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九十八、
しおりを挟む「まず、ぐえるげるに言われたことを整理してみよう」
記憶を手繰るように虚空を睨んで、広隆がそう言った。
(そうだ。今は隣に兄さんがいる。今回は、一人で考えるんじゃないんだ。二人で力を合わせて考えられるんだ)
そのことに気付いて、広也は胸が温かくなるのを感じた。最後にして最大の問題は、一人にではなく二人に与えられたものなのだ。
不意に、広也は長から聞いた話を思い出した。
——巫女の夢にトハノスメラミコトが立ち、“常磐堅磐が私を見出した時、私はそこへ帰ろう”と言った。
広也ははっと気付いた。ときわかきわが私を見出した時。
里の連中はそれをときわかかきわのいずれかがトハノスメラミコトを見つけだすという意味に捉えていた。だが、そうではなくて、ときわかきわ——つまり、ときわとかきわの両方がトハノスメラミコトを見つけなければならないという意味だったのではないか。
そうだ。ぐえるげるがはっきりこう言っていたではないか。
——お主ら二人が二人共トハノスメラミコトをみつければいいのじゃ。
ときわだけでも、かきわだけでも駄目で、ときわとかきわが二人同時に見つけなければいけなのではないか。
「兄さん!」
広也はこの仮説を広隆に伝えた。広隆はふむ、とうなって腕組みをした。
「なるほどな。里の連中は敵対していても、トハノスメラミコトからしてみたらときわもかきわも自分の子供みたいなもんだもんな」
そう言って、広隆は自分の台詞に何か引っかかるものがあったのか、子供……と呟いて眉をひそめた。
「そうだよ。うたい町のきつねも、ときわとかきわを別々に奉るのは愚かなことだと言っていた」
「だとすると、里の連中はトハノスメラミコトがよみがえるのを知らないうちに妨げていたんだな。ときわとかきわが二人で探さなければならないのに、二人を敵対させて一緒にさせなかった」
これまでのときわとかきわがトハノスメラミコトを見つけることが出来なかったのは、もしかしたらそのせいなのかもしれない。皮肉だな、と広隆が鼻で笑った。
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