マヨヒガ

荒瀬ヤヒロ

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五十、

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「つまり俺達は二つになった岩を一つに戻してトハノスメラミコトを復活させるのが本来の使命なんだな。それをやるにはどうすればいいんだ」
「おぬしら二人が二人共トハノスメラミコトをみつければいいのじゃ。幻となってさまよっているあの子をみつけてやることじゃ」

 結局、トハノスメラミコトを探さねばならないことに変わりはないらしい。しかし、里同士の争いは自分には関係ないことがわかって、ときわはうれしかった。かきわと敵対する必要がなくなった。

「それで、トハノスメラミコトっていうのはどんな姿をしているんだい」
「さあのう。幻はその時々で姿を変えるからのう。じゃが、あの子はみつけてほしがっている。もうおぬしらの前に姿を現しているかもしれん」

 かきわはふうんと唸って腕組みしている。ときわは長い話を頭の中で整理してみた。ふと、疑問が湧いてときわは恐る恐る口を開いた。

「あの、聞きたいことがあるんだけど」
「なんじゃ」

 ときわは一瞬迷ってから尋ねた。

「僕達をこの世界に呼んだのがトハノスメラミコトなんだったら、どうして僕みたいなのを選んだのかなって」
「選んだのはトハノスメラミコトではない。おぬしらじゃよ」

 ときわとかきわは顔を見合わせた。

「この世界がおぬしらを呼んだのではない。おぬしらがこの世界に来ることを選んだのだ」
「どういうこと? 」
「トハノスメラミコトといえど別の世界で生きている者をこちらへ連れて来ることは出来ん。己の世界で己の存在する意味を知っている者は他のどの世界にも行く必要がないからじゃ」

 ときわは言われたことを理解しようと頭を働かせた。だが、よくわからなかった。かきわも同じような様子だった。

「己の世界に己がなぜ存在しているのか、不安な者だけが別の世界に惹かれるのじゃよ」

 意味はよくわからないながらも、ときわはどきりとした。

「でも、俺達の前にもこの世界に来たかきわやときわがいたんだろ。そいつらはどうやって元の世界に戻ったんだ? 」

 かきわが尋ねた。
 ぐえるげるは心なしか目を細めて微笑んだ。

「己が己の世界に生きる理由をみつけた者だけが己の世界に戻れるのだ。つまり、心の底から帰りたいと思った者が帰ることができるのじゃ」

 ぐえるげるはそう言って口を閉じた。
 辺りを沈黙が包んだ。
 ときわは何かすごく大切なことを聞いた気がした。だが、今はまだよくわからなかった。


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