「不吉な子」と罵られたので娘を連れて家を出ましたが、どうやら「幸運を呼ぶ子」だったようです。

荒瀬ヤヒロ

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 マリッサは僅かな荷物とキャシーだけをつれて家を出て、四町離れた別の町に向かった。今まで住んでいた町と同じくらいの大きさの町で、働く場所を探すつもりだった。

 両親が早くに亡くなり、他に身内もないマリッサには頼る相手がいない。キャシーのためにも早く仕事を見つけなければと、マリッサは焦りもあって休むことなく動き回った。
 しかし、赤ん坊を抱えた他に身よりのない女ではなかなか雇ってもらえず、マリッサが途方に暮れかけた時、

「あー!」

 胸に抱いていたキャシーが急に身をよじり、マリッサの横を通り過ぎようとした男性の袖を掴んだ。

「あら、キャシー。駄目よ。すいません、子供が」
「いやあ、かまわないよ」

 振り向いた男性はキャシーの顔を覗き込んで朗らかに笑った。

「可愛い子だなぁ。女の子?」
「ええ……」
「そうか。おや?」

 男性がキャシーの額の痣に気づいて目を丸くした。

「変わった形の痣だね。四つ葉のクローバーみたいに見えるなぁ。ははっ、なんだかいいことがありそうだ」

 男性がそう言って笑うと、キャシーもご機嫌でにこにこ笑い出した。



「へぇ。この町に来たばかりなのかい」

 キャシーが何故か男性から離れたがらないので、しばらく一緒に歩かせてもらうことにした。
 尋ねられるままに自分の身の上を話すと、男性は少し考える素振りをしてからこう言った。

「それなら、うちで働かないか?」
「え?」
「小さな商会をやっているんだ。まあ、見ての通りの貧乏人だけどな」

 男性の身なりはお世辞にも立派なものではなかったが、話し方や表情からは優しい雰囲気が伝わってきた。

「男やもめで、二歳の男の子がいるんだよ。お嬢ちゃんと一緒に面倒見てもらえれば助かる」

 男性はちょうど子守を探していたのだと言った。今まで雇っていた乳母に金を持ち逃げされてしまって困っていたらしい。

 マリッサにとっては有り難い申し出だった。男性の子供と一緒にキャシーも見ていていいと言われて、マリッサは一も二もなく頷いた。


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