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あの時断られたって諦められなかっただろうけど
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「ゆうくんがけっこんできたら、りくくんけっこんする?」
思い出す度に頭を抱える。こんなの黒歴史だ。
それでも幼すぎる俺は真剣だったのだ。陸をお嫁さんにする。絶対に。陸はきっとお嫁さんになってくれる。そう信じて疑わなかった。
「悠君の気持ちが変わらなかったらね」
だから、俺は、そう言ってくれたことをずっとずっと覚えている。
自身の拙い告白の言葉の恥ずかしさよりも、ただそう言って陸が約束してくれたことが嬉しくて。
きっと陸にとってはその場しのぎでしかなかったのだろうけど。それでも俺は過去の甘えたな『ゆうくん』を誉めてやりたい。だって約束は約束だから。俺の気持ちをそのままでいてもいいって言ってくれたんだから。
陸は俺が生まれる前から隣の家に住んでいた。年はちょうど十歳離れている。小さい頃からずっと遊んでくれた。俺は陸が大好きで、結婚という言葉を知ったときに一番に陸と結婚したいと思った。
たぶんというか絶対、初恋は陸だったと思う。その後誰かを好きになったことなんてなかった。ずっとずっと、陸だけが好きだった。
陸はいつだって俺のことを優しく蕩けるような目で見守ってくれていた。それが幼い俺には嬉しかったし、そのことに優越感らしきものを抱いていた。陸は高校の同級生より俺を優先させる。直接聞いたわけではないけど、幼い俺にもなんとなくわかった。両親はそれを申し訳なく思っていたようだけど。
大好きな人が自分を優先してくれている。そんなのもっと好きにならないはずがない。俺の初恋が陸なのは、陸に責任がある。
そう思った俺は、陸を独占し続けるために頑張った。小学校の頃まではまだ陸は俺に夢中で、余所見をする暇はなさそうだったが、俺が中学に入ると途端に俺の世界のことを気にし始めた。
俺が陸と遊びたがっても、もっと同年代の子と遊ぶように言われた。それでも駄々をこねてなんとか陸に会った。会えない間は陸におかしな虫がついていないか心配でたまらなかった。陸は俺の婚約者だ。だが、陸がそれを覚えてくれているか、自信がない。
たとえ覚えてくれていても、俺が今も本気で陸のことが好きだなんて思っていない気がする。
そう思うと不安でたまらなかった。陸が仕事で忙しくて会えない時は、陸の両親から様子を聞いた。小さい頃からずっと陸のことをお嫁さんにしたいと言い続けていたおかげで、彼らは俺を応援してくれていたりする。
十八歳になるまでは待った。十八になれば結婚できる。男同士でとか、まだ高校生で、とか。陸の逃げ道はまだたくさんあるだろうけれど。
二人っきりの誕生会で既成事実を作る。そのために下調べはしっかりしてきた。
「悠、おめでとう」
本当は同年代の子に祝って貰いなさいと断られた。友達とか、可愛い女の子だとかに。
友達より陸が大事。それは陸が幼い俺に見せていたもの。
女はすぐ纏わりついてきてうざいだけだ。
昔のように駄々をこねると、仕方ないなと折れてくれる。やっぱり陸は俺のことが好きに違いない。
陸は今年で二十八歳になるというのに大学生くらいに見える。背は俺が中三の時に越した。
ずっと見上げていた陸を見下ろすのは未だに喜びと不思議さを感じる。
「……悠?」
ずっと黙っている俺を、陸が不安そうに見上げてくる。上目遣いでこちらを見られると、色々我慢ができなくなりそうだ。
「陸、俺、欲しいものがあるんだ」
ずっとずっと欲しかったもの。十年以上手に入れたくてたまらなかったもの。俺だけのものにしたかった。
「何だ、もっと早く言えよ」
そうしたらちゃんと欲しいものをプレゼントとして用意したのに、と。陸が口を尖らせる。
可愛くてたまらなくて、そのままキスをした。
「……え」
何をされたかわからずにぽかんとしている陸を、俺のベッドに押し倒す。大好きな陸を俺のベッドに押し倒している。興奮しないはずがない。
「陸が欲しい」
もう一度唇を重ねる。柔らかい。寝ている陸にしたことは何度かあったけど、起きている陸にするのはさっきのが初めてだ。
唇を軽く舐めると、俺の舌を受け入れようと小さく開かれる。眠っている間に散々してきたせいだろうけど、そんなこと知らない陸はビックリしている。
「ん……っ」
小さな隙間から陸の中に入り込む。俺の舌が触れようとすると引っ込んでしまう陸のそれを追いかけて、絡めとる。
眠っている時の従順な陸も可愛いけれど、意識のある陸が戸惑っているのもたまらなく可愛い。
戸惑う陸の舌を堪能していると、陸の体から力が抜けていくのがわかる。
「ん……んんっ」
唇と唇の間から漏れ聞こえる陸の声が、俺を煽る。送り込んだ唾液を飲ませながら、陸のズボンに手を掛ける。
キスに夢中になっている陸はそれに気づいた様子もない。そのまま急所を握り込む。気づいた陸が俺の胸を叩いて暴れるが、軽く刺激して大人しくさせる。
「悠……ダメ、だ」
不安そうにしているくせに、子供を叱るように俺をたしなめる。それが可愛くてもっと苛めたくなってしまう。
ズボンを下ろして、下着を脱がせて、すっかり立ち上がったそこを扱いてやる。陸は俺を止めようとした手を、結局すがるように俺の肩に置いた。
そのまま刺激し続ければ、可愛らしい声をあげて果てた。ぐったりしている陸の額にキスをする。
陸がまだぼうっとしているうちに自分の手をローションで濡らす。わけがわからないうちに事を進めてしまうのが理想だけど、はたしてどうなるだろう。
そっと指を押し当てるとローションのおかげで容易く中に入り込む。とはいえ寝てる間にした悪戯は指一本までだから、俺のちんこが入るまではまだ長い。
「……っ、やだっ」
陸の顔に怯えの色が浮かぶ。
少しだけ可哀想に思えるけど、仕方がない。陸を傷つけたくない。そのためにはちゃんと慣らしてあげないと。
震える手が俺にすがりつくのを、優しく慰めてやる。
「ダメだよ、陸を俺のお嫁さんにするんだから」
涙が溢れる目元にキスをしてやった。
指を中でかき回すといやらしい水音が響く。陸はその音が恥ずかしくてたまらないみたいで、耳を塞いで首を振る。
「陸、陸、すき」
耳を塞ぐ手にキスをするように囁く。
こんなに怯えて可哀想にとは思うけど、だからといってもう戻れない。せめて少しでも安心させられるように、好きと囁いた。
二本目の指を挿入すると、陸の体が恐怖に強張る。中がキツくて動かしにくいので一度抜いてローションを足した。
「あ、…………やだぁ」
やだやだと子供みたいに首を振り続ける陸を、なだめながら。ゆっくりゆっくり慣らしていく。
「――ひっ」
ようやく三本目の指を入れた頃、前立腺の場所を見つけた。
「やっ…………そこ、やだ……っ♡」
気持ち良さそうに甘い声を漏らし、ビクビクと体を震わせる。可愛らしい陸がもっと見たくて、執拗にそこばかり突く。
「あっ♡」
緊張で強張っていた体から、力が抜けていく。痛いぐらいに俺の指を締め付けていたそこが、優しく纏わりついてくる。
※※※
「陸、何考えてるの?」
時間をかけて慣らして、陸のそこは俺の指三本を飲み込んでもまだ余裕なほどになっていた。
だが、さっきから陸がぼうっとしていて、何か他のことでも考えているみたいだった。
「陸、まだ余裕みたいだね」
「あっ……やんっ」
中を大きくかき回す。可愛い声が漏れる。
中を広げるのに夢中になって、いつの間にか前立腺をいじめるのを忘れていたようだ。陸が考え事をするくらい余裕なら、いいよね。
「あんっ……やだ、むりぃっ♡」
ぐぽぐぽとそこがはしたない音を立てて俺の指を飲み込む。気持ち良くてたまらないって顔をするくせに。口ではそうやって嫌がって見せる。
「でも陸は俺のお嫁さんになってくれるって約束したでしょ?」
そう言うと、陸の中がキュンと締まった。
指を中で広げると、ふくみきれなかったローションが溢れ出す。すごく、エッチ。
「あ……っ♡……広げちゃやだぁっ♡……くるしっ♡」
「お嫁さんになるためにはちゃんと慣らさないとダメだよ」
「やだぁっ」
「陸を傷付けたくないから俺だって我慢してるの」
それでもいやいやと首を振る陸。その可愛さが俺を煽っていることを自覚しているのだろうか。
煽られるままに指を激しく出し入れしてやる。そこはズプズプと恥ずかしい音を立てて、興奮する。
ただ、陸はそれだけではイけないようで、陸のちんこははしたなく涎を垂らすばかりだった。意地悪して触れずにいたが、さすがにお尻だけではイけないようだ。
涎を垂らす先端を覗き込み、ふうっと息を吹き掛ける。同時に前立腺を抉るのも忘れない。
「あぁああああっ♡」
可愛らしい悲鳴をあげて、陸が射精する。
挿入していた指が強く締め付けられ、陸の精液がパシャリと俺の顔にかかる。どろっとしたそれも陸の体から出たものだと思うと愛おしい。
「ついちゃった」
「わーっ!」
よっぽど汚れていたのか、先程までの色っぽさを忘れた陸があわてふためく。シーツで俺の顔を拭き取ろうとするが、それ、俺のなんだけど。
人のシーツを使って拭こうとする陸を止める。せっかくえっちな雰囲気だったのに、すぐ保護者みたいな顔に戻ってしまうんだから。
「拭くんじゃなくて、舐めて?」
小さい頃からお願いする時のように言うと、陸は言われるままに俺の顔を舐めてくれる。
「……んっ…………まずっ」
むせそうになりながらも一生懸命俺の顔を綺麗にしようとペロペロ舐めてくれる陸が愛おしい。
しばらくは眺めていたのだけど、もっと可愛い顔が見たくなって、陸の中に入れたままだった指を動かし始める。
「あっ♡」
イッたばかりで萎えていたものがまた硬度を取り戻す。
中をぐりぐり弄ると陸は気持ち良さそうに喘ぐばかりで、俺の顔を舐めることを忘れてしまう。快楽に素直な陸ももちろん可愛いのだけれど、お仕置きも必要だろう。
だから、ちんこの先端をぐりぐりといじめてやった。
「んあっ♡ちんこだめっ♡……またイッちゃうからぁっ♡」
イッたばかりでの刺激がつらいのか、いやいやと首を振る。
「俺の顔まだ陸のがついてるんだけど」
顔についた精液を見せると、陸が慌ててそこを舐める。
「んんっ……んむっ♡」
自分のものなんて不味いだろうに、美味しそうに夢中で舐めている様子がとてもエッチだ。
でも、汚れていない部分まで舐めているような気がする。たぶん気持ち良すぎて考えられないのだろう。
「んっ」
陸の舌が、俺の唇に触れる。
たぶんそういうつもりとかじゃなくて、うっかり触れてしまっただけなんだろうけど。
「いいよ、誓いのキスしようか」
「――んっ」
陸からキスしてきてくれたみたいで嬉しくて、そんなことを言ってしまった。
逃げようとする陸の後頭部に手を回し、キスを深くしていく。
陸の唾液は甘くて、もっと飲みたくてたまらなくなる。ちゅっと舌を吸ってやると、溢れてきた陸の唾液が俺の口内を満たす。甘くて蜜みたいで夢中になる。
「んっ……ふっ……」
陸の舌を捕まえると、陸の方からも舌を絡めてくるようになる。陸はキスが好きみたいで、トロンとした目でこちらを見つめてくるものだから興奮してしまう。
陸の口内はどこも甘くて美味しくて、上顎をなぞった時のビクビクした様子がたまらなく可愛い。
陸の甘い唾液と俺の唾液とが、陸の口内で混ざり合う。そうすると俺の唾液まで甘くなってしまうようだから不思議だ。
甘く満たされたそれを陸が飲み込む。まるで精液を飲み干してもらったみたいな支配欲の満たされ方だと思った。
すっかりキスに夢中になっている陸の腰が揺れている。
無意識なのだろうけど、陸の中に入ったままの俺の指に焦れて、良い所に当たるように腰が動いてしまうらしい。それが可愛くてそのまま指を動かさずにキスを続けていると、前立腺を掠めたのか、ぎゅっと俺の指を締め付けて、舌に軽く歯が当たる。
「陸、すごいえっちだね」
そう言ってやるとようやく自分が何をしていたか気づいたらしい。りんごみたいに真っ赤になった顔。
なのに腰は快楽を求めて揺れ続ける。
「あんっ♡……ゆう…、もっとぉ♡」
俺の指を使って自慰をする陸はたまらなく淫猥で、それなのに恥ずかしそうにしているところがまたエッチだ。
「やだ、ゆぅ……」
気持ち良くてぐずぐずになっているのに、自分では良い所を擦れずに、射精できずにいる可哀想な陸。
助けてとすがり付かれると、助けてあげたくはなるけれど。俺に助けを求めたら食べちゃうだけなんだけど本当にわかってるんだろうか?
「陸を俺のお嫁さんにしてもいい?」
「いいからぁ……」
「いい、じゃないでしょ? 『悠のお嫁さんにして』ってお願いしないとダメだよ」
陸の中から指を抜くと、代わりにちんこで入り口にキスをしてやる。
「あんっ♡」
本当に軽く触れただけなのに、そこが俺のものを飲み込もうと口を開く。
貪欲で、はしたなくて、可愛くて、可哀想な俺のお嫁さん。
ほんの少しだけ先端をめりこませて、すぐに腰を引くと、もう我慢できなくなった陸が叫ぶ。
「悠、ゆうっ……ちんこ入れてっ」
「そうじゃなくて」
「悠のっ……お嫁さんにしてくださいっ…………あぁあああああっ♡」
陸の許可を得ると同時に、貫く。
「……ふっ……んっ♡……あっ♡」
指でじっくり慣らしたおかげか、なんとか全部入れることができた。中が裂けてないか心配だったが、痛そうにしてないから大丈夫だろう。
しばらく動かずに陸の様子を窺う。ふぅふぅと色っぽすぎる呼吸で俺を誘うけど、なんとか耐える。
額に、頬に、唇に。キスをしながら、陸のそこが慣れるのを待つ。
「……陸、俺の、陸……」
陸の中はねっとりと俺のちんこを包み込む。気持ち良くてたまらないし、めちゃくちゃに突きたくなるけど我慢。
代わりに陸をぎゅっと抱き締めると、陸の中がぎゅっと俺のちんこを抱き締め返してきた。
そんな風に締め付けられるともう理性も限界だった。
「陸の中すごく気持ちいい。中に俺の精子注いだら赤ちゃんできちゃうかもね」
「んんっ……赤ちゃん……?」
「赤ちゃんほしい?」
「あっ♡あかちゃ、ほし♡……」
「じゃあいっぱい出してあげるね」
「あっ♡だしてぇ♡」
すっかりとろとろになってしまった陸は自分が何を言っているのかわかっていないのだろう。指でさんざん苛めた前立腺を、今度はちんこで苛めてやる。
「ゆうっ♡ゆうくんっ♡」
懐かしい呼び方。小さい頃はずっとそう呼んでくれていたのに、気がつけば悠と呼ばれるようになっていた。
昔の陸を犯しているみたいな気分になって、興奮する。ずっと、ずっと、こうしたかった。それを許してもらったみたいで。
「陸、俺のこと好き?」
「すきっ♡ゆうくんすきっ♡」
「俺も陸がずっと好きだった」
この好意が俺と違う意味でもいい。ただ俺を許してくれる陸が愛おしい。
好きと言ってくれる度に、気持ちいいところを突いてやる。そうすると快楽に溺れた陸はまた好きと呟く。
「あっ♡あっ♡やんっ♡……赤ちゃんできちゃう♡」
「俺そっくりの赤ちゃん欲しいでしょ?」
「ほしっ……ゆうくんの赤ちゃん♡」
「じゃあ孕んで」
「あっ♡……あっあっ♡――ああああっ♡♡♡」
孕め、と念じながら、一番深いところで果てた。陸の体の内側に、俺のものという印を刻む。
……気持ち良すぎて、バカになりそうだ。
「陸、陸、俺のお嫁さん」
ぐったりしている陸にキスする。
体中が色んなものでベタベタだから、あとで一緒にお風呂に入ろう。
中の精液も、残念だけど掻き出してあげないと。
「一緒に暮らそうね、陸」
「ん……」
陸がまた、よく聞きもせずに適当に返事する。懲りないなあ。あの時もそうして俺の気持ちをそのままにさせていたから、こんな目に遭っているのに。
まあ、あの時断られたって諦められなかっただろうけど。
思い出す度に頭を抱える。こんなの黒歴史だ。
それでも幼すぎる俺は真剣だったのだ。陸をお嫁さんにする。絶対に。陸はきっとお嫁さんになってくれる。そう信じて疑わなかった。
「悠君の気持ちが変わらなかったらね」
だから、俺は、そう言ってくれたことをずっとずっと覚えている。
自身の拙い告白の言葉の恥ずかしさよりも、ただそう言って陸が約束してくれたことが嬉しくて。
きっと陸にとってはその場しのぎでしかなかったのだろうけど。それでも俺は過去の甘えたな『ゆうくん』を誉めてやりたい。だって約束は約束だから。俺の気持ちをそのままでいてもいいって言ってくれたんだから。
陸は俺が生まれる前から隣の家に住んでいた。年はちょうど十歳離れている。小さい頃からずっと遊んでくれた。俺は陸が大好きで、結婚という言葉を知ったときに一番に陸と結婚したいと思った。
たぶんというか絶対、初恋は陸だったと思う。その後誰かを好きになったことなんてなかった。ずっとずっと、陸だけが好きだった。
陸はいつだって俺のことを優しく蕩けるような目で見守ってくれていた。それが幼い俺には嬉しかったし、そのことに優越感らしきものを抱いていた。陸は高校の同級生より俺を優先させる。直接聞いたわけではないけど、幼い俺にもなんとなくわかった。両親はそれを申し訳なく思っていたようだけど。
大好きな人が自分を優先してくれている。そんなのもっと好きにならないはずがない。俺の初恋が陸なのは、陸に責任がある。
そう思った俺は、陸を独占し続けるために頑張った。小学校の頃まではまだ陸は俺に夢中で、余所見をする暇はなさそうだったが、俺が中学に入ると途端に俺の世界のことを気にし始めた。
俺が陸と遊びたがっても、もっと同年代の子と遊ぶように言われた。それでも駄々をこねてなんとか陸に会った。会えない間は陸におかしな虫がついていないか心配でたまらなかった。陸は俺の婚約者だ。だが、陸がそれを覚えてくれているか、自信がない。
たとえ覚えてくれていても、俺が今も本気で陸のことが好きだなんて思っていない気がする。
そう思うと不安でたまらなかった。陸が仕事で忙しくて会えない時は、陸の両親から様子を聞いた。小さい頃からずっと陸のことをお嫁さんにしたいと言い続けていたおかげで、彼らは俺を応援してくれていたりする。
十八歳になるまでは待った。十八になれば結婚できる。男同士でとか、まだ高校生で、とか。陸の逃げ道はまだたくさんあるだろうけれど。
二人っきりの誕生会で既成事実を作る。そのために下調べはしっかりしてきた。
「悠、おめでとう」
本当は同年代の子に祝って貰いなさいと断られた。友達とか、可愛い女の子だとかに。
友達より陸が大事。それは陸が幼い俺に見せていたもの。
女はすぐ纏わりついてきてうざいだけだ。
昔のように駄々をこねると、仕方ないなと折れてくれる。やっぱり陸は俺のことが好きに違いない。
陸は今年で二十八歳になるというのに大学生くらいに見える。背は俺が中三の時に越した。
ずっと見上げていた陸を見下ろすのは未だに喜びと不思議さを感じる。
「……悠?」
ずっと黙っている俺を、陸が不安そうに見上げてくる。上目遣いでこちらを見られると、色々我慢ができなくなりそうだ。
「陸、俺、欲しいものがあるんだ」
ずっとずっと欲しかったもの。十年以上手に入れたくてたまらなかったもの。俺だけのものにしたかった。
「何だ、もっと早く言えよ」
そうしたらちゃんと欲しいものをプレゼントとして用意したのに、と。陸が口を尖らせる。
可愛くてたまらなくて、そのままキスをした。
「……え」
何をされたかわからずにぽかんとしている陸を、俺のベッドに押し倒す。大好きな陸を俺のベッドに押し倒している。興奮しないはずがない。
「陸が欲しい」
もう一度唇を重ねる。柔らかい。寝ている陸にしたことは何度かあったけど、起きている陸にするのはさっきのが初めてだ。
唇を軽く舐めると、俺の舌を受け入れようと小さく開かれる。眠っている間に散々してきたせいだろうけど、そんなこと知らない陸はビックリしている。
「ん……っ」
小さな隙間から陸の中に入り込む。俺の舌が触れようとすると引っ込んでしまう陸のそれを追いかけて、絡めとる。
眠っている時の従順な陸も可愛いけれど、意識のある陸が戸惑っているのもたまらなく可愛い。
戸惑う陸の舌を堪能していると、陸の体から力が抜けていくのがわかる。
「ん……んんっ」
唇と唇の間から漏れ聞こえる陸の声が、俺を煽る。送り込んだ唾液を飲ませながら、陸のズボンに手を掛ける。
キスに夢中になっている陸はそれに気づいた様子もない。そのまま急所を握り込む。気づいた陸が俺の胸を叩いて暴れるが、軽く刺激して大人しくさせる。
「悠……ダメ、だ」
不安そうにしているくせに、子供を叱るように俺をたしなめる。それが可愛くてもっと苛めたくなってしまう。
ズボンを下ろして、下着を脱がせて、すっかり立ち上がったそこを扱いてやる。陸は俺を止めようとした手を、結局すがるように俺の肩に置いた。
そのまま刺激し続ければ、可愛らしい声をあげて果てた。ぐったりしている陸の額にキスをする。
陸がまだぼうっとしているうちに自分の手をローションで濡らす。わけがわからないうちに事を進めてしまうのが理想だけど、はたしてどうなるだろう。
そっと指を押し当てるとローションのおかげで容易く中に入り込む。とはいえ寝てる間にした悪戯は指一本までだから、俺のちんこが入るまではまだ長い。
「……っ、やだっ」
陸の顔に怯えの色が浮かぶ。
少しだけ可哀想に思えるけど、仕方がない。陸を傷つけたくない。そのためにはちゃんと慣らしてあげないと。
震える手が俺にすがりつくのを、優しく慰めてやる。
「ダメだよ、陸を俺のお嫁さんにするんだから」
涙が溢れる目元にキスをしてやった。
指を中でかき回すといやらしい水音が響く。陸はその音が恥ずかしくてたまらないみたいで、耳を塞いで首を振る。
「陸、陸、すき」
耳を塞ぐ手にキスをするように囁く。
こんなに怯えて可哀想にとは思うけど、だからといってもう戻れない。せめて少しでも安心させられるように、好きと囁いた。
二本目の指を挿入すると、陸の体が恐怖に強張る。中がキツくて動かしにくいので一度抜いてローションを足した。
「あ、…………やだぁ」
やだやだと子供みたいに首を振り続ける陸を、なだめながら。ゆっくりゆっくり慣らしていく。
「――ひっ」
ようやく三本目の指を入れた頃、前立腺の場所を見つけた。
「やっ…………そこ、やだ……っ♡」
気持ち良さそうに甘い声を漏らし、ビクビクと体を震わせる。可愛らしい陸がもっと見たくて、執拗にそこばかり突く。
「あっ♡」
緊張で強張っていた体から、力が抜けていく。痛いぐらいに俺の指を締め付けていたそこが、優しく纏わりついてくる。
※※※
「陸、何考えてるの?」
時間をかけて慣らして、陸のそこは俺の指三本を飲み込んでもまだ余裕なほどになっていた。
だが、さっきから陸がぼうっとしていて、何か他のことでも考えているみたいだった。
「陸、まだ余裕みたいだね」
「あっ……やんっ」
中を大きくかき回す。可愛い声が漏れる。
中を広げるのに夢中になって、いつの間にか前立腺をいじめるのを忘れていたようだ。陸が考え事をするくらい余裕なら、いいよね。
「あんっ……やだ、むりぃっ♡」
ぐぽぐぽとそこがはしたない音を立てて俺の指を飲み込む。気持ち良くてたまらないって顔をするくせに。口ではそうやって嫌がって見せる。
「でも陸は俺のお嫁さんになってくれるって約束したでしょ?」
そう言うと、陸の中がキュンと締まった。
指を中で広げると、ふくみきれなかったローションが溢れ出す。すごく、エッチ。
「あ……っ♡……広げちゃやだぁっ♡……くるしっ♡」
「お嫁さんになるためにはちゃんと慣らさないとダメだよ」
「やだぁっ」
「陸を傷付けたくないから俺だって我慢してるの」
それでもいやいやと首を振る陸。その可愛さが俺を煽っていることを自覚しているのだろうか。
煽られるままに指を激しく出し入れしてやる。そこはズプズプと恥ずかしい音を立てて、興奮する。
ただ、陸はそれだけではイけないようで、陸のちんこははしたなく涎を垂らすばかりだった。意地悪して触れずにいたが、さすがにお尻だけではイけないようだ。
涎を垂らす先端を覗き込み、ふうっと息を吹き掛ける。同時に前立腺を抉るのも忘れない。
「あぁああああっ♡」
可愛らしい悲鳴をあげて、陸が射精する。
挿入していた指が強く締め付けられ、陸の精液がパシャリと俺の顔にかかる。どろっとしたそれも陸の体から出たものだと思うと愛おしい。
「ついちゃった」
「わーっ!」
よっぽど汚れていたのか、先程までの色っぽさを忘れた陸があわてふためく。シーツで俺の顔を拭き取ろうとするが、それ、俺のなんだけど。
人のシーツを使って拭こうとする陸を止める。せっかくえっちな雰囲気だったのに、すぐ保護者みたいな顔に戻ってしまうんだから。
「拭くんじゃなくて、舐めて?」
小さい頃からお願いする時のように言うと、陸は言われるままに俺の顔を舐めてくれる。
「……んっ…………まずっ」
むせそうになりながらも一生懸命俺の顔を綺麗にしようとペロペロ舐めてくれる陸が愛おしい。
しばらくは眺めていたのだけど、もっと可愛い顔が見たくなって、陸の中に入れたままだった指を動かし始める。
「あっ♡」
イッたばかりで萎えていたものがまた硬度を取り戻す。
中をぐりぐり弄ると陸は気持ち良さそうに喘ぐばかりで、俺の顔を舐めることを忘れてしまう。快楽に素直な陸ももちろん可愛いのだけれど、お仕置きも必要だろう。
だから、ちんこの先端をぐりぐりといじめてやった。
「んあっ♡ちんこだめっ♡……またイッちゃうからぁっ♡」
イッたばかりでの刺激がつらいのか、いやいやと首を振る。
「俺の顔まだ陸のがついてるんだけど」
顔についた精液を見せると、陸が慌ててそこを舐める。
「んんっ……んむっ♡」
自分のものなんて不味いだろうに、美味しそうに夢中で舐めている様子がとてもエッチだ。
でも、汚れていない部分まで舐めているような気がする。たぶん気持ち良すぎて考えられないのだろう。
「んっ」
陸の舌が、俺の唇に触れる。
たぶんそういうつもりとかじゃなくて、うっかり触れてしまっただけなんだろうけど。
「いいよ、誓いのキスしようか」
「――んっ」
陸からキスしてきてくれたみたいで嬉しくて、そんなことを言ってしまった。
逃げようとする陸の後頭部に手を回し、キスを深くしていく。
陸の唾液は甘くて、もっと飲みたくてたまらなくなる。ちゅっと舌を吸ってやると、溢れてきた陸の唾液が俺の口内を満たす。甘くて蜜みたいで夢中になる。
「んっ……ふっ……」
陸の舌を捕まえると、陸の方からも舌を絡めてくるようになる。陸はキスが好きみたいで、トロンとした目でこちらを見つめてくるものだから興奮してしまう。
陸の口内はどこも甘くて美味しくて、上顎をなぞった時のビクビクした様子がたまらなく可愛い。
陸の甘い唾液と俺の唾液とが、陸の口内で混ざり合う。そうすると俺の唾液まで甘くなってしまうようだから不思議だ。
甘く満たされたそれを陸が飲み込む。まるで精液を飲み干してもらったみたいな支配欲の満たされ方だと思った。
すっかりキスに夢中になっている陸の腰が揺れている。
無意識なのだろうけど、陸の中に入ったままの俺の指に焦れて、良い所に当たるように腰が動いてしまうらしい。それが可愛くてそのまま指を動かさずにキスを続けていると、前立腺を掠めたのか、ぎゅっと俺の指を締め付けて、舌に軽く歯が当たる。
「陸、すごいえっちだね」
そう言ってやるとようやく自分が何をしていたか気づいたらしい。りんごみたいに真っ赤になった顔。
なのに腰は快楽を求めて揺れ続ける。
「あんっ♡……ゆう…、もっとぉ♡」
俺の指を使って自慰をする陸はたまらなく淫猥で、それなのに恥ずかしそうにしているところがまたエッチだ。
「やだ、ゆぅ……」
気持ち良くてぐずぐずになっているのに、自分では良い所を擦れずに、射精できずにいる可哀想な陸。
助けてとすがり付かれると、助けてあげたくはなるけれど。俺に助けを求めたら食べちゃうだけなんだけど本当にわかってるんだろうか?
「陸を俺のお嫁さんにしてもいい?」
「いいからぁ……」
「いい、じゃないでしょ? 『悠のお嫁さんにして』ってお願いしないとダメだよ」
陸の中から指を抜くと、代わりにちんこで入り口にキスをしてやる。
「あんっ♡」
本当に軽く触れただけなのに、そこが俺のものを飲み込もうと口を開く。
貪欲で、はしたなくて、可愛くて、可哀想な俺のお嫁さん。
ほんの少しだけ先端をめりこませて、すぐに腰を引くと、もう我慢できなくなった陸が叫ぶ。
「悠、ゆうっ……ちんこ入れてっ」
「そうじゃなくて」
「悠のっ……お嫁さんにしてくださいっ…………あぁあああああっ♡」
陸の許可を得ると同時に、貫く。
「……ふっ……んっ♡……あっ♡」
指でじっくり慣らしたおかげか、なんとか全部入れることができた。中が裂けてないか心配だったが、痛そうにしてないから大丈夫だろう。
しばらく動かずに陸の様子を窺う。ふぅふぅと色っぽすぎる呼吸で俺を誘うけど、なんとか耐える。
額に、頬に、唇に。キスをしながら、陸のそこが慣れるのを待つ。
「……陸、俺の、陸……」
陸の中はねっとりと俺のちんこを包み込む。気持ち良くてたまらないし、めちゃくちゃに突きたくなるけど我慢。
代わりに陸をぎゅっと抱き締めると、陸の中がぎゅっと俺のちんこを抱き締め返してきた。
そんな風に締め付けられるともう理性も限界だった。
「陸の中すごく気持ちいい。中に俺の精子注いだら赤ちゃんできちゃうかもね」
「んんっ……赤ちゃん……?」
「赤ちゃんほしい?」
「あっ♡あかちゃ、ほし♡……」
「じゃあいっぱい出してあげるね」
「あっ♡だしてぇ♡」
すっかりとろとろになってしまった陸は自分が何を言っているのかわかっていないのだろう。指でさんざん苛めた前立腺を、今度はちんこで苛めてやる。
「ゆうっ♡ゆうくんっ♡」
懐かしい呼び方。小さい頃はずっとそう呼んでくれていたのに、気がつけば悠と呼ばれるようになっていた。
昔の陸を犯しているみたいな気分になって、興奮する。ずっと、ずっと、こうしたかった。それを許してもらったみたいで。
「陸、俺のこと好き?」
「すきっ♡ゆうくんすきっ♡」
「俺も陸がずっと好きだった」
この好意が俺と違う意味でもいい。ただ俺を許してくれる陸が愛おしい。
好きと言ってくれる度に、気持ちいいところを突いてやる。そうすると快楽に溺れた陸はまた好きと呟く。
「あっ♡あっ♡やんっ♡……赤ちゃんできちゃう♡」
「俺そっくりの赤ちゃん欲しいでしょ?」
「ほしっ……ゆうくんの赤ちゃん♡」
「じゃあ孕んで」
「あっ♡……あっあっ♡――ああああっ♡♡♡」
孕め、と念じながら、一番深いところで果てた。陸の体の内側に、俺のものという印を刻む。
……気持ち良すぎて、バカになりそうだ。
「陸、陸、俺のお嫁さん」
ぐったりしている陸にキスする。
体中が色んなものでベタベタだから、あとで一緒にお風呂に入ろう。
中の精液も、残念だけど掻き出してあげないと。
「一緒に暮らそうね、陸」
「ん……」
陸がまた、よく聞きもせずに適当に返事する。懲りないなあ。あの時もそうして俺の気持ちをそのままにさせていたから、こんな目に遭っているのに。
まあ、あの時断られたって諦められなかっただろうけど。
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