解できずにいた。
部下の様子がおかしいので心配で見に来ただけだったのだが、部下は敵の手を取ってどこかへ消えてしまった。もしかして裏切られたのだろうか?
うちのブラックナイトに限って、裏切るなんてそんなことはしないはずだ。裏切るにしても、せめて最後に別れの挨拶はきちんとしてくれるはず。
訳知り顔の目の前の男がムカつく。こいつは昔からいつもこうだった。どうしてこうなったのかは知りたいが、絶対にこの男にだけは聞きたくない。
「だいたいお前は何でいつも私の邪魔ばかりするんだ」
「んー、何でだろうね」
「死ね」
「相変わらずだねー、氷川は」
この男はさっき、馬に蹴られて死んじゃうと言った。それは恋愛を邪魔するものへ送られる言葉だ。ということは、ブラックナイトとフレイムが、恋仲?
男同士だし敵対しているし。そんなことあるのだろうか。
いずれにせよ、世界征服にはブラックナイトの力が必要だ。それに大事な部下でもある。
だから、なんとか帰ってきてくれるといいのだが。
立っているだけで足がガクガクしそうになるのを堪えながら甲斐は呟いた。
木曜日に星野光と楽しくフレイム談義に花を咲かせていた甲斐だったが、突然現れた焔に連れ去られた。そのまま焔の家に監禁され、思い出したくもないようなことが沢山あった。本当に、酷い目に遭ったものだ。
だが今日は約束の土曜日。やっと焔から解放され(そのために払った犠牲については語りたくない)、今はブラックナイトとして仕事ができている。そのまま座り込んでしまいたくなるのを堪えて、頑張って働くことにしている自分を誉めてやりたい。俺はよく頑張っている。甲斐の時に起こったことはブラックナイトには関係ない。だから、頑張るしかない。
焔にされたことを思い出してしまい、フレイムに全力で攻撃を当てにいってしまったりもしたが、まあ、甲斐は悪くないだろう。
「ブラックナイト」
「――ブリザード様」
そうやって一生懸命働いていると現場に何故か上司が現れた。
あれ、今日ってまだブリザード様の登場回じゃなかったよな。上司までもシナリオから外れるのか。
「こんなやつに手こずっているなどお前らしくない……体調でも悪いんじゃないか」
いや、あんたがまだ泳がせろとか鶴見博士をおびきだしたいから倒すなとか色々注文してきたんだろ、と思わなくはなかったが。こう見えてこの上司はなかなか心配性だと知っていたので、本当にブラックナイトの体調を気遣っているということがわかる。
最近あんまり連絡できてなかったからなあ。主に焔のせいで。
心配してくれるのはありがたいのだが、どうもフレイムの視線が怖い。表情が見えないはずなのに、わかる。笑顔で怒ってるに違いない。
「ブラックナイト」
フレイムが、呼ぶ。
手をこちらに伸ばして、
「行くぞ」
え、どこへ?
「――甲斐、行くぞ」
駄目だ。なんで上司の前でそんなに甘い声で呼ぶんだ。怪しいから。おかしいから。
それなのに、名前を呼ばれるともう駄目だった。フレイムの、焔の、甘い声が脳内に響く。駄目だ。この声には逆らえない。思考能力を奪っていく。
気がつけばブラックナイトの右手には固い感触があって。フレイムの手を掴んでいた。
「ブラックナイト、どこへ――」
「ダメダメ、あの二人を邪魔したら、馬に蹴られて死んじゃうよ?」
後には上司と、いつの間に現れたのか、鶴見博士だけが残された。
※※※
ブリザードは自分の前で何が起きたのか理解できずにいた。
部下の様子がおかしいので心配で見に来ただけだったのだが、部下は敵の手を取ってどこかへ消えてしまった。もしかして裏切られたのだろうか?
うちのブラックナイトに限って、裏切るなんてそんなことはしないはずだ。裏切るにしても、せめて最後に別れの挨拶はきちんとしてくれるはず。
訳知り顔の目の前の男がムカつく。こいつは昔からいつもこうだった。どうしてこうなったのかは知りたいが、絶対にこの男にだけは聞きたくない。
「だいたいお前は何でいつも私の邪魔ばかりするんだ」
「んー、何でだろうね」
「死ね」
「相変わらずだねー、氷川は」
この男はさっき、馬に蹴られて死んじゃうと言った。それは恋愛を邪魔するものへ送られる言葉だ。ということは、ブラックナイトとフレイムが、恋仲?
男同士だし敵対しているし。そんなことあるのだろうか。
いずれにせよ、世界征服にはブラックナイトの力が必要だ。それに大事な部下でもある。
だから、なんとか帰ってきてくれるといいのだが。
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